表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

プロファイル:深見真の場合

※この話は「ミスフィット・バトルフロント」シリーズ 0章2話です。

今回の視点主は、深見 真。現実主義者で警察出身の彼が、地球人外研究所という未知の組織に巻き込まれていく導入回。

チーム結成に至るまでのやり取りと、彼の人物像を掘り下げながら、物語の核心にも少しずつ触れていきます。

よければ、前話「予測された未来」も合わせてお読みください!

0章2話:プロファイル:深見真の場合


――チッ、また認証かよ。


深見 真は、舌打ちと共にズボンのポケットから“喫煙券”を取り出すと、腕の端末にかざした。


《ID認証完了。喫煙権限:外出1回分、消費》


即座に冷たい音声が流れる。


《吸煙後は空間洗浄を行い、吸殻の完全消去を確認してください》


「……毎回これだよ」


深見は革巻きのケースから手製の紙巻タバコを一本取り出し、唇に挟んだ。今どきこんなものを吸っているやつはほとんどいない。毒も匂いもなく、快感だけを再現する電子タバコが主流になった今、紙巻は“贅沢品”を通り越して“文化遺産”扱いだ。


火は、自動点火デバイスで点ける。センサーが指紋を読み取り、ナノレベルの熱線が一瞬だけ閃く。煙はナノフィルターで空間から瞬時に消され、吸殻は“熱消滅処理”で霧のように消える。


「技術の進歩ってのは、便利だけど面倒くせぇ方向に行くな……」


今や紙巻タバコは一箱7万円。喫煙券制度が導入されたのは80年前。健康被害だけでなく、空気清浄費用の問題もあり、国家は旧式タバコに高額課税を課した。


それでも吸うのは、単なる趣味じゃない。深見にとっては“儀式”だった。思考を整え、感情を整えるための。


そこに、一本の通知が届いた。


《特例出向命令:対象 深見 真。即時対応を求む》


「……なんだこれ」


―――


「生活安全部・特殊事件対策課、巡査長の深見 真、君には突然で済まないが異動してもらうことになった」


警視庁の所長室。その日、深見は出向命令を突然言い渡された。


「異動ですか」


「いやすまない。言葉を間違えた、出向だ。形式上は異動扱いだが、実態は違う。上からの指示でな」


「行き先は?」


「地球人外研究所。授業で聞いたことはあると思うが……まあ、そういう場所だ。お前に断る権利はない。とにかく行け」


出向などこれまでにも何度か経験していたが――


移送車は黒塗り、窓なし。行き先も告げられず、所持品のすべてを回収された。スマホも、GPSも使えない。


監視役の職員たちは一様に無口で、軍人のような立ち振る舞いをしている。


(……ここまで厳重な扱いは初めてだな)


深見は、移送される道中で、(流石に警察の仕事で行くんだいきなり殺されるっていうことはないだろう、やらかした覚えもないしな)とどこか楽観的だが未知の情報で満たされて行くこの上空間に居心地の悪さを感じていた。


――そして到着したのは、無機質な鉄の扉に囲まれた地下施設。


その奥、重々しいドアが開き、彼は一人の男と対面する。


「ようこそ、深見 真。私は京極永徳。この施設の責任者をしている者だ」


一見して、老人のような印象を受けた。目の下のクマ、やつれた頬、60代のくたびれたお爺さんのイメージをうける。


(この爺さんなんかすごい疲れてそうだな)


「地球人外研究所。世界連合政府日本地域における、“外”の存在と関わる最前線だ」


「“外”ってのは……宇宙人のことですか?」


「一部はそうだ。だが問題はもっと根深い」


京極は立ち上がり、重たいファイルを机に並べていく。


「三十年前、宇宙銀河帝国が地球に侵攻した。地球は滅びかけた。が、宇宙銀河連合に加盟することで、かろうじて生き残ることが出来た」


「……宇宙戦争ですね。学校で習いました。“宇宙銀河帝国が撤退した大勝利”って私は習いましたけどね」


「それは表向きの話だ。真実は違うがな、、、」


「……でも、それがこの話と何の関係が?」


京極の声が一段低くなった。


「戦後、地球には奇妙な現象が増え始めた。君もニュースで聞いた事があるか、それとも捜査で関わったことがあるかもな」


深見は眉をひそめる。


「超常現象……ってことですか。すみませんが私はその手の話を信用してません。どれも宇宙起源の現象か、未知のナノ兵器の類だと思ってます。それにそういった事に関わる事件は新たに宇宙部が設立されて宇宙由来のものはそっちで処理、もしくは我々の様な捜査1課が共同で対処に当たる様になっています。なので不可思議なことが起ころうとそれは宇宙由来で片付くのではないでしょうか?」


「ふはは、それもあながち間違えではないな」


京極は一枚の写真を差し出した。そこには、真夜中の都市上空に“空が裂ける”ような光景が映っている。


「さて、これを見てどう思う?」


「……宇宙由来のワープではないのでしょうか?これを見せられても私の考えは変わりませんよ」


「君は頑固だな。だがそれがいい、とてもいいなその考え方。はぁそうやって何でもかんでも宇宙由来に出来たらこちらの仕事も楽になるのだがな」

京極はため息をつきながら言う。

深見は思う。(なんか俺いま小馬鹿にされたか?)

