温もり
「風生! 風生! おい!風生!」
私は夢の中にいる様な、フワフワした感覚を
感じながら、何か名前呼ばれてるなぁ。
そんな事をぼんやり頭で考えた。
「風生! 大丈夫か? 風生!」
うるさい……。誰?
身体、ああ。まだ動かないのか。
少しだけ、手が動く。誰かが私の手を握る。
温かい物が手から伝わり、うっすら目を開けた。
「良かった……。 風生。 良かった」
「ゆ、うま……? なに?」
夕馬が私の手を強く握り、片方の手で頬を
優しく撫でた。
「電話出ないから気になって来た。 何度も
電話したけど、お前出ないし。 部屋のチャイム鳴らしても、 灯り付いてるのに返事なく
て。 ドア叩いても音しないし。 試しに開けたら鍵かかってなくて……」
ベッドに座り、私を抱き寄せた。
「部屋入ったらお前ベッドに寝てて、呼んで
も全然返事ないし。 ……頼むから、 脅かすなよ。 何度呼んでも返事なくて。 どうしようって、 凄く焦った」
きつく抱き寄せ、 耳元でそう言った夕馬。
小さな声が震えている。
「ごめん……」
私はまだ、自分の身体に力が入らない。
夕馬に抱き寄せられたまま、夕馬に謝った。
「やっぱり体調悪かったんだ。 何か朝からおかしいなって思った。 不機嫌な理由、 体調が悪いのもあっただろ?」
「不機嫌な理由……。 誰のせい? でも、分かってくれてたんだ。 私が調子悪いなって思ってたの」
私のイライラは、確かに夕馬のせいだ。
でも、確かに何か調子悪いと思ってた。
仕事忙しいから、気にしない様にしてたけ
ど、夕馬は分かってくれていたんだ。
変な意地とか、ヤキモチとか。些細な事でイライラして。バカバカしくなる。
「熱はないけど、 風邪かも知れないから。
着替えて寝ないと」
私をベッドに寝かせ、タンスからパジャマを
取り出した。
よくご存知で……。
「ほら、 手伝うから着替えて」
パジャマを持ち、ベッドの上へ座り私の服を
着替えさせた。
恥ずかしいとか、そんな事は思わず、身体を起こしされるがままに着替えをした。
「今日はオレも泊まる。 何か飲みたいとか
ある? 」
夕馬に対する腹立たしさは、ぼんやり頭のせいか今はない。
夕馬にいて欲しい。素直な気持ちだけ、心にある。
「明日、 仕事じゃない。 泊まるの無理でしょ? 」
「風生一人にできないし。 早めに出れば大丈夫だよ」
私は夕馬の好きな様にしてもらう。
拒むことはしたくない。
すれ違う心は、また重なるの?
夕馬の顔をじっと見た。
聞きたい事とか、言いたい事とか、沢山あるのに、何も言わない。
ただ、今はそばにいたい。
「オレの着替えも、 ここに置く必要ある
な。 いや、 風生がこの部屋出ればいい」
何だ? 勝手に何言ってる?
私の調子が悪いのをいい事に、勝手な事を
言った。
「何言ってるのよ……。 急に無理でしょ」
「今日みたいな事、 あってもやだし。 風生と居たい。 ずっと……」
ベッドに入り、寄り添う。
夕馬の匂いと温もりに私は包まれた。
安心するな。やっぱり……。
悔しいけど、腹立つけど。
ぼんやりとする中、感じる夕馬の全て。
私は眠りについた。




