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デブでも銀河は夢を見る  作者: 八嶋緋色


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201/209

201 戦場から離れていても…

先週、インフルに掛りまして、体調がなかなか戻りませんでした。話の続きをお待ちいただいた皆様、申し訳ありませんでした。

 「緊急放送。緊急放送。敦賀(つるが)市がN国の戦闘機による空爆を受けた模様です。小松基地から航空自衛隊が向かっています。自衛隊車両通過のため、小松IC―敦賀IC間の北陸自動車道は、一般車両の通行を禁止します」


 百葉村のシェルター最下層では、担当職員がそれぞれの仕事に専念していて、話し声1つ聞こえず、その代わりに、低くうなるモーター音だけが響いていた。

 そのコンピュータルームにも、政府が発した緊急放送は響き渡った。


 作業中の担当職員はみな、緊急放送を聞いて、自分のパーティションから顔を覗かせた。


 銀河も、同じように顔を出した葉子と目が合ったので、つい話しかけてしまった。

「今回の攻撃は、戦闘機による空爆なんですか?何か違和感がありますね。弾道間ミサイルが、再び撃ち込まれるかと思ったんですが・・・」


 葉子は、自分のパソコンの画面から、北陸地方に配備してあるドローンからの映像を、早送りで見始めた。

「うーん。戦闘機は100機ぐらいだね。テルミット焼夷弾(しょういだん)を大量に落としていったみたいね。敦賀の街が火に包まれているわ」


 銀河は、葉子の後ろからパソコンを覗き込んで、声をひそめて、葉子に話しかけた。

「なんか、冷静ですね。人的被害も出ましたよね?」

「いや。そもそも敦賀市は、美浜(みはま)原発から15kmの地域だから、現在住民は立入禁止になっている地域だ」

「なんで、そんなところを空爆したんでしょうか」


 後ろから織絵(おりえ)がやってきて、葉子の肩を静かに叩いた。

3人は、葉子の作業用パーティションに潜り込んで、ドアを閉めた。少し狭いが、職員全体に知らせる話ではないので、銀河も事情を察した。


「織絵の予想は?」

「敦賀を焼き払って、これから上陸する拠点を作るんじゃない?」

物騒な話に、銀河は突っ込んだ。

「N国軍が上陸してくるんですか?お二人はどうして、そんなに冷静なんですか」


 織絵と葉子は顔を見合わせた。

「まあ、想定したパターンのうちの1つだからね。うちの『戦略AI』は、この作戦は60%の確率で起こると予想していた」

「『戦略AI』って、そんなものがあるんですか?」


「どこの国にもあるでしょう?こんなに生成AIが進歩したんだから、どうやったら戦いに勝つか、AIに考えさせるでしょ?日本政府にもあるよ」

「当然、「戦略AI』は、未来TECにもあるんですか?」


「そうだねー。ただ未来TECの『戦略AI』は、日本政府が目指す日本と、方向性が違うけれどね」

「方向性とは?」


「J党が国民に提示する()()()は『強い日本』だよね。でも、未来TECは、戦前や高度経済成長時の『大国』を目指しているわけじゃないんだ。災害に強く、少ない人口でも、人が幸せに生きられる国を作ることが、未来TECの方向性だね。だから、利害が一致する時だけ、日本国に協力はするだろうね」


 銀河は、未来TECの目指す()()()について、それ以上、質問をしなかった。それを聞くことで、引き返せない立場に立つことになることが、分かっているようだった。


「銀河、君は利口だね。いいよ。何も聞かなくて。今回の仕事も、細かく分業して、全体が見通せないようにしているのは、情報漏洩(ろうえい)への対策というより、みんなの心を守るためなんだ」

「翔太郎や慶司にも、何も話していないのですか?」

「勿論。銀河だって、蒔絵に何も話さないだろう?」

「そうですね」

銀河はその後、黙り込んでしまった。


 

 話に一段落ついたので、銀河が仕事に戻ろうとすると、パーティションの外には、もう誰もいなくなっていた。自分のパソコンには、ニュースに対応した新しい指令が来ていたが、今日中に終わりそうな仕事なので、銀河はまた、仕事に集中し始めた。



 銀河が出て行った後、葉子と織絵はまだ打合せをしていた。


「銀河はあんまり追及してこなかったね。まあ、もう少し戦略について話してやっても良かったんだけれど」

「話さない方がいいんじゃないか?遠隔操作でも、人の死に関わったことが分かると、トラウマを抱えちゃうよ」


「織絵も、この作戦を遂行したら、自分の心が傷つくと思う?」

「私をロボットだと思っているの?私だって、今回みたいに上陸してきたN国人を、すべて殺すのはできれば避けたい。トラウマで、酒に溺れちゃうかも」

「でも、翔太郎君だったら、酒は止めるでしょ?」

「止めるだけじゃなくて、健康を害することには厳しい。自宅に看護師がいるみたいだ」


「ふーん。でも看護師は添い寝はしてくれないでしょ?」

織絵は、少し顔を赤くして、視線を()らした。

「いやー。腕枕が思いの(ほか)、気持ちいい」


 乳癌の治療が一段落着いた織絵を、葉子は温かい目で見た。結婚後は、以前のような荒れた様子は影をひそめ、落ち着いた生活を送っているようだ。翔太郎も、熊に襲われた後遺症はなく、最近は仕事に復帰したようだ。幸せな結婚生活が、織絵に良い影響を与えているようだ。


「なにさ、葉子だって、家に帰ったら慶司君に甘えているんでしょ?」

「ふふーん」

「何、その意味ありげな笑顔は、あー、もしかしたら」

「ごめんね。一足先に、赤ちゃんができちゃった。だから、悪阻(つわり)が始まる前に、戦争を終わらせたいんだ」


「おいおい。無理するなよ」

「まあね。『家族』を守るために、お母さんは頑張るよ」


 未来TECが守るのは、身近な「家族」であって、「日本全体」ではないようだ。

今まで、各種、天災を描いてきましたが、やはり、人災を書くのが一番辛いですよね。

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