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少女達の日常

バトルしません。日常です。

 夕方、西の空が赤く染まり始めた頃のこと。今日もガラシャと霊夢が、日課である境内の掃除をしている。

 ガラシャの巫女服姿は、以前にもまして様になっていた。まるで本職、である。

「それにしても、あなたがここへ来てからこの神社も綺麗になったものだわ」

 石畳の上を掃きながら、霊夢がしみじみと言う。賽銭箱を拭きながら、ガラシャはそれに答えた。

「そうですか?もとからこんな風だった気がしますが」

 ふたを開けて中も拭く。今日もお賽銭は入っていない・・・掃除しやすくていいのだが、複雑な心境になる。

「いいえ、確実に前よりも綺麗になったわ。あなた飲み込みが早いし、手際もいいから大助かりよ」

「そう言って頂けるとは、光栄です。もっと頑張りたくなってしまいますね」

「ところで、最近自分について何か思い出したこととかはあるかしら?」

 言葉に詰まった。ここへ来てから早数日が経過したが、未だに何も思い出せていない。

「・・・その様子だと、まだ何も思い出せてないようね」

「はい・・・」

「でも、焦って事を急いでも何かが変わるわけでもないわ。こればっかりは、自然に思い出すのを待つより他ないもの」

「そう、ですよね・・・」

 前から思っていたことなのだが、自分の記憶を求めるのと同時に、心のどこかで記憶を呼び起こすことに対して、それをためらっている自分がいることに気づいた。

 思い出したくない記憶があるのか・・・いや、記憶を取り戻した自分が、何か違うものになってしまいそうで、それが怖いのだ。果たして、変わってしまった自分を友人たちは受け入れてくれるのだろうか・・・

「霊夢、ひとつ質問があります」

「何かしら」

 一呼吸おいてから、聞きたいことを口にする。

「霊夢はもしも・・・もしもですよ?(わたくし)が」

 その時、上空から何かが落下してきて、掃き集めた落ち葉に突っ込んだ。どかーん、という音と共に、砂埃と落ち葉が乱れ舞う。

「げほげほ・・・ちっ、着地失敗だぜ」

「「魔理沙!!」」

 その中から帚を持って魔理沙が姿を現した。帽子のズレを直している。

「ちょっと、掃除またやり直しじゃないの。どうしてくれるのよ」

 そこへ霊夢が食ってかかった。しかし、当の魔理沙は笑って応じている。

「はは、悪い悪い。これからは気をつけるから」

「これからは、じゃなくてもっと前から気をつけて欲しかったわ・・・!」

 そう言いながら霊夢が首を締め上げた。魔理沙の顔が青くなっていく。

「ちょ、ちょっと霊夢、魔理沙が死んでしまいますよ!やめてあげてください!!」

「・・・命拾いしたわね、魔理沙」

 霊夢が手を離すと、魔理沙は地面に両手をついて倒れ込んだ。

「かはっ、ごほっ・・・おい、マジで死ぬかと思ったじゃないか!」

「それだけ叫べるなら心配はいらなさそうね」

 そんなやりとりの最中、ふと魔理沙が思い出したように言った。

「おお、そうだ。ちょっとガラシャ」

「え、な、何です?」

 つかつかと近づいてきて、ぐいと腕を引っ張られた。

「霊夢、ちょっとガラシャを借りてくぜ!」

 そのまま帚にまたがり、魔理沙は空中に飛び立った。そして、もの凄いスピードで飛び去っていってしまった。ガラシャを連れて。

「・・・・・・何だったのかしら?って、ガラシャが拉致されたー!」

 あとには、わけが分からず戸惑う霊夢だけが残された。





「さて、ここでいいな・・・おーい、大丈夫か?」

 魔理沙とガラシャは森の中に降り立った。しかし、ガラシャの方は目を回している。

まあ、マッハに近いスピードで、しかも腕をつかまれて宙ぶらりんの状態で空を飛んだら、目が回らない方がおかしいだろうが。

「だ、大丈夫・・・です。あれ?」

 この森には見覚えがある。確か、この前霊夢のお使いで来た場所だ。

「どうした?」

「いえ、この森前にも来たことがあるなあ、って思い出したんです」

「そうか、ここを知ってるなら好都合だな。ほれ」

 魔理沙はそう言うと、竹でできたかごのようなものを二つ取り出して、その一つをガラシャに渡した。

「あ、あの魔理沙、これから一体何を・・・?」

「キノコ狩りだよ。この辺一帯を探して、見つけたやつを片っ端からそいつに放り込んでくれ。一杯になったらここに集合な。じゃあ、私はあっちを探してくるぜ!」

 言うが早いが、森の奥へと消えていってしまった。そしてガラシャは、その場にぽつんと残された。

「・・・取り敢えず、キノコを探しますか」

 不平の一言も漏らさず、言われたとおりのことを実行し始めた。その場を離れようとして、ふと立ち止まる。

「おっと、また道に迷ったら大変です。何か目印を・・・」

 スペルカードを一枚取り出し、

「・・・出てこい!」

 棘の生えた球体を出現させると、近くの木に飛ばしてくっつけた。この球体は念じると放電して光らせることができる。最近分かったことだ。

 とにかくこれで、いい目印ができた。

「これでよし、と。さーて、キノコはどこですかね~」

 キノコを求めて、歩き始める。そういえば、と彼女は思いだした。

 キノコは菌の仲間だと本に書いてあった。だったら、じめじめした場所によく生えているはずだ。

「例えばこんな所とか・・・あっ、あった」

 大きな草の葉っぱをどけると、その下にレモン色のキノコが生えていた。柄の部分から取って、かごに入れる。

「これは幸先がいいですね」

 勢いづいて、今度は腐った切り株を調べてみると、

「お、やっぱりあった」

 白いキノコが群生している。まとめて切り株から剥がすと、かごの中に入れた。この調子なら、かごが一杯になるまであまり時間はかからずに済むかもしれない。

「よし、魔理沙のためにも頑張らないと!」

 わけが分からないまま連れてこられて、そのまま放り出されたようなものなのだが、彼女は全く気にしていない。森の深くへと進んでいく。

 もちろん、途中の木々に棘の生えた球体をひっつけておくことも、忘れなかった。


雨の後によく生えているあのキノコ・・・あれって食べられるのでしょうか?

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