一日目、終了
続きを読んでもらえるとは、感謝の極みです。ではどうぞ。
「うわっ!? ちょ、何事!?」
夜明け頃、外から聞こえた爆発音に、霊夢は飛び起きた。境内の方から聞こえたようだが、仮にもこの幻想郷の警察のような役割も兼ねている神社の中で、ドンパチするような輩がいるはずはない。
何はともあれ彼女が外へ飛び出すと、
「かんせーい! 私ってば、てぇんさいですね!」
小さな円柱状の、カプセルのようなものを高く掲げて、目を輝かせてそれを見上げている……
「あなたは……華美香! 何をしてるの!?」
「あ、霊夢さんでしたか! ちょうどいいものが出来上がったところなんですよ!」
華美香の姿があった。が、霊夢の関心ごとは彼女ではなく、
「いいも悪いもないわ! 何よ『コレ』は!?」
「私の『工房』ですよ。カッコいいでしょ」
霊夢の指差した境内の隅の方に昨日まではなかった、金属部品や鉄くずを集めてできた小屋のようなものが建っていた。あちこちに、煙を上げる煙突のような出っ張りや、稼働している歯車のようなものが見受けられる。
なぜか得意そうにしている華美香に、霊夢は襟首を掴んで詰め寄った。
「ふざけないで! こんなものいつ作ったのよ!?」
「えっ、工房の作製はキャスターの基本スキルでしょ!?」
「意味分かんないこと言ってるんじゃないわよ! ここ誰の土地だと思ってるの!?」
「えっと、霊夢さんのですよね?」
「分かってるなら何でこんなもの建ててるの!?」
「だって『工房を作ったらダメ』だってどこにも書かれてませんでしたし」
「他人の土地で、地主の許可も取らずに建造物を作ったらダメに決まってるでしょ!」
「だってここいい感じにスペース空いてましたし、研究するのに良い空気だったんですもーん」
「開き直るな!? 今すぐ片付けなさい!」
「嫌ですよ! せっかく作ったのに!」
子供の悪戯を叱りつける母親と、開き直る子供のような会話をしていた二人だったが、話が通じないと見たのか霊夢は華美香の襟首を離すと、小屋の方へと歩いて行った。
そして、何やら経文の書かれたお札のようなものを数枚手にすると、
「だったら解体させてもらうわ! 『』」
胸の前の辺りで印を結び、小屋に向かって投げつけた。
するとお札がまるで弾道弾のように飛んでいくと、小屋に命中して爆発を起こした。轟音と共に煙突と歯車や鉄くずが吹き飛び宙を舞う。それを目にして華美香は悲痛な叫び声を上げた。
「ああああー壊した! 何てことするんですか!?」
「意外と頑丈ね。もうちょっと本気でいこうかしら」
「やーめーてー! お願いですから!!」
「離しなさい! 退く気が無いのなら、力づくで退いてもらうまでよ」
しがみつく華美香を振りほどくと、霊夢は更に数枚のお札を取り出して投擲の体勢に入る。
「あーそうですか……だったらちょうどいい。『コレ』の性能試験といきましょうか」
すると華美香は泣き顔から、急に真顔になった。そして先程から持っていた小さなカプセルを構えると、右手の長袖を捲り上げ、その下に装着していた金属製のガントレットにはめ込んだ。
瞬間、彼女の体が白い光に包まれ、
「解体工事は依頼していませーん。お引き取り願いまーす」
「は!? いつの間に!?」
「さーて、いきますよー?」
瞬時に小屋の前に移動していた。その上、霊夢の持っていたお札が無くなっており、いつの間にか華美香の手に握られている。
彼女はお札を投げ捨てると、ガントレットを着けた右手を握りしめる。すると再び彼女の体が光に包まれ、霊夢の目の前から消えてしまった。
「セイヤッ!」
「はっ!」
直後、彼女の背後から荒々しい喧嘩キックが飛んできた。まるで流れる彗星の如き速度の一撃だったが、霊夢も即座に対応し、肘と膝で相手の蹴りを受け止める。続けて先程とほぼ等速度の左ストレートが繰り出されるが、これももう片方の腕で防いでしまった。
意表を突かれたのか華美香は目を見開くと、再び右手を握りしめ、光と共に後方へ瞬間的に移動して距離を取った。
「……いやいや、何で対応できちゃうんですか。何で光の速さについて来れるんですかぁ!?」
「動きが素人ね。どんなに速くても、直線的だから簡単に予測できるわ。予測ができれば対応するのも容易いことよ」
「そんな馬鹿な……! あり得ない、私の発明がこんなにも簡単に!!」
霊夢の言葉に華美香は、まるで悔しがる子供のように地団太を踏むと、顔を真っ赤にして右手を握った。白い光と共にその姿が消えるが、
「後ろね。背後を取ればいいってもんじゃないわよ」
「うえ!?」
「」
ちょっと長いでしょうか・・・不束者ですが、なにとぞよろしくお願いします。