晴れのちイライラ
夕馬のマンションへ着いた私は、郵便受けから手紙やらチラシやら取り出した。
男の人、特に夕馬は直ぐに郵便受けをいっぱいにする。
大事な物があったらどうするんだ。
私はそれらを片手に持ち、荷物を持ちオートロックを開けた。
手慣れている自分。何だろう……。
エレベーターで夕馬の部屋の階まで登り、
やっとこ部屋へ。
夕馬の匂いのする部屋は、段々私の色に染まっていく様で、少し優越感を覚える。
奥のベッドの脇へ荷物を置き、取り敢えず
散らかった物を片付けた。
先程の郵便物もテーブルの上へ置いた。
ソファセットのテーブルは、食事の時など狭い。一人ならいいが、二人だときつい。
そんな事を漏らしたら、いつの間にか二人様のテーブルと椅子が用意されていた。
行動力はある。しかし、いつの間に……。
まあでも、食事する時楽になるだろう。
私はテーブルの上の手紙とチラシを整理し始めた。
「DMだらけか」
殆どがダイレクトメールで、後は光熱費の
支払いの封筒など。
手際よく仕分けする。
夕馬は別に嫌がらない。私がこういう事をするのを、むしろ任せている。
DM。光熱費……。選り分けていた私の目に
ピンクの封筒が入った。『高野夕馬様』
明らかにお手紙。
差し出し人を裏返して確認。
『平野有里』
住所はなく、直接投函したのか。
全身の神経が逆立つ思いがする……。
何故夕馬へ手紙なんか出すのか。
開く訳にいかない。
私は光熱費の請求書と一緒に置いた。
身体がまたフラフラする。
あの子の事など気にしなければいい。
そう言い聞かせるけど。
夕馬の事が好きなのかな。 そう考えて不安に
なる。
私の心が揺れる。
私より若いし、夕馬の相談相手みたいな感じだし、共通するものがあるし。
私の弱さがまた、顔を出した。
情けない。本当に……。
パジャマに着替え、ベッドへ入った。
申し訳ないけど、色々考えてしまうから。
寝る事にした。
「何なのよ。 手紙なんて」
そんな呟きは、一人の部屋で木霊するだけ。
惨めだから、早くやめよう。
とーー。
電話が鳴った。 私はベッドから起き、バックから電話を取り出した。
夕馬だ。 私は不機嫌に出た。
「風生? 大丈夫か? ちゃんと寝てる?
何か食べたの?」
電話の声が響いている。
恐らく会社の廊下からかけてきているのか。
「大丈夫。 今寝るとこ。 気にしないで仕事しなさいよ」
また可愛げ無い言い方。
手紙を見てしまったのだから、仕方ない。
手紙貰う様な事でもしたのか。また嫉妬して
しまう。
「今日、 早く帰るから。 何か買う物あるなら買うけど」
「貴方の夕飯くらいかな? 私何にもいらないし」
「いらないって、 ダメだろ。 適当に買って帰るから。 ゆっくり寝てろよ」
そう言って電話を切った。
食欲なんか、ある訳ないじゃない。
また苛立ちが胸を掴む。
夕馬の優しさは、時々毒になり、私を狂わせる。
夕馬の帰りをベッドの中で待った。
眠れる訳ない。
あんな手紙一つで、バカバカしいけど。
些細な事さえ、耐えられない。
私は一人、思いを巡らせた。




