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闇に封印されし記憶

ガラシャの記憶に関する回となります。

「・・・ガラシャ」

「何も言わないでください」

 再び、神社の内部。霊夢を布団に寝かせて、そのそばに二人は座っている。霊夢は幸い、気絶しているだけだった。

 しばらくして、ガラシャは口を開いた。

「・・・(わたくし)は、行こうと思います」

「勝ち目は無いわ。霊夢と魔理沙はこの世界でも指折りの実力者、その二人が・・・」

「だから何ですか!!私が行けば、魔理沙は助かるかも・・・」

 今にも泣き出しそうに、ガラシャが叫んだ。そんな彼女をアリスが冷静に諭す。

「あいつは魔理沙を助けてやる、とは言ってはいなかったわよ。あなたが行っても・・・」

「じゃあどうすれば!?」

「まあ落ち着きなさい」

 その時、あまり聞き慣れない声がした。

「「え!?」」

 二人で声のした方を見ると、金髪の女性が扇子を持って二人の背後に座っていた。

「八雲・・・紫さん・・・」

「何の用かしら?」

 アリスが尋ねると、紫は扇子で口を隠して、ふふふと笑った。

「ちょっとお話をね~・・・主にガラシャと、あのホワイトっていう子の話になるかしら」

(わたくし)の・・・?」

「ええ、そうよ。それにこの話は、あのホワイトって子をうち負かす手がかりにもなるわ」

 紫は意味深な笑みを浮かべて、そう言った。

「(相変わらず、どこか胡散臭いわね)」

 アリスはそう思ったが、ガラシャは本気で紫に詰め寄った。

「なら、聞かせてください!助けたい人が・・・」

「うーん、私は別に構わないのだけど・・・」

 妙な所ではぐらかしてくる。少々苛立ちながら、ガラシャは尋ねた。

「どういうことです?何か理由でも?」

「そうね・・・ちょっと、二人きりで話しましょうか」

 そう言うと、紫の背後の空間がばっくりと口を開けた。彼女はガラシャの手を取ると、その中へ入っていく。そして、二人が入ると空間は閉じてしまった。

「・・・・・・ええっ!?一体何が何なの?」

 後にはアリスと、眠ったままの霊夢が残された。




「ぐっ・・・ここは?」

 何も見えない、真っ暗な場所で、魔理沙は目覚めた。そこへ、

「やあおはよう、眠り姫」

 ランプを持って、白い少年が姿を現した。彼の持ったランプの光で、周囲の光景があらわになる。

「!? なんだこれは・・・!」

 そこは周囲を無機質な煉瓦で囲まれた、狭い部屋だった。

 出入り口らしきものはなく、部屋中に飛び散った黒いものがとても不気味に感じられる。

「僕の世界、そしてガラシャのかつての世界・・・そう言えばいいだろうか」

「どういうことだ?」

 魔理沙がそう聞くと、ホワイトの瞳が渦巻いた。

「まあ・・・ガラシャが来るまで、二人で昔話でもしようか・・・」

 ランプを床に置くと、彼は魔理沙の前に座り込んだ。

「僕と・・・ガラシャの話とかね・・・」




 ガラシャは気がつくと、謎の空間にいた。暗くて、周囲には目玉のような模様がいくつも浮かんでいる。

「あなたの封印された過去・・・それを知る勇気」

 突如、目の前に紫の姿が現れた。

「そして、それと向き合う強さ・・・あなたにはあるかしら?」

 その目は先ほどのような、少しふざけたような目ではない。真剣なまなざしでガラシャを見つめてくる。

「ええ、覚悟はあります」

 ガラシャはまっすぐに紫の目を見つめ返して、そう言い切った。紫は少しの間があってから、

「・・・その言葉に嘘偽りはないようね。なら、話しましょう」

 そう言って、いつの間にか手に持っていたランプを灯した。




「ガラシャは、もとの名前をラシャといって、幻想郷の外の世界に住む至って普通の少女だった。・・・まあ、あえて言うことがあれば手品、奇術なんかが人一倍好きだった・・・ということぐらいかな」

「その前に・・・なぜお前が、ガラシャの過去を知っているんだ?」

 煉瓦で囲まれた部屋で、ホワイトと魔理沙はランプを中心に向かい合って座っている。

 魔理沙の問いに、ホワイトは相変わらずの無表情で答えた。

「まあ、まずは最後まで聞いてくれ・・・ところがある日、大きな戦争が起こった。無論、彼女はそれに巻き込まれた・・・」




「そして、あなたは両親と共に逃げた・・・けれども、敵国の兵に捕まり・・・」

 話している途中で、ガラシャが苦しげに呻いた。

「ぐっ・・・思い・・・出したく・・・な」

 閉じた鍵を合い鍵で開けるような、生やさしい感触では決してない。むしろ、わざわざ合わない鍵を使ってこじ開けようとするような、とても気持ちの悪い感触だ。

「やっぱり、もうやめましょうか?」

 紫が尋ねると、彼女は頭を抱えたまま横に振った。

「そう、なら続けるわよ。囚われの身となったあなた達家族は、それぞれ別の収容所に送られた。そこで・・・あなたは数々の拷問を受けた・・・」




「何だって!?」

 魔理沙が声を荒げて立ち上がった。それをホワイトが制する。

「まあ落ち着いて、座りなよ。・・・酷いものさ、無力な少女を平気で拷問にかける軍人・・・普通なら、大人でも耐えられないような仕打ちに彼女は長い間、耐え続けた」

 珍しく、ホワイトは哀れそうに言ってため息をついた。

「そんな・・・でも、話を続けてくれ」

「・・・君は勇気があるねえ、他人の心の闇を覗こうとするなんて・・・」

 彼の瞳が渦巻き、ランプの炎が踊った。


戦時の監獄って、どんな場所だったんでしょう。知りたくはありませんが。

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