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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
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夕馬。私。

私の体調は、翌朝どうにか回復傾向へと。


目覚めると、夕馬が隣で寝ている。


何故夕馬が。

ああ、そう言えば……。

夕べの事を思い出した。 時計を見ると、朝の五時半になる所。


そっとベッドから降り、少しふらつく身体で朝食の準備と、夕馬の脱ぎ捨てたままのスーツをハンガーにかけた。


シワだらけのスーツじゃ、社会人として何だし。


夕馬のスーツをブラッシングした。


私の朝は和食だ。ご飯を早めに炊き、味噌汁を作る。

卵焼きと納豆。

まあ、今の私が準備するには十分だろう。


そうこうしてるうちに、夕馬を起こさねばならない。


ベッドで眠る夕馬を起こした。


「夕馬。 ねえ、 起きて。 遅刻するよ」

顔をペチペチ叩く。


「うーん……。 ふう? 大丈夫なの?」


夕馬の顔を叩く手を取り、私に聞いた。


「まあ、 何とかね。 ご飯できるから、起きてよ」


「ご飯? 無理しなくても良かったのに。でも嬉しいよ」


むくっと起きた。


「本当に平気? 具合まだ悪いんじゃない」


「平気よ。 ほら、 早く食べて!」


テーブルに朝食を並べた。


「相変わらず、 朝から頑張るよね。 オレ的に嬉しいけど、 負担にならない?」


「負担だったらやらないし。 朝食基本でしょ? 栄養とならきゃ、 いい仕事はできません」


まるで、何もなかったかの様に朝食を摂る。


朝から嫌な気持ちになりたくないし。

夕馬も私も。


苛立ちや不安は、朝から必要ない。

二人で迎える朝は、目覚めの良い物にしたいし。


まあ、これから色々あるかもだけど。


「風生、 今日休めよ。 無理させたくない。

一回オレ家帰るから、 荷物まとめろよ。一緒にオレの家行こう。 そしたら安心だし」


夕馬の言葉に躊躇した。


割り切れない思いがあるのに、一緒にいるのも……。


「早く帰るから。 な? 」


夕馬の心配症。

でも、素直になるべき?


話したい事あると言えばある。夕馬の部屋で待つのも選択肢の一つ。

きちんと話せるか分からないけど。


「体調悪いの、 あんたのせいだし。 まあ、

お世話してもらおうかな」


「じゃあ、 早く用意して!」


夕馬の出勤時間を考慮して、私は手早く荷物をまとめた。


昨日までのモヤモヤとか、いつまでも引きづっていても、進歩ない……。


自分でも驚く心境は、多分夕馬の突然の来訪にある。

私を気にして来てくれた。

だから、私も素直になる。


無理矢理に?

違う。 多分ね。 違うよ……。



バタバタと私達は部屋を出た。

私のカバンの中には、夕馬の部屋の鍵が入ってる。 可愛いスイーツのキーホルダーを付けて、大事にしまってある。

それが、どれ程特別で嬉しいか。分からないよね。


会社の最寄り駅。改札を出て行ってらっしゃい。私は夕馬を見送った。


私は夕馬の部屋へ行く。寝てろと言うので、

今日は休みの電話をしたから、大人しく寝ていよう。

まだ少しだけ、胸が痛むし。


こんな事で仕事休むなんて、本当にアホだ。

でも……。 身体は正直。夕馬には償いをして欲しい。


心と身体は繋がってるんだなぁ。

そんな事を考えた。



「夕飯の買い物は、 オレがするから。リクエスト、メールして。 で、 本当に寝てろよな。 ちょくちょくメールするから」


先ほど念を押された。ので、私はそうする事にする。


「ふーう……」


駅の改札。 行き交う人がいる中、夕馬が私に抱きついた。


「やだ! 駅だよ! 」

不意に突き放すが、身体に力が入らない。


「行ってくる」


そっと頬に手をあてた。

熱いから。 夕馬の手……。もう、何考えてるのよ。


でも、多分嬉しいんだな。私。


荷物を持ち、夕馬のマンションへと向かう。


いい天気だ。 雲ひとつない。


このまま私の心も晴れて欲しい。

空見上げ、かざした手からは太陽の光がもれた。

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