二日目、少女と弾幕
東方には外せない、弾幕とスペルがでてきます。
夜が明けた、第二日目である。
とは言っても、まだ辺りは薄暗い。そんな中、ガラシャは夢うつつの状態で目を開いた。
「うーん・・・霊夢・・・ですか?」
枕元に誰かが立っている。しかし、視界が何だかもやもやしていてはっきりしない。
「・・・・・・」
謎の人物はふっと笑った・・・ように思った時には、彼女は再び眠りの世界へと落ちていっていた
目が覚めると、部屋に朝日が差し込んでいた。もう起きないといけない。
布団を押入に片づけ、昨日もらって用意しておいた巫女服に着替える。と、その時何かが畳の上に落ちているのに気がついた。拾い上げてみると、
「これは・・・カード?何のカードだろ」
幾何学模様の入った数枚のカードだった。昨日までは無かったのに、誰かが置いていったのだろうか。とりあえず、霊夢に相談してみることにした。
「霊夢、このカードは一体・・・?」
枕元にあったカードを見せると、すぐに霊夢は答えてくれた。
「これは、“スペルカード”よ。この幻想郷では欠かせない・・・そっか、記憶喪失だっけ。今日は掃除の代わりに使い方を教えるわ、まずは外へ出ましょう」
というわけで、二人は神社の境内へ出てきた。今日もいい天気で、青空が広がっている。
「まずはどれか一枚カードを選んで」
言われて、適当に一枚カードを抜き出す。
「そのまま、カードに念じるの」
「(念じる・・・)」
すると足下に、カードに描かれたものと同じ幾何学模様の陣が現れた。
「わわっ、これは・・・」
「その状態になれば、スペルカードの力が使えるわ。次は・・・そうね、何か適当な目標を見つけて、攻撃するように念じてみて」
何かちょうどいい的はないかと周囲を見渡すと、大きめの石が目に入った。的はあれにしよう。
「(あの石に、攻撃する・・・)」
目を閉じて集中すると、彼女の足下から、棘の生えた球体が複数浮かび上がってきた。
「それ、行けっ!」
そして彼女が命じると、その球体たちは一斉に石の方へ飛んでいった。
「・・・できた!」
「おお、良いセンスじゃ・・・」
霊夢は感心しかけたが、次の瞬間、驚きを通り越してあきれてしまった。
陣から出現した球体たちは、石をめがけて飛んでいった・・・までは良かったのだが、石を破壊するとかそんなことはなく、そのまま石にへばりついている。
「・・・威力が話にならないわ」
「え、どうしてです?」
ガラシャが尋ねると、ため息をつきつつ、答えてくれた。
「スペルカードというのは、この幻想郷内での決闘に用いられる物なの。スピードは良いのだけど、威力がこれじゃあとても勝てないわ」
「そう・・・ですか」
「落ち込まなくてもいいじゃない、もっと他のも試してみれば・・・それにしても、これは何なのかしら?」
しゅんとなってしまったガラシャを励ましつつ、霊夢が何気なくその球体の一つに触れると、
「あうっ!?」
突然、その場にがくりと膝をついて倒れこんでしまった。すぐにガラシャが駆け寄る。
「れ、霊夢!大丈夫ですか!?」
「ええ・・・大丈夫、だけど・・・その」
「どうしたんです!?一体何が・・・?」
「・・・力が抜けちゃって、動けないわ。こんな力があったのね、あなたのスペルは」
さっき球体に触れた瞬間、腕に何かびりっと電流のようなものが走り、直後には全身の力が抜けきって、立てなくなってしまったのだ。
「ああ~、何だかすみません」
「いいのよ、これで使い道も分かったし・・・もう動けそうだわ、よっと」
霊夢が立ち上がって、パッパッと服を払う。体に力が戻ったようだ。
「さて、スペルカードが使えるようになったら、次は弾幕よ」
「だん・・・まく?」
「そう。決闘は弾幕とスペルカードの撃ち合いで勝負をするから、スペルカードを持っている以上、決闘に巻き込まれた時のために修得しておくべきよ」
「何やら物騒な・・・あまり巻き込まれたくはないですね」
「でもここの住人は弾幕が大好きだから、そう言ってばかりもいられないわ。・・・じゃあまずお手本よ、それっ」
霊夢が前方に手をかざすと、彼女の周囲から色とりどりの光弾がいくつも発生し、ガラシャの方に飛んできた。
「えっ?いきなり!?ちょ、ちょっと待って!!」
光弾の弾幕が目の前に迫る。もう避ける暇などなさそうだ。まずい、と思った瞬間ある考えが閃いた。
さっきの要領を思い出し、もう一度球体を出現させる。今度は飛ばすのではなく、自分の前に密集させ、壁のようにした。
そこへ弾幕がぶつかり、煙を上げる。衝撃で少々形が崩れたが、彼女の作った壁はそこに健在だった。
「おっ、そういう使い方もあるわけね」
「あ~びっくりした・・・不意打ちはひどいですよ」
「さ、あなたの番よ。遠慮無く撃ってきなさい」
と言われても、撃ち方が分からない。
「えーと、どうやって撃てば・・・?」
「イメージよ、イメージ。スペルカードの時みたいに」
「なるほど」
イメージさえあれば、この幻想郷では何でもできるのではないだろうか。一瞬そう思ったが、面倒なので考えないことにした。
気分を落ち着けて、両手を前に出す。そして霊夢の弾幕を思い出しながら、自分の弾幕をイメージする。
「・・・(こんな感じかな?)」
すると周囲から黒色と白色をした弾幕が生じた。
「うまいうまい、そのまま相手に向かって飛ばすのよ」
「・・・行け!」
ガラシャが念じると、弾幕は霊夢の方へ飛んでいく。
「おっと・・・」
速い、ガラシャの弾幕を避けつつ霊夢はそう思った。弾幕には慣れているのだが、ここまでの速度を誇る弾幕にはあまりお目に掛かったことはない。
「凄いわガラシャ、あなたには才能がありそうね」
「えっ、そう・・・ですか?」
できれば弾幕もスペルカードも使いたくないのだが、そう言われると、少し照れる。
「さて、ちょうどいい時間だしお昼にしましょうか。食べ終わったら、また練習よ」
「は、はい!頑張ります!」
かれこれ、この弾幕講座は丸一日続くこととなった。
第二日目の、終わりである。
もっと文章力を磨くよう、精進致します。