Chapter 7 Part 2
その夜、管制塔内のブリーフィングルームで対策会議が開かれた。集まったのは片山をはじめとする管制官の面々。それに加えて、公安部の倉木、そして羽田空港長の磯村も参加していた。室内には普段の業務会議とは異なる緊張が漂っていた。
ホワイトボードには空港システムの概略図が描かれ、赤いマーカーで重要部分が囲まれている。片山と倉木が前に立ち、会議を進行した。管制官たちは皆、背筋を伸ばし、ただならぬ雰囲気に集中していた。
倉木が一歩前に出て、改めて口を開いた。
「攻撃はこの1週間以内に行われる可能性が高いという情報が入っています。具体的な日付や時間帯、ターゲットとなるシステムについてはまだ特定できていません。」
その言葉に室内がざわめく。内田が眉を寄せてすぐに声を上げた。
「その情報の根拠は? どこからの筋なんですか?」
倉木は淡々と首を横に振った。
「情報源に関しては申し上げられません。公安の機密情報です。ただし、ここ1週間以内に何らかの行動が起こる可能性が高いというのが我々の確信です。」
「情報源も言えないってか……。」
内田が小さくつぶやく。その言葉には苛立ちが滲んでいた。
片山が低く落ち着いた声で口を挟んだ。
「今は情報の信憑性を疑っている場合じゃない。もし攻撃が起これば、空港全体が混乱に陥る。その前に、やれることをやるだけだ。」
その言葉に一同が静まり返った。空港長の磯村が重々しくうなずき、言葉を継いだ。
「羽田空港は日本の玄関口であり、世界に向けた航空の要だ。我々の責務は、その運用と乗客の安全を絶対に守り抜くことだ。そのためにも、皆さんの力を貸してもらいたい。」
磯村の言葉は参加者たちの胸に重く響いた。三津谷や篠田も無言で頷き、その表情に決意が浮かんでいた。
「しかし、一週間以内か……。」
佐藤が呟くように言い、会議室に再び緊張が走った。
片山はホワイトボードを指し示しながら、具体的な役割分担を告げた。
「システム監視を強化するため、内田と篠田は設備担当と協力し、異変がないか随時確認してくれ。」
「了解です!」
篠田が力強く答える。内田も短くうなずいた。
「三津谷は空港内で情報を管理する部門と連携して、最新の情報収集を行ってほしい。」
「了解しました。」
三津谷はメモを取りながら即答した。
「真奈美、鈴木。お前たちは通常業務を続けながら、通信状況の変化に特に注意を払え。」
「はい、了解しました!」
真奈美の声には決意がこもっていた。
「わかりました。」
鈴木も真剣な表情でうなずいた。
片山は視線を倉木に向けた。
「それで倉木さん、警察側としてはどのような対策を?」
倉木は静かに答えた。
「警察庁とも連携し、サイバー専門のチームがサポートに入ります。空港内にも捜査員を配置する予定です。しかし、最終的に現場を守れるのは皆さんです。そこを忘れないでいただきたい。」
その言葉に、会議室の空気はさらに引き締まった。誰もが自分に課せられた責任の重さを実感していた。
片山が再び全員を見渡し、力強く言った。
「もし攻撃が始まったら、即座に連携して情報を共有し、被害を最小限に抑える。それが我々の最優先事項だ。」
佐藤もすぐに言葉を添えた。
「その通りだ。皆の働きが空港全体を守る力になる。一人ひとりの冷静な判断と連携を信じている。全員、チームワークを徹底して臨んでくれ!」
「はい!」
一同が声を揃えた。その声には迷いがなく、緊張の中にも確固たる意志があった。
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会議が夜遅くまで続いた後、解散の時間となった。真奈美と鈴木は片山のもとに駆け寄る。
「片山さん、私に他にできることはありますか?」
真奈美が真剣な眼差しで尋ねる。
片山は一瞬目を細め、静かに答えた。
「今はただ自分の仕事をしっかり果たせ。それが最も重要だ。」
その言葉に真奈美と鈴木は顔を見合わせ、決意を新たにうなずいた。
「わかりました。」
窓の外に広がる夜景は美しかった。しかしその光の向こうに、不穏な影が確かに迫っていることを、全員が心の奥で感じていた。




