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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
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確かめ合う気持ち

やや無理矢理感はあるが、私は夕馬に連れられ、夕馬のマンションへ。


「家から病院近いし、 一人で大丈夫だってば! ねえ!」


私の訴えは却下された。


「病院はオレも行くし、 風生の面倒はちゃんとみる。 有給たまってたし、 何の問題もない」


「だって夕馬、 色々やる事あるんじゃないの? 仕事片付けなきゃ……」


言いかけて、言葉が詰まった。

この先の言葉……。

イタリア。 あの子と一緒に。


「風生のいないオフィス。 風生のいない部屋、 風生のいない生活。 何の意味がある?

全てが風生なのに、 何の意味がある? 昨日勝手に帰った。 一言もなしに。 電話繋がらない。 今日病院? 何だよそれ!」


「昨日は、 調子悪くて。 それに夕馬は、 あの子と……」


「ああ。食事した。 イタリアの友人にメールしてくれたって言うし、 話聞く為にね。

その後直ぐに風生に電話したけど、 繋がらないし。 行こうとしたら、 仕事ミスした奴がいて、 会社戻ったよ。 昼間営業行ってたから、 社に戻ったら風生が早退したって聞いたし。 今日の事もね」


夕馬に手を掴まれ、駅まで歩く。


痛いくらいに強く繋がれた手。


本当に、心配してる?


意地張って、ケータイ無視して。連絡しなくて……。

素直じゃない私。でも、夕馬は来てくれた。

私の為に。


何で来てくれるの? イタリアは連れて行かないのに。


複雑な心境だ。 でも、 繋がれた手。夕馬の

手は安心する。 離さないで欲しい。

この手を離さないで……。



電車に乗り、夕馬の住む駅へ。


途中、買い物をしたりした。


いつの間にか夕暮れ空。 オレンジ色の景色に包まれる。

二人手を繋ぎ歩く道。 このままずっと歩いていたい。



マンションに着き、私はパジャマに着替え、

ソファに座った。

夕馬 は食料を冷蔵庫へしまったり、私の荷物をクロゼットへしまったり。献身的?


「風生? 何か飲む? 腹減った?」


「大丈夫。 いらないよ」


「辛かったら、 寝ろよ?」


ふふ。 おかしい。 この前も何か落ち着かない感じだったし。


夕馬の動く姿がおかしくて、でも何故か寂しくて。 涙が出そうになる。


「風生……。 オレのせいだよなぁ。 余計な

心配かけたから。 明後日、 どうしよう」


「貴方が弱気? 何それ。 違うでしょ? 別に夕馬のせいじゃないよ。 多分ね……」


意地悪を言った。


ギュっと抱きしめられた。 失いたくないの

分かる?


「オレさ。 すっごく不安なんだ。 今……。

で、 考えた。 自分勝手にだけど。 夢は叶えたいものだし、 諦めたくない。 けど、 何の為の夢なのか。 風生との未来の為の夢なのかなって。 初めて話すけど、 うち両親仲悪くてさ。 家族の温もりとかなくて。 そんな時、 あのマスターに出会った。 あったかいコーヒー。 嬉しくて。 で、 オレもいつかはって思ったけど、 現実は中々厳しくてさ。

今の会社入って、 無難に仕事して。 不満言ったらバチあたるけど、 誰かの為にコーヒーを淹れられたら、 幸せだろうなぁ。 そう思った。 叶えたい気持ちが強くなり過ぎて、

お前の事も考えなくて。 今更だけど、 夢の意味考えた。 大切な人の笑顔がないと、 夢叶えても仕方ないって言うか」



初めて聞く夕馬の過去。 かける言葉が見つからないよ。


色んな物を抱えて、 色んな気持ちに揺らいで……。

二人寄り添って。


「夢、 諦めないでよ。 幸せになれるコーヒー、 淹れたいんでしょ? 夕馬の隣は、私の物。 笑顔でいさせて。 二人の為に、夢叶えて。 私、 失うの怖かった。 離れるの嫌だけど、 そんな話聞いたら、 やだって言えないじゃない。 まだ、 ちょっと理解ある人にはなれないかも知れないし、 気持ち揺らぐ。

けどね、 貴方が叶えたい夢は、 私の幸せにも繋がるのかなって……」



縺れ、絡まる糸。誤解や不安の夜。

ぶつかる心。求め合う気持ち。

色んな物を抱えて、二人また手を繋ぐ。


頭と心。 モヤモヤしてて、分からなくなるけど。 確かな物があるならば、私達はきっと

大丈夫……。


失いたくない。 離れたくない。心に募る、

私の想い。


受け止めて、離さないで。


きっと何度も、不安な気持ちが襲うけど。

乗り越えて、また歩き出せたら。


二人は強くなれるはず。


夕馬? ねえ、私の手を強く握って。


夕馬にもたれた私。 夢心地……。

このまま眠りたい。 夕馬の腕の中、目覚めたくない。


やだな、私……。 何言ってるんだろ。


夕馬の声が聴こえる。 遠くで私を呼んでる

みたい。

返事しなきゃ。早く……。

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