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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
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繋がる気持ち

夕馬の部屋で、安定した生活を送っているが、これでいいのか? などの疑問を抱いたりする。


会社を休職し、病院の薬をきちんと服用し、なるべく負担ない環境での静養を強いられ、

私は主婦の如く動く。


掃除洗濯食事。


「私、 いつ結婚した……」


昼間は一人のんびり過ごす。


いくら病気とはいえ、情けない。

皆と一緒に働きたいなぁ。


夕馬の帰りを待ち、食事の準備をする。


夕飯のメニューは和食。

カジキマグロが安かったし、豆腐も安かった。 魚の煮付けと豆腐サラダ。

キンピラも作り、栄養を考えた。


私の身体の為と、働く夕馬の健康管理。

営業職は、食事が不規則になるし、せめて家では……。

身体に負担はない。むしろ適度に動いた方がストレスもない。


「夕馬、 遅いな。 仕事忙しいのかな」

一人言を呟き、テーブルの上に並べた夕飯にラップをかけた。


ベッドに横になり、これからをぼんやり考える。


「このままでいいのかな。 結婚してる訳じゃないし、 生活の面倒とか頼り過ぎだよね。

夕馬はこれで言いって言ってくれるけど。やっぱり……」


拭いきれない不安がある。

心穏やかの休養。 しかし、甘え切っている自分が許せない。


夕馬はイタリアに行きたいはず。

だけど、思わぬ誤算が生じた。

私の病気……。

優しい彼は、そばにいてくれる。面倒見てくれる。


けれど、やはり捨てきれない夢がある。

私は、自立した人間になりたい。誰に頼ること無く生きていきたい。

夕馬との出会いで自分の秘めた欲求が爆発したが。


離れたくない人。

出会ってしまった人だから、大事にしたい。

だけど、甘える事とは違う。

対等でいたい。


しかし私は自分でも驚く程、欲深く嫉妬深い人間だ。

イタリア娘に嫉妬した。


「何で毎回帰り遅いの? またあの子と一緒にいたんでしょ? 」


些細なヤキモチ。 限界……。

夕馬を責めた。


「好きな子できた」


突然の言葉にビックリした。


「え? 何、急に……」


人間驚き過ぎると呆然となる。

私もどうしていいか、分からなくなった。


「あの子の事、 好きになった。 色んな事話してるうちに、 共通点ができて。 しっかりしてるし、 理解もある」


「……。 別れるって事?」


「悪いと思ってるよ。 勝手な事ばっかで。 でも、 本当にお前と夢叶えたいと思ったし、

手放したくないって思った。 けど……。 あの子といると、 安心して自分の事出せるって言うか……」


男の勝手な言い訳に、話す事など何もない。


「分かりました。 さようなら」


もの分かり良く、別れましょう。

最初から、ダメだったんだ。 お互い理解できなかったんだ。


私は夕馬との別れを選んだ。

はずだった……。


けれど今、私はここにいる。何故なのか。

男の勝手な振る舞いに、振り回されたから。


私の体調不良。

それがあり、夕馬は死にそうになったと。


バカじゃないの? あんたの本気は何処にある?

あっちフラフラ。こっちフラフラ。

人の感情を逆なでする。


いなくなって欲しくない。 夕馬が言った。

私の存在の大きさに気が付いた。

女慣れし過ぎの奴。 あっちこっちに声かけたり。

でも、それも無くなり一途な男に。


隣人は言う。


「あんたはバカだ。 振り回されて。 どうせなら振り回せ」


最もな発言。


すれ違い、求め合い、誤解あり、またくっつく。

夕馬と私。 磁石の様だ。

都合よく、利用させてもらう。

これでいいのかと、思うけれど……。



玄関の開く音がした。


「ただいま」

夕馬ご帰宅。ベッドの上でお出迎え。


「おかえり。 夕飯あるよ」


「疲れた……。 風呂入るよ。 あっ! 薬飲んだ? 」


「飲んだ」


「じゃあ、 もう寝なさい。 オレも風呂入って、 飯食ったら寝るから」


「疲れてるんでしょ。 ご飯あっためる」


ベッドから立ち上がり、テーブルの上に並べた夕飯をキッチンへ運んだ。

夕馬はお風呂へ。


夕飯を温め直し、再びテーブルへ並べる。


「毎晩うまそうなもん作るよな。 無理してないか?」


お風呂上がりの夕馬がテーブルに座り、ご飯を食べ始めた。


向かい合い、夕馬を見つめる。


「世話になってて、 何もしないのやだし。それに、 健康管理は大事でしょ?」


「お陰様で昼間元気に働けるよ」


他愛のない会話がくすぐったい。


「やっぱり。 お前が大切だよ。 オレ、 凄くいい加減だし、 沢山傷付けた。 でも、 改めて風生のいない人生はあり得ないって思う。

信用ないけど……」


「何よ。 急に。 振り回されても一緒にいたいと思ったのは、 私の方だし。 いい加減な奴だけど、 必死で私を思ってくれてるの分かるから」


「今、 色々考えまとまらないけど。 オレの隣にいつも風生にいて欲しいと思う」


全く何なんだ?いきなり。


「どしたの? 急にそんな事」


「まだ、 気持ちはまとまらない。 けど、 はっきり言っておきたくて。 前にも何か言ったけど、 それ以上の想いがあるから」


夕飯を食べ終わり、キッチンへ食器を片付けた。


ベッドに二人横になり、夕馬は私を抱きしめる。


「風生……。 一生一緒にいよう。 お前無しじゃ、 オレダメだ。 夢叶えたいし、 頭ごちゃごちゃだけど、 風生は離さない」


きつく抱きしめられ、夕馬の胸に顔をうずめた。

そっと私を抱く手は温かく、心地いい。

絡まる足。私を離さない様に強くなる。

夕馬の背に回した私の手にも、力が入る。


色んな事を乗り越えながら、私達は進み続ける。

自分らしく、相手を想い想われ。


抱き合ったまま、夢の中へ……。


この人を離したくないと思った日から、幾つもの夜を過ごした。

先の事は分からない……。

確かな事だけ、信じよう。

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