表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
31/36

乱入者、行動開始。

夕馬は仕事を辞め、本格的にイタリアへ行く準備を始めた。


以前に増して、部屋にダンボール箱が多くなる。

私はまだ病院からイタリア行きの許可が出ない為、一緒には行けない……。


仕方ない。病気が良くなれば行けるんだと、自分を納得させる。

それに余り出発を遅らせる訳にはいかないし。


「風生。 きちんと病院行って、 早く治せよ。 一緒に行きたいの我慢してるんだから。

とにかく向こうで生活環境整えるよ。 だから、 早く来て。 あ、 でも無理しなくて……」


私の心配と、自分の進む道の間で揺らいでいる。

私はそっと夕馬の背中にしがみついた。


「待ってて。 早く行くから」


穏やかな夜を、二人で過ごしたい。



いよいよ夕馬がイタリアへ行く時が近づき、

会社の人達とのお別れ会が開かれた。


イタリア娘はテンション高く、夕馬の隣にべったり。


一応誘われた私は、テーブルの隅の方でジュースを口にした。



「何であんたが遠慮するのよ? 彼女でしょう? 」


「うん、 まあ。 でも主役は夕馬だし。 あの子にお世話になるしね」


小さく呟いた。


会社の同僚達は、私達の事を知っている。

だから敢えてこの場に誘ってくれたけど。


家で待ってた方が良かったな。


嬉しそうに夕馬に寄り添うあの子。

あからさまに邪険にできない夕馬。


まるで二人の門出を祝うみたい。


気分が悪くなり、私はそっと外に出た。


ヒンヤリ気持ちのいい夜風に吹かれて、ぼんやり星空を眺めた。


店の灯りが眩しくて、星があまり見えないけど。



「高野さん。 私と一緒にイタリアへ行きます。 彼女さんは知ってますよね?」


店からあの子が出て来て、私にいきなり話しかけた。


「あ、 うん。 貴女と行くんだよね?」


「それが……。 それが何を意味するかも?」


「え? えーと。 お世話になるって」


「私が! 私がただ着いていくかと?」


「あの。 意味が……」


私は混乱しそうになった。

どうにか理性を保ち、彼女の言葉を聞いた。


挑戦的な目。幼さがまだ残る顔は、余裕に満ちている。


「戦闘開始。 イタリアへ二人でいきます。 貴女はここに残る。 私達はイタリア。 高野さん、 優しいから。 貴女を気遣ってると思いますが……。 二人で住む部屋を決めました。 分かります? 私と高野さんの部屋。 貴女の入る余地、 ないんですよ?」


可愛らしい口から、毒を吐く様にそう言った。


私は完全に押され気味だ。

何も返せない。


夕馬は、私も一緒にと言ってくれた。

嘘なの?


目の前が揺らぐ。立っていられない。


この子は何を言ってるの?



「まあせいぜいお大事に。 病気が治る頃には、 素敵なお知らせがイタリアから届くかも知れませんね」



そう言うと店に戻った。


暫くその場に立ち尽くし、我に返った私は店に戻らず夜の街の中を歩き出した。


「夕馬……? 嘘だよね? ねえ。 あの子の言ってる事は、 嘘だよね?」


一人呟きフラフラ彷徨う。


カバン。お店だ……。まあ、いいや。


消えてしまいたい。


あんな娘の言葉に動揺するなんて、バカバカしいけど、でも……。


心が痛い。


夕馬のマンションの近くの小さな公園のベンチに座り、夜風吹く中星を眺めた。


涙など出ないけど、頭の中がいっぱいになる。


何を、誰を信じる?

夕馬を信じる? 信じたいけど。あの子は真剣だ。

私なんかより、役に立つだろう。夕馬の側で夕馬の為に。


「ほんと、 バカだな。 私……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