身体の安静
意識が遠くなる中、夕馬の声が聴こえた。
「風生! 大丈夫か⁈」
私はそのまま目を閉じ、ゆらゆら波に揺られている様な感覚の中にいた。
薄っすら目をあけた時、白い天井が目に入った。
「風生! 良かった……。 つらくない?」
「ゆう、ま……。 ここ病院?」
「ああ。 お前、 意識無くして。 救急車で運ばれたよ。 焦った、本当……」
病院か。 そうか私あのまま意識無くしたんだ。
泣きそうな夕馬の手は、繋がれたまま。
それだけでも、嬉しくなる。
「先生が来たよ」
病室に、先生が入って来た。
私のかかりつけの病院の先生だ。
「目が覚めた様ですね。 良かったです。 一日、 意識が戻らなかったんですよ。 酷い貧血症。 鉄分が欠乏し、 赤血球が……。 と言っても今は安静が第一ですね。 検査結果としては、 貧血以外特に所見はなかったです。
なので、 今日入院して明日帰って大丈夫ですよ。 詳しくは……。 ご主人? にお話しますので」
私の担当医師は、外来のあのお医者さん。
迅速かつ丁寧、 愛想なし。の先生が説明してくれた。
ぼやける頭に説明されても、理解は余りできない。
その判断も早く、夕馬に説明すると言ったの
だろう。
しかし、ご主人て……。
「では、 ごゆっくり」
そう言い、部屋を後にした。
「早口な先生だな。 オレ良く分からなかったよ。 しかも愛想ないし」
夕馬も同じ感想を抱いた。
「一日寝てたんだ。 私……」
「心臓もたないから、 やめてくれよ」
心配かけたなぁ。 申し訳ない……。
素直な想いが胸に込み上げた。
「完全看護らしいけど。 泊まろうか? 一応要るものは持って来たけど。 明日退院だし、
風生一人は大変だろ?」
「え? 大丈夫だよ。 私一人でも」
「いや、 だって詳しくはご主人にって」
「誤解してたね。 やだな、 本当……」
恥ずかしくなる。 夕馬の事、勘違いしてたし……。
「まあ、 いんじゃない? 当たらずともって
言うし」
え?
ドクン。
胸が高鳴る……。 何いってるのよ。
益々恥ずかしくなり、 布団をかぶった。
「具合悪い? 」
「大丈夫!」
何の気無しに言って。 人の気も知らないくせに。
「夕馬。 喉乾いた」
布団から顔を出し、夕馬に甘えた。
「はいはい。 水ね」
ゆっくり身体を起こし、お水を一口飲む。
乾いた喉が潤い、少し気分がいい。
「顔色も良くなってきたし、 無理しなきゃ大丈夫だな。 明日から家でゆっくり休んで、
早く治さないと」
「そうね。 早く治さないとね。 病院近いし何かあっても直ぐ行けるよ」
「え? 何言ってんの? オレのマンションに
帰るんだよ? 先生にも言ってある。 病院変わるって」
いつの間に? そんな事を……。
一人だと、不安は不安だけど。 だからと言って夕馬の部屋は……。
まあ、また無理矢理連れて行くだろうけど。
夕馬にお世話になる事に躊躇はある。
しかし、心身共に弱気な私。
夕馬に任せる事にした。
結局、私は鉄欠乏貧血とか何とからしく、とにかく安静と、規則正しい食事、 ストレスを溜めない事を要された。
暫く会社休むはめに……。
生活どうするのよ。 まあ、会社から手当ては出るし、必要な物は夕馬に頼むし。
何て事、図々しいかな。
処方された薬と、新しい病院への紹介状を渡され、無事に退院した私は、夕馬のマンションで安静な生活を送る事に。
先生はやはり愛想がなく、紹介状を貰う時も淡々としていた。
忙しくとも、やはり少しの笑顔は大切なんだな。
余計な感想をもった。
「全く、 風生は心配ばっかかけるから、身がもたない。 頼むから大人しくしてくれ」
夕馬の愚痴を聞いて思った。
心のゆとりも大切だ。 しかし、ゆとりを無くしたのは、夕馬が原因。
お願いしたいのはこっちの方。
しかし、お世話になっている私は何も言えない。 夕馬の愚痴を聞き流した。
仕事へ行く夕馬。 あの子は私が居なくて、さぞ喜んでいるだろうな。
私達の事は、しっかり私の隣人にばらされている。 口の軽い隣人は厄介だ。
気掛かり。
凄く気になる。 けど、今は自分の事を優先させよう。




