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7話 ひと悶着

 ひとしきり釣りを楽しみ、ニジマスを六匹、ブルックトラウトを三匹程持ち帰ることにした。ブラウン、ブルックが呼び出せたということは鮭科の魚も召喚出来るという事だな。

 待っててね、ミーシャ。キングも近いぜ!?


「ね、釣り堀やって他の獣人にも釣らせるとして、お代はどうするの?私たち獣人は金銭ってゆう概念がないよ?タダ、ってワケじゃないでしょ?」


 もちろんタダじゃない。物のやりとりが金銭じゃないのはエンフェイに糸と針を頼んだ時に聞いた。必要な物は基本的に自分達で何とかする。何ともならない物は奪うのだと。


「うん。わかってる。それで、そこなんだけどね、皆に協力してもらえたらなぁ~、って」


 帰路の道すがら俺の考えていた事を皆に話した。


「私はヤよ( ̄Д ̄)」


 まだ何も言ってないがきっと言うと思った。


「大丈夫。ミーシャはさ、この辺の主なんだよね?」


「まあね~~( ̄ω ̄)/」


「これから色んな種族の獣人に楽しんでもらおうと考えてるんだけど、きっと、トラブルも起きると思うんだ。俺は人間でここでは非力だ。何かあった時はとても野生の力には敵わない。でもミーシャがドンと構えていてくれるとそれだけである程度の抑止力になる。だから“ボス”をやって欲しいんだ」


「メンドーだなあ・・・」


「普段はさ、その辺でゴロリンチョしてくれてて構わないからさ」


「・・・なら、いいか」


「ありがとう(^人^)!次にコロンには引き続きミーシャの畑の管理、定期的な釣り餌の確保を頼みたい。ミミズの感じからとても良い土壌なのがわかるけど、増えすぎると土地が痩せちゃうし、いないのもダメだし。その辺を管理して欲しいんだ。後、出来たら畑の拡張を」


「任せて下さい。私、穴掘るの得意ですから♪それにケンチ様の頼み事なら何でもしますぅ・・・何でも、ですよぉ♡」


「あーー、ありがとう。うん。畑とミミズよろしくね!」


 発言が毎回毎回・・・。選択次第じゃミーシャに俺、殺されちゃうよ。


「で、スゥちゃんにはこれ、けっこうキモなんだけどお代として野菜や果物、お肉なんかを釣った魚と交換する。その交換する物品の評価をしてもらいたいんだ。俺、コッチの世界の食べ物とか、わからないじゃない?だからこの魚なら果物二つ、これなら一つでいいや、とか等価交換ていうのかな、それをやって欲しいんだ」


「承知仕りますが、何故私ごときに?」


「スゥちゃんはさ、エンフェイさんのそばに仕えていたんだろ?あのヒトのことだからきっと色々なものを見たり食べたりしている筈だ。スゥちゃんも一緒に見たり聞いたりしてたんじゃないかなぁ~って・・・」


「ええ。まあ。あのお方の見聞はとても広くそれはご自身に留まらず私共へも伝えて下さります。それはケンチ様も釣り道具の件でお判りですかと。確かに、紛いなりにも側近として仕えていたこの身に、足元に及ばずとも知識はそれなりに染みいって御座いますが・・・正直、ただ世話になるのはいかがなものかと思案しておりました故、むしろ此方よりお願い申し上げたき所存で御座います」


「スゥちゃん・・・歳、いくつ?」


「はい?四歳半になろうかと・・・そうですね・・・ヒト換算ならば十八程度、といったところで御座いましょうか・・・それが何か?」


「いやあ、語り口調が随分と・・・しっかりとしていると言うか何と言うか・・・」


「これは猿妃様の書物より学び取りました。確か・・・『サムライボーイズラブ もののふ』というオス同士がまぐわう面妖な書物では御座いましたが・・・なかなかに・・・」


 こら!!エンフェイさん!!何てものを!!さては同人!?だから中途半端な言葉遣いなのか・・・いや、しかしそんな文化まで広めているとは・・・恐るべしエンフェイさん。


「ふ、ふーん。そうなんだ・・・まあ、いいや。とにかくありがとうね!やっぱりさ、ボルのも、ボラれるのもイヤだからさ、そこんとこしっかりと・・・」

「え!?掘るのも掘られるのも?」


「違います!」 


 つ・・・疲れる・・・。まあ、何はともあれこれで沈め的な面はクリアだ。後はどうやって獣人達を呼びこむかだな・・・。


「やれやれだねぇ。ウチの酸浆(スゥアンジァン)がなかなか帰って来ないとおもったら早速たらし込んでいたのかい。オヌシ、節操ないのぅ・・・」


 ホームに付くとエンフェイがあぐらを掻いて酒を煽っていた。


「ああ!エンフェイさん!御礼が遅くなりました。素晴らしい品々をありがとう御座います!!完璧でしたよ♪」


「・・・酸浆までやった覚えはないがねえ」


 持っていた杯を下ろしギロッと睨まれる。


「嗚呼!!猿妃様!!!幻では無いのですよね!?酸浆は嬉しゅう御座います。ましてや猿妃様自ら迎えに来て下さるなど恐悦至極で御座います!!しかしながら・・・この酸浆、猿妃様の元へ戻る事叶わないかと存じます・・・」


