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6話 試し釣り

 まずは、仕掛けを作ろう!昨日のうちに十尺程の柳竹を刈って乾燥しておいたのだ♪よく乾燥した柳竹は七三調子で程よくしなる良い竿に仕上がっていた。コレならばある程度のパワーのある魚でもいなせるだろう。

 糸はテグスで例えるなら1号といったところか。二ヒロ五寸とって竿よりもちょっと長め。浮子はその辺に生っていた実が丁度玉浮子のようで、浮かべてみると使えそうだったのでそれを、針は伊勢尼のように少し外に捻ってあり吸込みが良さそうだ。鹿の角で作ってあるのにもかかわらす、環次きになっているところが職人芸で泣かせる。


「ちょっとケンチ!!お・さ・か・な!早く出して!もうお腹減りすぎてコロンが餌に見えて来た!」


 せっせと仕掛けを作る俺の背中を、腹ペコミーシャがポカポカ殴りながら恐ろしい事を言う。


「それはダメだよ!「コロンは友達、食べ物じゃな~い」ってサメも言ってたし」


「・・・ナニソレ?」


 ですよね。


「ミーシャさ、自分で釣ってごらんよ!自分が掛けた魚を食べるってのはいいもんだぞ~!?掛かってくれたお魚に敬意をはらって「頂きます」です。楽しさと美味しさを思い出と共に腹に納める!それが釣りの醍醐味なのですよ」


「やーだ!!面倒くさい!ケンチが出して(>ω<)」


「とりあえずやってみようよ~!ぜっったい楽しいからさ~!」


「ケンチ様ぁ~。仕掛け出来ましたぁ?お魚食べられないケド、早くやってみたいですぅ!!どうすれはいいんですかぁ?」


「お?コロンはやる気満々だね!?よーし、教えちゃうぞ~?」


「私も、嗜んでみようかと思います。先刻聞いたところによると、異国の魚という事ではないですか!そのお魚、食してみたいです」


「スゥちゃんもいーねー!二人まとめて教えちゃう!!・・・ちらっ」


「やだもん。やんないもん(ーωー#)出してくんないなら今すぐ池に飛び込んでお魚採ってくるもん」


「わっ、わかった!!多分ニジマスだけど取りあえずそれでガマンして!?一通り釣りを試してみたら、大きいの出るまでやるからさ!ね?」


「・・・わかった(´-ω-`)」


「ありがとうミーシャ!そんじゃ、お魚召喚!!」


 出て来たのはやっぱりニジマスだったがそれでも尺上の立派な鱒で、渡すときにびっちらびっちらとスゴいパワーだった。よほどお腹が空いていたのかあっという間に平らげてしまい「もっと!、足りないヽ(`Д´#)ノ」と暴れるかと思ったが、意外にも木陰で体育座りして大人しく待ってくれた。


 「んじゃ、釣りましょー!!」


「は~い!せんせー!」

「なんでしょう?」

「この赤い丸いのなんですか」

「それはねぇ~、浮子といってお魚が餌を食べて逃げようとすると、ピコピコンって教えてくれる為のものだよ~」

「はい!先生・・・もむもむ」

「なんでしょう?」

「この針に付ける餌を所望したい」

「あれ??いま渡したミミ・・・ギャアーーッッ!!」


 口いっぱいに餌のミミズを頬張ったスゥアンジャンが針を突き出しこちらに迫る!なんてこった!!

 初めてミーシャと出会った時と同じ位の恐怖を感じる。


「誠に申し訳ない!朝餉かと勘違いしており申した!!」


う、うん・・・。これが普通なんだよ・・・慣れなきゃな。

 って、慣れるか!!むぅ、仕方ない。俺が料理して食べさせるか・・・。目の前で虫とか食べられたら三日三晩寝込んじゃう自信があるし。

 

「と、取りあえず二人とも餌のセット終わったから、早速やってみましょうか!先ずは一回俺のする事みててね」


 淵から少し離れた所に立ち仕掛けを振り込む。鹿角針の自重で餌のミミズが沈み込み浮子が半分程残して漂う。

 池は限りなく透明でそこかしこから地下水が噴き出している。空は青く鳥のさえずりが聞こえ、生コッペパンのような雲がふたつ浮かんでいた・・・。ああ、実に豊かな自然だ。()()()も本来はこういった姿だったんだろうな・・・。

 などと思っていると、浮子がスポッと姿を消し水中を走る。すかさず合わせを入れるとズンという手応え!刹那、右に左に猛突進を繰り返し暴れ回り針から逃れようとする。左手を添えキューンと唸りを上げる竿を支えそれに耐え魚をいなす!


「バシャッ!!」「バシャッシャッ!」


 突進の合間に見事な跳躍を見せたのはピンシャンのニジマスだった。

 その後も二度三度と跳躍を繰り返したがやがて観念して手元へと寄って来る。足元で一度最後の悪あがきをするが、無事に取り込む事が出来た。

 ・・・美しい魚体だ・・・!四十センチと俺の召喚する魚のアベレージサイズだがエリアのトラウトとは引きが段違いだった!!


