動き出す異変 その2
バトルはまだ続きます。
霊夢と魔理沙が出かけてから、すぐ後のことだっただろうか。表の方から、何やら騒がしい音が聞こえてきた。
「ガラシャ、ちょっと待っていなさい。様子を見てくるわ」
アリスが一人で行こうとすると、その腕をガラシャが捕らえた。
「一人では危険ですよ、私も一緒に行きます」
駄目よ、と言おうとしたのだが、ガラシャの目を見ると、絶対に引き下がる気配のない、強い意志の光が彼女の目に宿っていた。
「・・・分かったわ、一緒に行きましょう」
さすがに断るなど、考えも及ばないことだった。
ガラシャの手を取って、外へ出ようとしたその瞬間、凄まじい音がして玄関の戸が吹き飛び、何かが飛び込んできた。
「!? 一体何が・・・って、霊夢に魔理沙じゃない!」
「二人とも、大丈夫ですか!?」
駆け寄ると、霊夢と魔理沙の二人はうーん、と呻いて立ち上がった。
「痛たた、ちょっと・・・油断したわね」
「ああ、だが今度は・・・って、あれ?何でアリスとガラシャがいるんだ?」
きょとんとした顔で魔理沙が聞いてきた。
「何だかよく分からないけどあなた達、さっき戸を破って入ってきたのよ」
説明しながら、アリスが玄関の方を指し示す。それを聞いて、霊夢と魔理沙の表情が一変した。
「二人とも、ここから絶対に離れないで!!」
「いいか?絶対にだぜ。私たちはあいつを倒してくる!!」
それだけ言うと、二人はまた外へ飛び出していってしまった。
「ちょっと!ちゃんと説明なさいよ!あいつって誰なの!?」
「・・・行ってしまいましたね」
「はあ・・・」
またアリスとガラシャは神社に二人、残された。
「・・・よし、これで中には入れないわ」
神社の外へ出ると、霊夢は神社の建物に強力な結界を張り巡らせた。
「これで二人は安全・・・あとは、あのホワイトって奴を待つだけか」
「ええ、今度はさっきのようにはいかせないわよ」
二人は身構えて、来るべき敵に備える。そこへ、白い影がゆっくりと歩いてきた。
「往生際の悪い・・・まだ僕の邪魔をするつもりか」
無表情でため息をつくホワイトに、霊夢は尋ねた。
「その前にあなた、ガラシャに会ってどうするつもりかしら?」
「殺す」
無表情で、さも当たり前であるかのように、彼は平然と言った。
「てめえ・・・私の義妹に手出しはさせないぜ!!」
八卦炉を魔理沙は構えた。小さな八角形の、熱を操る魔道具である。
「喰らいやがれ!“マスタースパーク”!!」
八卦炉を持った方の掌をホワイトに向けて突き出すと、そこに光が収束し始めた。そして、そこから虹色のレーザーが彼に向かって発射された。
「綺麗な光線・・・でも、それだけだ」
ホワイトはそう言うと、マスタースパークが当たる寸前でひょいと身をかわした。
「やはり失望・・・」
その時、霊夢がにやりと笑った。
「かかったわね!!」
「何だって?」
気がつくと、ホワイトは周囲を七色の弾幕に取り囲まれていた。
「さっきの光線は囮だったか・・・」
「“夢想封印”!!」
霊夢の弾幕が一斉に襲いかかる。が、
「・・・遅いよ。全くもって、遅すぎる」
人間離れしたステップと体裁きで、弾幕をかわしていく。ローブのような、本来ならば動きにくいはずの白装束を着ているにも関わらず、である。
さすがの二人も、これには言葉を失った。
「な、何なのよ・・・あいつは」
「とても人間とは思えないぜ・・・」
最後の一発を宙返りして避けると、ホワイトは着地と同時に地面を蹴って、二人に急接近してきた。
「・・・杭符“パイルバンカー”」
そして、スペル宣言と共に彼の姿が消えた。
「また消えた・・・はっ!霊夢、危ない!!」
「え?」
突如、ホワイトは霊夢の前に姿を現すと、彼女のみぞおちに掌を打ち込んだ。
「ぐはっ・・・!」
「さっきのお返しだ、受け取ってくれ」
打ち込んだ掌から杭状のビームを放ち、またもや彼女を大きく吹き飛ばした。そして自分の手を、ぱっぱっと軽く払う。
「弾幕とはナンセンスな・・・遊びで勝てると思ってるのかな?」
「ふん、それはどうだろうな」
彼のすぐ横で、魔理沙が八卦炉を構えていた。
「この距離なら、さすがのお前も避けられないだろ・・・“マスタースパーク”!!」
「ああ・・・絶望した・・・」
虹色のレーザーがホワイトの体を飲み込む。
まだ続くぞ・・・