少女と忘れ物
アリスまで倒れてしまい、もう後がない・・・!
アリスが倒れると、ホワイトはガラシャの方を向いた。その瞳は混沌として、なおかつ渦巻いている。
「これで仲間は二人とも満身創痍・・・やっと君を殺せるよ、ガラシャ」
「ガラシャ・・・お前だけでも、逃げろ・・・」
魔理沙の言葉に、ガラシャは首を横に振って答えた。
「仲間を置いて逃げるわけにはいきません。それに、この監獄に出口はありませんよ・・・そうでしょう?ホワイト」
その問いかけに、彼は目を細めた。
「いい勘だよガラシャ、さすがは僕だ」
「・・・あなたの考えそうなことです。一応私ですもの」
お互いに言うと、ガラシャはまず魔理沙を壁にもたれさせた。
「ガラシャ・・・お前・・・」
言いかけた魔理沙を片手で制すると、ガラシャは微笑んで言った。
「必ず勝って戻ります。だから、ちょっと待っていてくださいね・・・ホワイト!」
「言わずとも。君の仲間二人に手は出さないよ」
「・・・それを聞いて安心しました」
ガラシャは立ち上がると今度はアリスを壁にもたれさせ、ホワイトの方へ一歩踏み出した。
一方、博麗神社。
「はっ!?私は一体・・・?」
「気がついたみたいね」
霊夢が飛び起きると、横に紫が座っていた。
「紫!ガラシャにアリスは!?・・・ぐっ」
体に激痛が走る。杭を打ち込まれた部分の痛みが、まだ消えない。
「あのホワイトって子と戦いに行ったわ」
「わ、私も・・・痛だだっ!!」
立ち上がろうとする霊夢を、紫は強引に寝かせた。
「その体では無理よ。今はただ、祈りなさい」
「・・・・・・」
「棘球!」
棘の生えた球体がホワイトに向かって飛んでいく。
「はあ、そんな玩具みたいなスペルでは・・・勝てないよ」
軽く体をひねってそれを避けると、彼は虚空からカードを出現させた。
「すぐ楽にしてあげる・・・杭符“パイルバンカー・・・ぐあっ!!」
壁に当たってバウンドした棘球が、背後からホワイトに引っ付いた。そのまま青白く光り始める。
「味な真似を・・・ぎゃああああっ!!!」
ホワイトが悲鳴を上げた。背中に付いた棘球が、激しく放電している。
「爆!」
そしてガラシャが印を切ると、爆発を起こした。
「やった!・・・わけないですよね」
煙の中から白い影が現れる。
「そうさ、君を殺すまで僕は死ねないからね・・・!」
いつの間にかスペルカードを手にしている。
「さっきスペルの宣言はしたよ・・・君に避けられるかな?」
ホワイトの姿が消えた。
「くっ・・・どこから来る・・・・!」
が、次の瞬間にはガラシャの目の前にいた。
「はい、お終い」
自分の心臓の辺りに、ホワイトの掌があった。
「ガラシャ!?」
いきなり叫んで霊夢が飛び起きた。
「ど、どうしたのよ霊夢」
「いや、何だか・・・とてもイヤな予感がしたのよ・・・」
その額には、気持ちの悪い汗が浮かんでいた。
「終わるものですか!」
ホワイトのみぞおちを蹴り上げる。
「ぐふっ!!」
完全に不意を突かれ、彼は腹を押さえて倒れ込んだ。
「ホワイト!私は争いが大嫌いです、できることならあなたとも戦いたくありません。私の分身なら、あなたもそうではないのですか!?」
そこへガラシャが問いかける。
「ふふふ・・・そんなものは幻想だと、君は心のどこかで気づいているはずさ」
微笑しながら、再びスペルカードを出現させた。
「戦わなくては・・・力が無くては、何も守れはしないとね。神速“極地三連打”」
ホワイトの姿が消えた。
「(さっきはどうにかなったものの・・・今度はどうしましょうか)」
目を閉じて、集中する。
「(感覚を張り巡らせ、対象を捉える・・・)」
頭の中に何かが閃いた。同時に、彼女はスペルカードを手にしていた。
「明鏡“クリア・マインド”!!」
眼前に現れたホワイトに、白と黒の弾幕を浴びせる。
「・・・遅いよ」
避けられ、後ろに回り込まれた。神速の裏拳と共に光弾が打ち込まれる。
「(・・・見える!)」
しかしガラシャにとっては、ここまでの一連の動きはまるでスローモーションのように感じられた。しゃがんで裏拳をかわすと、棘球をホワイトに飛ばした。
「ぎゃあああああっ!!!」
棘球の放電を浴びて、彼はまたもや悲鳴を上げた。
「くそっ、馬鹿な・・・僕の動きが・・・読まれているだと?」
「・・・ホワイト、こんな争いはもうやめにしませんか?」
床に両手をつく彼に、ガラシャは哀れむようにそう言った。
「お人好しだねえ、君は・・・自分のことながら虫酸が走るよ・・・!!」
そう言うホワイトの目は、真っ黒に染まって渦巻いていた。
ホワイトの「ぎゃああああっ!」は、やりすぎたかな・・・
次回に続きます。