Chapter 8 Part 1
あれから1週間が経ち、クリスマスを直前に控えた金曜日。羽田空港には冬の柔らかな日差しが降り注ぎ、旅行や帰省客で賑わっていた。しかし、片山たち管制官は普段通りの業務をこなしながらも、サイバー攻撃の脅威に備え、気を緩めることなく臨んでいた。
「今日も無事に終わればいいんですけどね。」
真奈美がヘッドセットをつけたまま小さく呟く。鈴木が苦笑しながら答えた。
「大丈夫だ。いつものようにやれば何も起きない。」
「そうだな。今の状況に集中だ。だが、油断はするな。」
片山の冷静な声が飛び、管制室内は再び引き締まった空気に包まれる。真奈美と鈴木は互いに視線を交わし、小さくうなずいた。
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一方、倉木と伊藤も、空港内で捜査と監視を続けていた。その巡回には、なぜか内田も加わっており、倉木や公安の捜査員と並んで歩く姿は、場違いなほど明るい足取りで目立っていた。警視庁の捜査員たちはターミナルや通信設備の周囲に配置され、異変がないか細心の注意を払っていた。人々の行き交う賑わいの裏側には、確かに目に見えない緊張が漂っていた。
「これだけ警戒していれば、そう簡単には動けないだろう。」
内田が軽く肩をすくめ、周囲の張り詰めた空気を和らげようと笑みを浮かべる。
「油断するな。」
倉木の低い声が内田の冗談をかき消した。
それでも内田は気まずさを振り払うように小声で続けた。
「いやぁ、でも倉木さん。こうして空港を歩き回ると刑事ドラマみたいでちょっとワクワクしますね。俺、背後にカメラ来てないですか?」
倉木は眉ひとつ動かさずに答える。
「何能天気ことを言ってるんだ。これはドラマじゃない。お前の冗談で空が守れるのか?」
「いや、まあ……それは。」
内田が肩をすくめると、周囲の捜査員たちが小さく苦笑した。場の緊張が一瞬だけ緩み、しかしすぐに倉木の鋭い視線が全員を現実へと引き戻す。伊藤は真剣な眼差しでモニターを見つめ、淡々と告げた。
「攻撃者は必ず隙を狙います。クリスマス直前――混乱を引き起こすには絶好のタイミングです。」
倉木は静かに周囲を見渡しながら付け加えた。
「一瞬の油断が致命傷になる。それを肝に銘じろ。」
その言葉に、空港内の空気はさらに張り詰め、誰もが無言で歩を速めていった。




