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AIRPORT 1 Complete Edition : 東京国際空港管制保安部  作者: Sully Hughes


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Chapter 1 Part 1

4月のある朝、片山直樹は、大分の郊外にある静かな墓地に立っていた。春の風が木々を揺らし、彼の頬を優しく撫でていく。目の前にある古びた石碑に向かい、片山は静かに手を合わせた。

「……行ってきます。」

短くそう呟くと、彼は深く一礼した。その声は誰に届くわけでもないが、胸の奥に積もった思いを吐き出すような響きだった。片山は立ち上がり、傍らに置いていたスーツケースの取っ手を握った。15年間勤務した大分空港を離れ、新たな舞台に向かう。振り返ることなく墓地を後にする姿には、過去を抱えながらも前を見据える覚悟がにじんでいた。

________________________________________


その頃、東京・羽田空港の管制塔では、管制官たちが慌ただしく業務をこなしていた。壁一面に広がるガラス窓の向こうには、滑走路にひっきりなしに離着陸を繰り返す航空機の姿。無線機から飛び交う英語と日本語の声が絶え間なく響き、管制塔は緊張感に包まれていた。

「東京タワー、こちらANA652、ランウェイ34Rにアプローチ中。」

「ANA652、了解。ランウェイ34R、着陸を許可します。」

落ち着いた声が返る一方で、別の席では若い管制官がオドオドとした声で指示を出していた。

「えっと……JAL301、ランウェイ……あ、ちょっと待ってください。」

緊張で詰まりかけたその声に、隣のベテラン管制官が静かに口を挟む。

「JAL301、こちら東京タワーです。ランウェイ22から離陸を許可します。」

その一言で、無線は滞りなく続いた。若い管制官は小さく息をつき、感謝の視線を送った。ベテランはそれに気づきながらも、何事もなかったかのようにモニターに視線を戻す。塔の中では、こうした小さな支え合いが日常的に繰り返されていた。

________________________________________


同じ頃、塔の隣にあるレーダー室でも別の緊張感が漂っていた。薄暗い室内には大型モニターが並び、無数の光点が規則正しく動いている。レーダー管制官たちはその光の動きを凝視し、絶えずヘッドセットでやり取りをしていた。

「スカイマーク712、位置確認、北西15マイル。高度一万八千。」

「スカイマーク712、確認。高度維持。」

机の上には分厚いフライトストリップが積まれ、素早く書き込まれては次々と整理されていく。室内の空気は重くはないが、集中の糸が張り詰めている。時折、冗談交じりのやりとりで場が和むが、再び全員の目はモニターに戻っていく。羽田の空を支える舞台裏は、この部屋からも始まっていた。

________________________________________


昼過ぎ、大分からの便が羽田空港に着陸した。タラップを降りてきた片山は、浮き足立つ心を抑えきれないように周囲を見回した。15年ぶりに地方空港から飛び出し、足を踏み入れる巨大空港の喧騒。国内の玄関口として絶え間なく動く羽田の空気は、片山に新たな挑戦の重みを実感させた。胸の奥に小さな不安がよぎる一方で、大分で積み重ねてきた経験を試す舞台に立つことへの高揚感も確かにあった。

スーツケースをピックアップした片山は、空港職員に声をかけた。

「すみません、今度配属になる管制官です。管制部へ行きたいのですが。」

「こちらの通路を出て左に向かってください。関係者用のシャトルバスが出ています。」

「ありがとうございます。」

片山は深く会釈し、案内された方向へ歩を進めた。高くそびえる管制塔を見上げると、その存在感に圧倒される。あの場所から、無数の航空機と人々の命が守られているのだ。

「さて……いよいよだ。」

片山は改めて深呼吸をし、一歩ずつその塔に近づいていった。


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