3話 チャクチャクと
訳を話すとミーシャは喜んで快諾してくれたが「ケンチは頼み事する時、いつも裸なのね(´ω`:)」と言われてしまった。情けない。いや、前は左手で隠してたよ?ちゃんと!
「早速なんだけど、試してみたい事があるんだ。ちょっとやってみるね」
池に着いたら直ぐ様、右手を水の中に突っ込む。ミーシャとコロンの見守るなか、心穏やかに集中する。そしてグッパしながらお魚召喚!!
「おお~っ!上手くいった!!グッ、のタイミングで強く念じてパッ、の時召喚出来れば、お魚に触らないで呼び出せると思ったんだよね~~!お魚にとってヒトの体温は火傷するほど熱いんだよね・・・。だから極力触らないで何とかならないかしらって・・・。いや~、上手くいった!」
とりあえず、場所と魚は確保出来た!釣り堀オーナー計画の第一歩、だな。
フッフッフ・・・まったりとのーんびりと駄菓子屋のおばあちゃんみたいに
「三十円・・・あいよ~」
とかゆっちやって暮らすんだ。
後は釣り道具をどうするか・・・。俺のタックルはコッチ来たとき無くなってたし・・・。
「やるじゃん、ケンチ(*'ω'*)お魚、めっちゃ元気に泳いでいったよ!ね、おっきいのも何匹か混じってたけど、ソレって選べたりするの??」
「それなんたけど「デカいの!デカいの!」って念じてたんだけど、まだ七回に一匹位しか出てこないらしいや・・・。でも確実に経験値?みたいなの貯まってる感じがするから、もっとデカくて美味いの出せるようになる様に頑張るね!もちろん初めてのヤツはミーシャに献上しますので・・・はい」
「うわ~い!やったあ~っヾ(≧ω≦)」
「うわ~!何だろ~!?オロロモドキかなぁ・・・グンジョウヌシかなぁ・・・!?楽しみ~~( ´艸`)」
無邪気にはしゃいで転げ回るミーシャにちょっと見とれてしまった。カワイイじゃないか!でもね、
「オロロとかグンジョウとか、俺、知らない・・・。コッチの世界の魚かな?多分、知らない魚は呼び出せないと思うんだ。その分、俺の世界の魚呼ぶから楽しみにしてて!」
「え~、そ~なの~!?でもケンチが水浴びしてる間にさっきの大っきなヤツ食べたけど、スッゴい美味しかったからオッケー('ω')ゞだな!・・・ってゆうか今、カワイイってゆった!?」
な!?こっ・・・声に出てたか!?
「いやっ!違っ!そ、そんなこと!聞き間違えじゃナイノカナ~」
「そーかそーか。カワイイか♪うんうん分かってるぞ(ゝω・)」
クネッとポーズを決めるミーシャ。
「・・・ケンチ様、ズルイですぅ・・・!コロンもカワイイって言って欲しいですぅ。モフモフして欲しいですぅ・・・」
駄目だ!!二人ともカワイイけど、ここでコロンにカワイイと言ってしまったら、さっきのが否定出来なくなってしまう!モフモフも我慢する!
「おー。白パンみたいな雲だー。おいしそうだねー。そういや、俺まだ何も食べてないやー。ご飯にしようかー」
棒読み無感情でその場を乗り切りたいと思います。
「いやったあ!!私、さっきの大っきなお魚丸かじり♪」
いや、生でかじれるの、あなただけよ?