「それはまた、なんでなんだい?」


「酸浆は・・・汚れてしまいました・・・それに・・・」


「なんだってぇ!?そこにおる二人のみならず私の所有物の酸浆まで手に掛けるとは・・・オヌシ、度が過ぎやしないかねぇ!」


 顔を真っ赤にして前のめりになり、かなり怒り始めた。


「ちょっと待ってくれ!!俺は何もしてない!!誤解だ!スゥちゃんもちゃんと順序立てて話して!?」


「ね?ケンチ・・・どういう事!?いつの間に!?事と次第によっては脚の一本咬み千切るよ(`・ω・´)!?」

「ケンチ様・・・私というものがありながら・・・不潔ですぅ」


 うぉ~~い!!二人とも!!援護してくれって!!ずっと一緒にいたでしょう!?


「エンフェイさん聞いてくれ!!スゥアンジァンが品物を届けてくれた時にミーシャに驚いて気を失ってしまったんだよ。それで介抱・・・ってゆうか運んだ時に羆の匂いが付いて群れには帰れない、行く所ないって、だから」

「だから交尾したってのかい!?」


 杯に残った酒を俺にひっかけて立ち上がると牙を剥き出し威嚇してきた!!


「してないって!!この酔っ払い!!ちゃんと最後まで聞けって!!」


 思わず怒鳴ってしまったが、この場合仕方ないだろ?


「オイコラ!!ケンチに何て事すんだよ!!喰い殺すゾ!!コラ!」


 毛の逆立つ程殺気だったミーシャを見て「これは本気だ」と感じ、少し冷静にならなければと思った。そうしなければ大惨事になるだろうから。


「俺なら平気だよ、ミーシャ。心配してくれてありがとう。・・・そんな訳で、じゃあ俺達がここで世話するって話になったのさ」


「・・・そうなのかぃ?酸浆。この男の話は本当なのかえ?」


「はっ・・・恥ずかしながらこの酸浆。言葉足らずで御座いました!!そのせいでお三方を激昂させてしまい・・・申し訳ございません!!」


 土下座で地面に擦りつけるほど深く頭を垂れ謝る酸浆にエンフェイが優しく声をかけた。


「・・・そうかい。無事なんだね?匂い位なんだってんだ、そんなもの私の方でなんとでもなるさね。だから帰っておいで。とにかく、無事でいてくれたならなによりだよ・・おおぅ、よしよし」


 エンフェイさん、見かけによらず仲間思いのイイヒトじゃないか・・・。スゥちゃんもまあ、ボロボロ泣いちゃって・・・。すごく慕われてるのがよく判る。確かに伊達で妃を名乗ってはいないみたいだ。


「ちょっとまてや!なに大団円みたいにしてんだ!!ケンチに酒ひっかけといて何も無しかよコラ!!どー落とし前つけてくれんだオラ(`・д・´♯)」


 どうにも腹の虫の治まらないミーシャはうなり声を上げて威嚇する。まるでヤクザみたいだ。


「済まなかったねぇ・・・これでどうかえ?」


 木に片手でもたれかかるように謝罪するエンフェイだが、それ多分、次郎・・・。


「フン!まあ、いいか」


 いいのかよ!


「次ケンチに何かして見ろ。なんも言わんと喰い殺すかんな!!」


 釘を刺すその顔つきがホントに恐ろしく、ヒトの姿なのに羆が透けて視えるような気がする。


「まっ、まあ、俺ならこれくらい大した事無いよ。ほら!!何時までもプリプリしてないの!可愛い顔が台無しだよ?」


「かっ!かわ!?なっ、何よ。べつにそんな・・・急に可愛いとか言っちゃって(//∇//)(ノ^^)ノ(〃ω〃)」


 分かり易い程浮かれて挙動不審になってるな・・・。


「珍獣使い・・・」


 ぼそっとコロンが呟く。


「なんか言った!?」


「な、何でもないですぅ~!姉御良かったですね~!『可愛い顔が台無しだよ・キリッ』

きゃ~~♡い~~~なぁ~~」


 恥ずかしいから、やめなさい。


「それよりも此方も申し訳なかったです。スゥアンジァンと一緒に貴女の元へ戻って、その場で話をすれば済んだかもしれないのにそれをしなかったのは俺の落ち度です。本当に申し訳ない」