「っっふぅ~~っ!どうだい?こんな感じの流れなんだけど。餌を振り込む、浮子が沈む、合わせて魚が走るのをいなして、手元に寄せる。ね?」


「スッゴいですぅ!ギユーンでバシャッシャでした!」

「お見事です!!よもやあんなに暴れようとは思いもよらなんだ・・・!見ているだけでも血がたぎる思いでした!」


 コロンとスゥアンジャンのキラキラとした尊敬の眼差し・・・!鼻高々だよ~~!!


「やってみて!?あ、二人ともちょっと間を空けてね?おまつり・・・え~と、お互いに糸が絡んじゃうからさ」

「はぁい!!」

「はい!」


 返事と共に同時に振り込むと、これも同時に浮子が沈み込む。


「合わせて!!」


 慌てながら上げた二人の竿が美しい曲線を描く。


「ひゃ~~っっ!!重っ!グインって、きゃあ~!」

「なんと!!これは!?むっ!お?ぬぬっ!?」


「二人とも~!無理矢理引き抜こうとしないでね!?これは魚との闘いだから!糸を切られたり、ジャンプで針を外れたら負け!!」


「まっ!負けは許されませぬ!!」

「ヴ~~っ。私も、ひ~!やっ、やですぅ!」


 二人のわーきゃー言いながら竿にしがみつくその顔付きは真剣そのもので、魚との駆け引きを存分に楽しんでくれているようだ。

 やっとのことで取り込めた二匹の鱒はコロンの方がやや大きかった。


「おめでとう!!二人とも!どうだい?楽しかったろ?」


「っはぁ、はあ!やりましたぁ~!わ!わ!

おっきいーですぅ!私の方がおっきいですぅ~♪♪」

「くっ・・・呪われてしまえ!!」


 ちょっと悔しがるスゥアンジャンに釣り人特有の()()()の声をかけてやる。


「いや。見てごらんよ!スゥちゃんの方が綺麗な個体だよ!うん!びっ!っと引き締まってて美味そうたし!!」


「そ、そうですか?うん。確かに私の方が鮮やかだ。キレイなコタイというヤツだ」


「釣りはね、数だったりとか大きさだったりとかあるけど、その一匹とどう出会うか?っていうのもあるんだ。いい魚だね」


「ふふふっ」


 よかった。嬉しそうだ。


「ねえ!ミーシャもやってみようよ!俺が付いて教えるからさ~!ね?」


 時折こちらの様子をチラ見していたミーシャに声をかける。


「べ、別にやらなくてもいいんだけど、せっかくケンチが教えてくれるってゆってるのに無下にしたら悪いじゃん?仕方ないからやってみる(●`ω´●)」


 なんて言いながらそそくさと俺の隣にやって来た。もう!素直じゃないな。ホントはやりたかったんでしょ?

 ミーシャに竿を渡して後ろに回り、抱きかかえるようにそっと手を添える。


「ヘンなトコさわんなよ」

「はいはい。大丈夫ですよ~」


 そんなこと言われるとやりづらい。ぎこちなく仕掛けを投入してアタリを待つ。


「姉御だけずっるいですよぅ~!私もそうして欲しかったですぅ~・・・」

「ウム、確かに・・・はっ!?私は何を?」


 後ろの方で何かゴニョゴニョ言っているが集中しているためによく聞こえない。


「!」


かすかな浮子の変化!!半分程沈んでいた浮子がほぼ完全に浮いた。食い上げたな!?


「きた!!」


 合わせをくれてやると試し釣りの時よりもはるかな重量感が伝わる。走るスピードも遅めだがゴンゴンと首を振って暴力的な引きだ!!


「なんじゃこりゃ~~!やばい!やばいよケンチ!!多分でっかい!!牛くらいある!!」


 牛くらいは無いが確かに凄まじい。


「確かにデカいな!!・・・糸がもつか!?ミーシャ、無理しないで行こう!竿と糸の限界のとこで闘うんだ!魚に主導権とられたら絶対糸が切れる!!一緒に頑張ろう!!」

「わかった!ケンチ、頑張ろう(>ω<)」


 とは言ったものの、魚の抵抗はかなり激しく勝算が低い・・・がっ!!


