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幾つもの夜を超えて  作者: 七草せり
11/36

素直になれたら

翌朝。ほぼ無言のまま、夕馬と朝食を食べ

支度をした。


お互い、何を言えばいいか分からないと言う

雰囲気だ。


それでも出勤し、オフィスで顔を合わせる。


夕馬は営業に出かけるから、まあ余り顔は

見ないだろう。


今、朝食を食べ終われば、重たい空気からは

脱出できる。


「風生…。 今日は帰るの?」


コーヒーを飲みながら、夕馬が聞いた。


「服とかあんまりないし。 色々片付けないと……」


手短かに答えた。



別に夕馬が悪い訳じゃない。

話をきちんと聞いて、夕馬と向き合わない私だって悪いんだ……。


いや、でも。やっぱり私に黙ってあの娘に

色々聞く夕馬が悪い。

夕馬の夢。私だってきちんと聞きたい。


不安になるけど、話し合うべきだし、夕馬は

夢なんて。 とか言ってたじゃない。


なのに、何で。



夕馬のコーヒー。今日は飲まない。


手早く朝食を済ませ、食器を片付けた。


「先行くから……」


顔を見ず、部屋を出た。


何意地張ってるの。ちゃんと話せばいいじゃない。


エレベーターの中、何と無く後悔した。


私の捻くれの意地っ張りが、邪魔をする。

子供じゃない。 でも、大人にもなり切れな

い……。


あーっ! もう! イライラするっ」


マンションの外、青空が恨めしい。



イライラ、モヤモヤは、仕事中も私の中にあって、 何だか今日は集中できない。


私情を挟むなんて、許されないけど。

仕方ないじゃないか。


「何? 今日は不機嫌じゃない? 何かあったの?」


隣人の質問にさえ、答えたくない。


「別に、 普通だよ」


パソコンの画面を見ながら答えた。


「そーお? 何か違う感じするけど」


「何でもないよ! 仕事しよ」


それ以上、聞かれなかった。




「あっ! 高野さん。 昨日はありがとうございました! 送って頂いて、 嬉しかった」


横目でチラリ、二人を見た。


送って行ったんだ。ふーん。

まあ、一応女の子だし、可愛いしね。


どうでもいい。 関係ない。


自分の心の狭さ。 本当にイヤになる。



「いやいや。 こちらこそ、 ありがとう。

色々参考になったよ。 色々知ってて驚いたし」


やけに優しいんだ。私への嫌がらせ?


仲良く話す二人。 置いてけぼりの私。


私達の距離が、遠くになる。



腹立たしい気持ちで、一日を過ごした私。

今日は自分の家に帰ろう。


時間になり、帰り支度をした。



「高野さん。 今日も……」


そんな声が聞こえてきた。


今日も?


今日も何?


聞けない私。 足早に会社を後にした。


沢山の思いが胸を掴む。

痛い気持ち、チクチクとつきまとう。


振り切りる様に駅へ行き、電車に乗った。


考えない。 何も聞いてない。

自分に言い聞かせた。


電車のドアにもたれ、ぼんやりと考えてしまう。 私の気持ちは、何処にやればいい?


夕馬が分からない。たかがコーヒーの話でしょ? そんなに聞く事あるの?

私に話さない事、彼女に話す……。私はどうすればいい?

貴方の夢、私だって応援するのに。


そりゃ、詳しくないけど。話したっていいじゃない。


すれ違い……。このままでいいの?



自分の部屋に帰っても、グルグル頭が回る。

電話くらい、しろよ。


鳴らない電話、握りしめた。


訳分からない。


頭が本当にグルグル回る……。


私はベッドにそのまま倒れ込んだ。


「ゆうま……」


泣きそうになる。


小さなもつれが、段々大きくなる。


一人過ごす夜は、寂しい。


素直になればいいだけなのに。

話を聞けば……。


遠くなる意識の中、そんな事を考えた。


本当に何か、おかしいかも……。


視点、定まらない。身体が動かない。



私は不安さえも感じることができなかった。


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