 連れて行った結果、群れには戻れなかったとしても筋は通すべきだった。品物に浮かれて思考が疎かになっていたな。反省です。


「ふむ。こちらとて、そなたに無礼な振る舞いをした。詫び、と言ってはなんだが私に何か出来る事はないかえ?」


 これは、願っても無いチャンスじゃあないか!!エンフェイさんにまた頼るのも悪いな、と思っていたところだったんだ。


「実は・・・釣りの方はお蔭様で上手くいったのですが、釣り堀を開業するにあたって客集めをどうしようかと思案していたところで・・・それに、釣り堀の換金システムを他の獣人にどう伝えるかも悩んでいます」


「キッキッキッ!それはお安いご用さねぇ」


 エンフェイが指をパチンと弾くとそこかしこからわらわらと猿達が集まって来たのだが、誰も言葉を発せずにいるところから獣人ではないようだ。 


「キキッ。実はねぇ、事と次第によっちゃあ1戦構えるつもりで選りすぐりのオスどもを待機させていたんだよ。でもねぃ、どうやら違う役目ができたようだねぇ。獣人じゃあないが器用で頭も良いぞ~?」


 猿軍団の司令官らしき一匹を呼び寄せ、目の前に座らせた。


 「愛すべきお前たちに申し付ける。この者はどうやら楽しげな事を始めるつもりらしい。お前たちはこの者からそれを学び辺りに広めよ!良いな!?」


「キッ」「キキッ」


 皆小さな声でそれに応えたがどうにも納得がいかないらしい。俺を『ツルツルの気持ち悪い猿』とか『何で男の手助けなど』といった風で敵意丸出しの眼差しをぶつけてきているからだ。


「一番の功労者には私のかじりたての芋をやろうかねぇ。むろん、かじった方もじゃ」


 エンフェイの一言で猿どもは一斉に雄叫びをあげた。

「おれだ!!」「いや、おれだ!!」「何をぬかす!おれにきまってる!!」

 猿言葉は分からないが間違いなくそう言っている。その後、ザザと整列して俺にかしずいた。

 ・・・男ってやつは・・・わかるけど。


「エンフェイさん・・・あの、気持ちは嬉しいのですが俺は日本語以外しゃべれません。どうやって伝えれば?」


「その者達は賢い。大体の事は理解するからオヌシは語るだけで良いぞ」


「あー、でも・・・」


「あの!!差し出がましいのですが猿とのやりとり、このスゥアンジァンにお任せ頂きとう御座います。この者達と繋がるということは猿妃様とも繋がれる。帰れないこの身ですがせめて!せめて猿妃様を側に感じていたいのです!!」


「キッキッキッ!今、この場にいる者達は皆、既に匂いが付いておろうよ。ならば帰って来るのに何の問題も無いであろうに。

 キッキ・・・さては、ケンチ殿に心奪われたかえ?」


「そっ・・・それは・・・」


 紅い瞳でジッと俺を見つめる。え?何?ちょっと・・・!イヤァ~マイッチャウナァ~。


「それは断じて御座いません。あのような毛無し猿」


 けっ・・・毛無し・・・ひどい。スゥちゃんだって、エンフェイさんだって遠目で見たら人と変わらない位の体毛なのに・・・。

 


「この者達には少なからずとも恩義が御座います。ただそれだけです」


「キッキッ!フ~ム、恩義ねぇ・・・。まあ、いつでも帰っておいでよ?」

「はい!!有り難きお言葉勿体のう御座います」


「スゥアンジァンが間に入ってくれるなら、とても心強いよ!!これで一気に問題解決だ」


「キッキッ・・・雨降って地固まるだねぇ~」


 それ、雨を持ってきた本人が使う言葉か?


「ありがとう、スゥちゃん!改めてよろしくね!

・・・ところで、何故スゥちゃんもエンフェイさんも服を?エンフェイさんが仕立てた服だから?他の猿達が着てないのは獣人じゃないからかな?」


 素朴な疑問。確かに全員分揃えたら大変な数になるものね。


「気になるかえ?私ら猿の獣人はのぅ、見たとおり体毛が薄い。人とあまり変わらん。よって、裸でうろうろしてはオスどもは皆ピンコダチで困るからねぇ~!キキッ!まぁ、見たければケンチ殿には特別見せてやろうかねぇ?」


 妖艶な目つきで襟首に指を這わせ、ゆっくりと胸元を広げるとたわわな谷間が今にもこぼれ落ちそうになる。


「いや!いや!だっ!大丈夫です!さっ・・・さあ~て、早速だけど釣り堀に向かおうかなあ~。チャチャっと教えて明日からでも開園出来るようにしないとねー。さースゥちゃんいこーかー。エンフェイさん色々ありがとう御座いましたー」


 その場をそそくさと逃げるように池に向かった。背中に刺さるミーシャの視線から逃れるように・・・。



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