離れる心?
翌朝、いつもの様に出勤した私は、心身共に疲れていた……。
当たり前だ。 急展開に対応できる私ではない。
普段と変わらず、仕事をする。
隣人が時折話し掛けてくるのを、適当にかわしながら。
夕馬は営業。
あの子は……。 知らない。
普段のオフィス。 私だけ、普通とは違う場所にいるみたいだ。
「あ! 高野さんっ。 この書類ですが」
営業帰りの夕馬を早速捕まえた。 あの娘。
「ああ、 ごめん! 直ぐに直すよ」
「全く、 お願いしますよぉ!」
聞き耳立てなくても、二人のやり取りが嫌でも耳に入る。
「何か、 最近仲良くない? あの子と高野君さあ」
「さあ。 知らない」
素っ気なく返事をしたが、私もそう感じる。
私情は挟まない。 休んだ分、仕事が溜まっている。
私は気にしない様務め、仕事に専念した。
でも。 ふと思う……。 夕馬はこれからどうするのか。
いつ、イタリア行くんだろ。
いつ、あの子に話をするんだろう。
仕事はいつ辞めるのか。
頭に浮かぶのは、そんな事ばかり。
ダメだ。イライラする。
私は休憩を入れる為、廊下に出た。
「手紙、 読んでくれました? イタリアの友人の話……」
「あ、 うん。 ありがとう。 いきなりで驚いたけど、 チャンスかなって思ったよ」
二人の会話が聴こえてきた。 廊下の階段の
下、手紙の話だ。
私は咄嗟に二人から見えない位置に隠れた。
やだ。 見たくない。聴きたくない。
私の全部が二人を否定した。
「今日あたり、 話せませんか? 」
「え? 今日? ……分かった」
「やった! 嬉しいです。 イタリアの友人に詳しく聞いておきますね。」
今日……。 仕事帰り会うんだ。
私に何て言うのかな。
イタリアの話するだけ。それだけ。
でも、それが嫌なのに。
夕馬を遠く感じた。 夢を叶えるのはいい。
だけど、私を置いて行く。
あの子と夕馬。 二人の中に入れない。
目眩がする。 弱気な私。
きっともう、限界だ……。
人は心変わりする生き物。
急接近する二人、惹かれ合うのも時間の問題だ。
なら、私は? 引き下がる?
できる、できない。 あの腕を、離したくないと思った時から、私の中は夕馬でいっぱい。
でも、夕馬は? もう違うの?
自分の夢と私。 二つは手に入らない。
分かってる? 手に入れる物は一つだけ。
夢、もちろん応援するよ。
叶えたいんだもんね。 でも、 見失う事もあるんだよ。 失う物もね。
そこはきちんと考えて、上手にやってよ。
私はオフィスに戻り、体調不良の為と言い、
帰宅した。
夕馬には何も言わず。
意地っ張り? 違う。大人気ない?
自問自答。
分かるわけない。答えは出てる?
この手からすり抜ける物は沢山あった。
夕馬は今日遅くなるだろう。
夢について、これからについて、あの子と話すから。
手に入れたいんだね。 夕馬の全てを。
私は駅に向かった。
夕馬の部屋には帰らない。あの子の匂いをさせたまま帰るから。
気分悪い。考えただけで……。
でも。 こんなに気分悪くなる?
体調不良、続いたまま。
余計な事だ。
電車に乗り、自分の家へ帰った。
私の捻くれた心。可愛くない。
ケータイの電源を切った。
電話こないかも知れないけど。
何か腹立つし。
自分の部屋、またもやベッドへダイブ。
しんどい。
夕馬に触りたい。温もり感じたい。
手を伸ばしても、届かないの?
ねえ。夕馬……。




