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少女と忘れ物 その3

三部構成最後の回です、ではどうぞ。

 殴り合いながら、ガラシャはホワイトに問いかける。

「ところでホワイト!なぜ(わたくし)を殺そうとしているのでしたっけ!?」

「決まっているだろう!?君が僕を殴って馬鹿と罵ったからさ!!」

 お互いに平手と拳を一発ずつ、相手からもらった。

「はあ?紫さんからはもっと別の理由を聞いた気がしますけど!?」

「ああ!?そうだっけ?忘れたよ!!そう言う君は、どうして僕と戦っている!?」

「女性に向かってまな板などと言う奴は、死ね!これから育つのですからね!!」

 ホワイトを殴りつけて、彼女は答えた。

「くくく、君は心のどこかで分かっているはずさ・・・そんなものは幻想・・・」

「この大馬鹿者!!」

 また言い終わらない内に、今度は平手を一往復、合計二発喰らわされた。

「ぐっ・・・ふ、ははははははは!」

 頬を押さえて突然、ホワイトは笑い出した。

「ああ、馬鹿馬鹿しい・・・何て馬鹿馬鹿しい争いなんだ・・・」

 そう言いながら、拳を握り固めてガラシャを殴りつける。

「だが・・・不思議だ、この解放感は!!」

「うるさいですよ、ちょっと静かにしなさい!!」

 今度は言い終わった瞬間に頬を打たれた。

「ぐあっ、うるさいのはどっちだよ!!」

「そっちに決まってます!」

「いいや!そっちだね!!」

 お互いに罵りながら相手を殴りつける。しばらくして、二人は同時に壁に手をつき、寄りかかった。

「はあ、はあ・・・ああ、もうやってられないよ。次で・・・最後だ!!」

「はあ・・・そう、ですね・・・では終わらせましょうか・・・!!」

 二人とも息を切らせながら、ホワイトは拳を握り固め、ガラシャは相手の攻撃に備えて身構えた。

「うらあああああっ!!!倒れろ、まな板娘えっ!!」

 ホワイトが床を蹴って、距離を一気に詰めてきた。固められた拳が繰り出される。

「まな板言うなあああああっ!!!」

 ガラシャはそれに対し、手刀で彼の額を狙って繰り出した。



 クロスカウンター、二人の攻撃はほぼ同時にそれぞれの相手を捉えていた。




「お、決着がついたのか?」

 もはや他人事のように、魔理沙は一人つぶやいた。





「ぬぬぬ・・・この卑怯者!!!」

 そう叫んだのはホワイトだった。彼の拳はガラシャではなく、間一髪のところで彼女が出現させた、棘球に当たっていた。

「卑怯もラッキョウもあるものですか」

 ガラシャの言葉と同時に、棘球が青く光り放電を始めた。

「ぎゃああああっ!!!またか・・・」

 放電がおさまると、彼は両膝を床についてがくりとうなだれた。

「はあ・・・僕は何をむきになっていたんだろうか?」

 ため息をつくと虚空からスペルカードを数枚取り出した。

「まだスペルはあるけど・・・もう使うだけの気力も、体力も無い・・・」

 そう言って、ばらばらと床に落とす。そしてちょっと笑うと、

「・・・認めたくはないが、僕の負けのようだ」

と、そう言った。それを聞いたガラシャは、彼と同じように微笑んだ。

「ええ、あなたの負けです」

 彼女はそう言うと、右手をホワイトに差し出した。

「・・・?」

 その手を見て、彼は不思議そうにガラシャを見上げる。そんなホワイトに、ガラシャはもう一度微笑んで言った。

「一緒に、帰りましょう?」

「ふっ、本当に君は人が良すぎる。自分のことながら、やはり馬鹿だね」

「自覚はあります」

「ははっ・・・そうか」

 彼女の手を取って、ホワイトは立ち上がった。

「ホワイト、もう苦しくはありませんか?」

 そう問いかけるガラシャに、彼はちょっと笑って答えた。

「ああ、何故だろうね・・・今はとてもいい気分だ」

 その笑顔は混じりけのない、純粋な笑みだった。

「(今思えば、彼女にわざわざスペルカードを与えたのも、殺すと言って追いつめたのも・・・こうして自分を認めて欲しかっただけ・・・だったのだろうか・・・?)」

「ホワイト!ぼーっと突っ立っていないで、早くここから出してくださいよ」

 ガラシャが彼の方を振り返って言う。

「・・・ホワイト?」

 ホワイトのいた所には空間の割れ目ができていた。そこから神社の境内が見える。

 しかし、彼の姿がない。

「ちょっと、悪ふざけはやめてください!どこです?」

 周囲を見回すが、やはりどこにもホワイトの姿は見あたらない。

「ホワイト!いるなら返事を・・・!?」

 空間の割れ目が徐々に小さくなり始めていた。このまま閉じてしまえば出口は無い。

「ああもう・・・!か弱い女性に重労働まで押しつけて・・・!!」

 ガラシャは魔理沙とアリスのもとへ急いだ。

「魔理沙!ここから出ますよ!!」

「ん?もう姉弟喧嘩の決着はついたのか?」

 こんな状況でも、魔理沙はのんきなものである。

「その話は後にしてください!!」

「わわっ」

 アリスを背負って魔理沙を抱き上げると、ガラシャは空間の割れ目に飛び込んだ。


ホワイトはどこへ・・・?

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