「で、私に一体何をして欲しいのでしょうか」

「君には、あるチームを率いてもらいたいと思っている」

「なるほど。それでそのチームは一体何名で構成されるのでしょうか。」

「君を含めて3名のチームだ」

「少なすぎませんか。私が所属していた所でも最低4人からでしたよ、バディ制って事でしょうか。」

「あぁ、済まない誤解させてしまったな、実行部隊は君を含めて3名だ」

「ふむ、3名、、ですか。ちなみに聞いてみてもいいですか。なぜ私を呼んで、チームのリーダーにしようと思ったのか。」

「確かにそうだね。部下にまとめさせた資料だがね、深見 真。28歳。警視庁巡査長。警視庁1課にて検挙率全国3位。判断力、行動力、倫理観すべてにおいて安定した数値。感情より論理、理想より現実。功利主義的で命令には忠実、だが人命優先を徹底する傾向あり。暴走の兆候なし。責任感が強く、部下に慕われる。規律に厳格で、かつ状況に応じた柔軟性を持つ。リーダー適性ありという事で君をリーダーにしようと思ったのだが、君のお眼鏡に叶った話だったかな?」

(うわ、きもぉ)

(おぉ、スッゲェな今初めて純粋にキモいって思ったわ)

(やっべぇな、これ絶対逆らったらヤバい奴だな)

顔を少し引き攣らせながら深見は言う

「そこまで、調べ上げられてるとは恐ろしいばかりです。」

「まぁ、これはあくまで私が選んだ理由の裏付けに過ぎないがな」

「では、このよく調べ上げられた情報以外に理由があると?」

「あぁ、そうだ」

「どういった理由かお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「そうだな。君の情報を暴いてばっかりで私の話、自己開示が少なかったな。私はね未来が見えるんだ、それもこの現代にいる予言者、未来視、占い師、予知者たちの中で最も優れた未来視を持っていると自負するぐらいにはね。まぁこの能力がなければこんなやつれることはなかったんだけどね」

「いきなり、オカルティックな話になりましたね」

「ほう、未来視はオカルティックなのかい。君の中では」

「えぇ、そうですね。現代では物質の流れ、いわゆる粒子を見る事で未来予測をしようとしましたが、粒子の未来の状態は、波動関数によって確率的にしか記述できず、位置と運動量を同時に正確に測定できないという不確定性原理のため、科学的に完全な予測は原理的に不可能である。との結論が再三出されています。そのことを踏まえて、私は正直あなたの話をオカルティックであると判断しています。」

「ふふ、いいね。さすが宇宙技術ネイティブχ(カイ)世代という訳だ」

「そうやって、世代をくくる行為はハラスメントにあたると記憶していますが?」

「はっはっは、ここまで情報を集められて、誘拐同然で連れてこられているのにそこまで口を叩けるのは将来有望だね」

深見は口を噤む、自分でも驚きだがここまで自分が不利な状況であるのに挑発めいた言葉を放ってしまったのはなぜかと考え込んでしまう。

「さて、ここまでで君が聞きたい話は以上だろう。条件の話に移ろうか、年俸は前職の5倍。喫煙権限:回数制限なしの為の税金123万円の免除。住宅、医療、そのほか生活に関するものはすべて支給。あとは……君自身が決めてくれ」


深見は一度目を閉じ、しばらく無言で考えた。


そして──


「……タバコと、最低限の自由があれば、私は従いますよ。あと、私が決めてもいいなら、、、、、、」





「ふむ、その条件でいいんだね」

「えぇ、構いません。」

ふぅ。

深見はため息を着く。

よし、いっちょタバコの為に頑張るか

「これで、3人揃ったな。にしても深見が1番条件が軽くなりそうだったのにな」


―――


合流室。


重いドアが開き、深見が足を踏み入れると、そこには2人の“仲間”がいた。


1人は、妙な髪色にだらしない服装、古びたオカルト雑誌を読んでいる青年。挨拶も軽く、「僕の名前は御守 尊。今日から仲間だね、よろしく!」と飄々と笑ってみせた。


(……オカルトオタクで、アホっぽいが人あたりはよく人付き合いは純然にこなせるタイプだな)


もう1人は、無表情で立っている小柄な少女。

だが、目の奥に宿るのは人間のそれではない。

名前は、AIKO。日本の電子頭脳開発研究所から移送されてきた戦闘AIらしい。


「深見さん。身長175。観察開始──……

ピーーピッピピ

はい、悪人ではなさそうですね!」

「これからよろしくお願いします!」


(……喋った、ここまで精巧なアンドロイドは見た事がない、今まで様々な事件に関わってきたが、ここまで人間に近い素体はサイボーグでしか見た事がないぞ)


見た目は人間、言葉も人間。だがその仕草には“何かが足りない”様に感じる


(……こいつらと、……チーム?)


深見は、軽く頭を抱えた。


「……胃が、痛くなりそうだ」

お読みいただきありがとうございました!

今回は深見視点で、世界の“裏側”と彼のスタンスを描いてみました。

タバコ描写は、彼の「感情整理の儀式」としての側面を強調しています(税金免除で就職を決める男、深見)。


御守とAIKOとの出会いはまだ「第一印象」ですが、今後の話でどんどん掘り下げていきますのでお楽しみに。

次回は、視点を変えて、チームの中で最も異質な存在――御守 尊の内面に少しだけ迫ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