「相手にとって不足なし!不可能を可能にしてきた釣り人、健一様たぁ俺の事よ!!」


 ・・・ご免なさい。言い過ぎた。徐々に主導権を奪われ始めジリジリと沈んだ丸太の影に潜り込もうとする。さほど大きさなものではないが入られたら厄介だ。そうはさせまいと糸に角度を付けてアタマをこちらに向けようと頑張るが、なにせ重い。


「まだ余力を残してやがるな・・・」


 そう思った瞬間、グンッと勢いよく走り出し丸太の影に入られてしまった。

 竿ではビクともしない。どうやら何処かに糸が絡まったようだが、まだ魚が付いているのが視える。


「参ったね、こりゃ」


 ちらとミーシャに目をやると、悔しそうな、今にも泣きそうな、お菓子を買ってもらえなかった子供のような顔でジッと魚の方を向いていた。


「待ってろ!ミーシャ!!アイツは必ず採る!!」


 バッと上着を脱ぎ捨て池に飛び込み、スルリと丸太に忍び寄り抱きかかえると案外楽に動いた。そのまま丸太ごと岸に向かおうとするが、魚の引きの方が俺の泳ぎよりも強い。

 魚の方に目をやると・・・デカい!水の中で大きく視えるとしても八十オーバー有るのではないか??アレはスーパーレインボーか!!雪降る芦ノ湖で何度もトライして、遂に見る事の出来なかった魚が、ここで!!喋りながら召喚していたから気がつかなかった!!これは絶対取り込む!!


「ぶっはっ!」


 一度顔を出して息を貯めると丸太をズルズルと引きずるように力強く泳ぐが、まるで綱引きでらちがあかない。それどころか顔を出すことすらままならい。


「ゲホッ・・・うわっ!!」


 やっとの思いで息が吸えたのに再び水中へのまれた。


“アっタマ来た!!追い込んで抱きかかえてやる”


 抉れた岸辺に寄せて逃げ場を無くし、そっとエラに手を入れて・・・上手くいった!、しっかりと掴んだ魚をギュッと抱きしめ水面から叫んだ。


「ミーシャ!!丸太ごと引き抜け!!」


「任せて!!」


 流石、羆のパワー!!人型で幾分ダウンしているとはいえ、事もなげに丸太、俺、魚の重量を両手で掴み水面からズボッと岸に上げた。


「っはぁはぁ・・・!や・・・やった!やったよ!ミーシャ!!君が掛けた魚だよ!!逃がさないで採る事が出来て良かった!!

スッゲエ~~よっっ!!」


 アドレナリンMaxの俺に目に涙を浮かべたミーシャが抱きついて来た。


「馬鹿ケンチ!!なかなか顔出さないからスッゴい心配したんだから!!お魚採ってくれたのは嬉しいけど、ケンチが危ないならそんな魚要らない!!バカっ!・・・グスッ( ノω-、)」


 「ミーシャ・・・」


「いよっ!!ご両人!!」

「ヒューヒューですぅ~」


 囃し立てる2人の声がずいぶん遠くからに聞こえる。


「ミーシャ・・・あっ・・・あばら折れ・・・息が・・・あっ・・・キレイナオハナガ・・・」


「・・・!!ゴメン(||゜Д゜)」


 ()()()()のベアハッグを食らいちょっと死にかけたがともあれ、無事に捕らえる事の出来た魚はやはり八十オーバーのスーパーレインボーだった。


「うわ~(≧ω≦*)ありがとう~~!!スッゴいね!おっきいね!ねっ!ねっ!食べてもいい??」


「どうぞお召し上がり下さい♪自分で釣った魚は美味いゾ」


「ぅわ~~い♡いっただきま・・・ん。やっぱり皆で食べる!その方が美味しいもん。ケンチ分けて(๑'ω'๑)」


 毎回私の私の言って瞬で平らげてたのに、分けて食べるなんて言い出すとは・・・!やっぱりミーシャは優しい子だ。

 しかし・・・分けろとゆわれましても・・・ん!?


「忘れてたや!!ポッケにナイフ入ってたんだ!!」


 ズボンをゴソゴソと探ると、あった!ヴィクトリノックスのマルチツール!コレを忘れていたなんて!これさえあれば猪木の元気と同じ位何でもできる!!コノヤロー!

 さすがにデカく中骨は硬かったが肩身はカシラ付きの二枚おろしにして半身は更に二分して腹側はスゥちゃん、尻尾側は皮を引いてスライスして俺の。コロンはお魚食べられないからオオバコ、ヨモギ、タンポポのサラダに草イチゴを添えて。


「いっただきま~~す!!」


「う~~!!美味しい~…(≧▽≦)」

「ねっとりと纏わり付く旨味!・・・猿妃様にも差し上げたい」

「色々入っててキレイなご飯ですぅ~♪あ、イチゴ甘酸っぱ♡」


 遅めの朝食になってしまったが賑やかで楽しいひと時だった。もちろんスゥとコロンのお魚も頂いた。どうやら俺の召喚した魚には寄生虫は見当たらないようだったし、薄作りにして食した。旨いね、ニジマス!!


「どうだい?釣り、楽しいだろ!?楽しかったひと、手~上げて~」


「は~~い♪」


 良かった~!皆揃って手を上げてくれた!

手応えは、ヨシ!!これで俺の計画第二節にはいれるな!

 ふっふっふっ。そしたらマッタリゆったりこの素直で可愛い獣人娘達と暮らすのだ!

 が・ん・ば・る・ゾ!!


 



 


 

 

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