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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
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ジェットコースターな展開

ベッドの中、夕馬は何か言いたい様子。

モゾモゾ動いたり、落ち着かない。


「何か言いたいの? 早く言ってよ」


私も気になる。手紙の事……。


「手紙、 見る? 話すより早いかも」


ベッドから降り、テーブルの上の手紙を持って来た。


私は手紙を受け取る。ピンクの封筒。あの子からの手紙……。


少しだけ震える手。 何に対して震えるの?

自分に問う。


ゆっくり封筒を開いた。

夕馬は既に読んだみたいで、糊付けされた

部分があいていた。


中を取り出す。 便箋二枚、 ビッシリと文字が綴られていて、綺麗な字だなぁ。と言う感想を抱く。


夕馬をチラリと見た。 何にもないから私に

手紙を渡したんだよね?

落ち着かない様子は何? 夕馬も私をじっと見ている。


私は遠慮せず、手紙を読んだ。


『高野夕馬様 この前は、本当にありがとうございます。 二人で沢山お話できて、嬉しかったです。 コーヒーの夢、叶うといいですね。 応援します。 友人に高野さんの事を話しました。 イタリア在住のカフェ経営者です……。 是非お会いしたい。 そう言っていました。 コーヒー、 本格的な味ですよ。 と言ったら、直ぐにでもお会いしたいと言ってました。 心のこもったコーヒーを淹れられる。

高野さんは素敵だと思います。

私にできる事があれば、何でも言って下さいね。 私、 高野さんと一緒にイタリア行きますし。 遠慮せず……。 あ、 この前うちに忘れていかれたボールペン。 頂いちゃいます。

本当に高野さんとの時間、 嬉しかった。

会社では、いつも通りにします。

また、お食事しましょう。 では。』


手紙を読み終え、封筒にしまう。


どう切り出す? 思考回路は切断された様に、

何の言葉も浮かばない。


幾つかのキーワードが頭に浮かぶが。


「風生……? あの。 ごめん……」


夕馬の言葉に身体がビクっとなった。


ごめんて何? 何故謝るの?

訳分からない。


「こないだ、 彼女と食事して、 色々話しをた……。 その後、彼女を家まで送って行っ

て、 コーヒー飲みたいって言うから、 断り切れずに……」


「淹れたんだ? コーヒー」


「色々相談乗ってくれたし、 知り合いに紹介してくれるとかで。 お礼だよ。 ただの」


私は怒りとか、そんな事など通り越した気持ちになった。


「その後、 また色々話したいって言われたけど、 断ったよ。 流石に二人で会うとかは

できないし。 だから、 手紙よこしたと思う……。 さっきオレも読んで、 驚いた」


「イタリアの話に? 」


「はっきり言って魅力的な話だと思う。イタリア行ってみたいって……」


「あの子と? 」


「いや、 彼女の知り合いだし。 でも一緒に

行ってどうこうはないよ」


急展開に頭が追いつかない。


夕馬のコーヒーを飲んだあの子。 イタリアの友人に夕馬を紹介する。

必然的に二人でイタリア……。


「コーヒー飲ませたの、 何で言わなかったの? 送っただけって。 あの子の家に入ったんじゃない」


「風生に黙ってて悪かった。 でも、 コーヒー淹れたって言ったら、 もっと嫌な思いするだろ? 怪しい事は何にもない!」



言い合いしたくないのに。 色んな感情が押し寄せる。

胸の中のモヤモヤがまた私を襲う。


「イタリアの話は、 びっくりだよ。 でも、

チャンスかなって……」


私の気持ちは無視ですか? 貴方、そこに

食いつきます?


「夕馬、 夢叶えるの難しいとか言ってたじゃない。 今の仕事だって、 成績いいんだし

エースだし。 仕事辞めるって事?」


「確かに! 夢叶えるとか無謀だと思う。けど、 目の前にチャンスがあったら、 逃したくない」


「私は? 私はどうすればいいの?」


「風生は大事だよ。 別れたくない。 でも、

オレの夢の犠牲にできないって……」


「あの子は連れて行くのに?」


「だから、 彼女の知り合いだから!」


「あの子は貴方が好きなのよ? 分かる?一緒にイタリア行ったら、 どうなるか分からないじゃないの!」


私は感情任せにまくし立てた。

だって、そうでしょ? 手紙といい、 普段のあの子の態度といい。

夕馬の事が好きだって分かるじゃない。


「……誤解とかされたくないから、 手紙見せた。 風生に納得して欲しいし。 やっぱり夢は叶えたい……。 でも中途半端なままじゃ

風生との未来はないって……。 きちんとしたら、足元固まったら、 二人のこれからを考えられるかなって」


これ以上押し問答しても拉致あかない。


「私に待ってろって? イタリアには、直ぐに行くの?」


「彼女と話してみないと分からないけど。

なるべくなら早く行きたい。 仕事の事あるから、 きちんと整理つけて……。 風生には、待ってて欲しい。 身勝手だけど、 風生とは

真剣に付き合ってるし、 こるからも変わらないでいたい」


そう話す夕馬。 迷いもあるけど、自分を貫きたいんだ。

私の事も、真面目に考えている……。


「直ぐに行く訳じゃないよね。 でも、 貴方の夢。 叶えて。 私は、 夕馬の事待ってる。

離れたくないけど」


ついて来て。 その言葉はない。中途半端に

言えないから。

私とのこれからを考えて……。


でも、痛いなぁ。


夕馬に抱きつく。 私からすり抜けて行ってしまいそうで怖い。


男と女。異国の地。 何があるか分からないじゃない。


不安で死にそう。 頭がまたグルグルした。

何なの? ジェットコースター的な展開。


目の前にいる夕馬。私の腕の中。

だけど……。 あの子の腕の中にいるかも知れない。


抱き合う私達、お互いの気持ちを確かめる様に。

この温もりは、私だけのもの。




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