二人一緒に。
夕馬に告げた言葉を一人思い返した。
夢を叶えて。 何て言っても結局寂しい。
イタリアへ準備が整い次第行くのだろう。
隣人が教えてくれた。
『イタリア娘、 張り切ってるわよ? 高野君と一緒に行けるって。 会社暫く休んで二人で仲良く行くみたいね。 高野君も何考えてるんだか。 頼りにしてるから邪険にもできないみたいだし。 最近またひっついてるよ。 あんたもお人好しね』
痛い話だ。
自分が言い出した事とはいえ、イタリア娘とイタリア。
知り合いを紹介してもらうそうだが、何かあっても不思議じゃない。
病院へ診察へ行った帰り道、何もできない自分が情けなくなる。
夕馬のマンションへの道をただひたすら歩いた。
ただ歩いた……。
薬のおかげか、最近調子はいい。
いや、胸のつかえが一つ取れたからなのか。
こないだまでは、薬も効果なかったのに。
心と身体は不思議だ。
しかし、新たなる不安。あの子の事が頭に浮かぶ。
自分に言い聞かせても、やはり胸がザワザワする。
全く、私が言った事なのに。
また悩むのは嫌だ。
部屋に帰り、夕飯の支度をする。
段々夕馬が離れて行く事は、覚悟の上ではないか。
でも、実際部屋に積まれるダンボールが増える度、胸がチクっとなる。
だからなるべく一緒にいたい。
不安など感じない様に。
「ただいま」
「お帰り。 ご飯できてるよ」
「直ぐ食べるよ」
こんな風に食卓を囲むのも、後少し。
「今日は肉か! オレ好きなんだ」
「知ってる」
今日は生姜焼き。
生姜を沢山入れたけど、メイプルで甘くしてるから、程よい味になった。
夕馬の好きな物を沢山覚えた。
料理も二人分。きちんと作れる。
寂しい気持ちになるなんて、やっぱりダメだな。
黙々と夕飯を食べる夕馬の姿を、やっぱり見つめてしまう。
違う気持ちで……。
「風生? 食欲ない? 具合悪いとか?」
「大丈夫よ。 あ、 今日病院行ったの。 最近調子余り良くなかったけど、 今日は良かったみたい。 何だかの数値もいいって」
「良かった。 安心だな」
食後、二人でソファでくつろぐ。
細やかな時間さえ、早く過ぎていく様に感じる。
「イタリアは、 ナポリ? もう色々決まったの?」
「ああ。 専門学校みたいな所で勉強するのも決まったし、 お世話になる店も大体決まったよ。 住む場所だけだな」
「私、 遊びに行ける?」
「当たり前だろ? 風生が来ても大丈夫な様に、 広めの部屋にするつもり。 あ、 風生の荷物も少し持ってくから」
「え? 何で?」
「体調も良くなってきてるみたいだし、 予めイタリアの病院もリサーチしといたし、 いつでも来れる様にしなと、 困るだろ?」
「何それ。 こないだまでは待ってて〜。 なんて言ってたのに」
「それは……。 お互い生活があるし、 風生の人生もあるしって。 でも。 今は違う。 風生の人生は、 全部もらうから」
いきなりの言葉に耳を疑った。
全部もらう? 私の人生を?
「一緒にいる事に意味がある。 そりゃ、 今はお互い色々無理だけど、 それでも風生と一緒に歩いていきたいから。 苦労かけるけど、
寂しいかも知れないけど、 この手は離さないから」
プロポーズなの? そんな事言うなんて。
涙、出ちゃうじゃない。
いっぱい迷ったし、いっぱい不安になった。
今だって、拭えない物がある。
でも。夕馬、本当?
こないだも、一緒にいたいって言ってくれた。
今日は違う。
「一緒に歩いて。 風生。 何度も言うよ。 オレも悩んだし考えた。 けど、 一から初める人生に風生もいて欲しい」
「嬉しいよ。 夕馬。 私待ってるって言ったけどやっぱりやだ。 夕馬の夢、 私も叶える。 一緒に叶えたい……」
夕馬に抱きついた。
きつく抱きしめられる。
夕馬の温もりを感じながら、嬉しくて泣いた。