「あのさ、俺も食事とってないから何か食べたいんだけど、火、とかあるかしら?俺のストーブは向こうの世界に置き去りみたいだし・・・生食はちょっと・・・寄生虫のリスクが・・・一度冷凍出来ればいいんだけどね」
そう、川魚の生食は色々と危険なのだ。鯉の洗いだとか鮎や岩魚のお刺身は徹底管理の養殖物じゃないと、危ない。美味いけどね(自己責任(>_<)ゞ)
「じゃあ、私と一緒に森で木の皮食べませんか?それと、もしかするとまだ柳竹のタケノコがあるかもですぅ♪」
「き、木の皮は食べないけど、そのタケノコには興味アリです。行こうか、コロン。ほら!ミーシャさんもおいで。森の中で食事しようよ!お魚、いっぱい出すからさ♪」
「ヽ(´ω`*)ゝあ~ぃ♡」
食べ物が絡むとイヤに素直でカワイイな。何か、ドキドキしてきた・・・ああ、分かった!羆相手だから本能的な生命の危険感だな。うん。
コロンに森の中を案内してもらい柳竹の自生ポイントに着くと、そこかしこに篠竹に似た竹(というか笹だな)がいっぱい出ていた。採れたての柳竹は刺身でいけるほどみずみずしく、ほろ苦い山菜、といった感じでなかなかに美味かった。
「!!これ、成長してる竹・・・ものすごい反発力だ・・・!!これは竿に使える!!やった!!竿ゲット~!!
見てくれ!ミーシャ!!竿が・・・」
「ふむ?」
「ひっ!羆!!」
「モグモグ・・・ゴクン。私だよ~(●´ω`●)」
びっ、びっくりした!!!振り向いたら口から魚の尻尾の飛び出してる熊がいるんだもの!
「ん~~♡美味し(//ω//)やっぱお魚は丸かじりが美味しいよね~~♪」
・・・そうですか・・・ま、まあ、喜んで頂けて何よりです。
「んで、なあに?」
「あ・・・ああ。見てくれ、竿が手に入ったんだ。これはいい竿になるぞ~!トンキンバンブーのフライロッドの様だ!!うん♪後は糸と針だ!・・・針か・・・。コッチの世界に金属ってあるのかなぁ・・・」
「キンゾク?ハリ??」
これは・・・無さそうだな⤵
俺は針について説明、というより、これらで何をするのか説明するところから始めなければならなかった。コッチの世界にはそもそも“釣る”という概念が無かったのだ。食べ物は自前の牙やら爪で“狩る”もので、引きを味わうとかは全く意味の無い事だった。それでも俺はここで釣り堀がしたいのだ。やればきっと楽しさが分かってくれると思っている!!
「ふ~~ん。なるほどね~。ただ餌場を作っただけじゃ無かったんだ。
・・・ん~~、糸はともかく・・・ハリ、ねぇ・・・。まあ、用はそんな形の硬いのがあればいいんでしょ?作れるヤツが居ることは・・・いるよ?だけどなあ~~。・・・あ、やっぱ忘れて?」
「え?作れるの??作れるなら絶対欲しいんだけど・・・なんか、歯切れの悪い物言いだな・・・。問題が?」
「う~~。問題、ってゆうか、出来ればソイツに会いたく無い・・・って感じかなぁ( ̄ω ̄;)」
生態系頂点の羆が会いたく無い・・・って、まさかコッチの世界にはもっと凶悪な・・・モンスターみたいなのが居るって事か!?それは俺もイヤだ。
「ん~~。怖くは無いけど・・・鬱陶しい・・・かな」
との事。良かった、モンスターじゃないみたいだな。ま、俺みたいなニンゲンからすれば獣人も十分モンスターなんだけどね。
「お願いだ。それが無いとお話にならないんだ。何でもするよ!!お魚か!?もっとお魚出しましょうか??」
「ん!?・・・何でも??( ̄ω ̄)ニヤリ」
しまった!!ついうっかり定番の定型文「何でもします」を言ってしまった!!これは・・・ヤバい。
「んじぁさ」
「はい」
体が強張る。
「さっきみたいにカワイイってゆって(//ω//)♡」
「かっ・・・!!」
それは恥ずかしいぞ!?何とか回避出来ないものか??しっかり人型になって「ほうら。ゆってごらん?」みたいなポーズで待ってるし・・・。
頑張れ!!俺の脳ミソ!|ぐるぐるぐる・・・ち~ん。
「ミーシャ。それは言われて言うものじゃない。そう思った時に自然と出るものさ。けどね、ちゃんと言うよ?だってミーシャだもん、直ぐにその時は来るよ!だから、その時に・・・ね?」
こんなん出ましたけど~。
「う゛~ん・・・え~・・・今ゆって欲しいんだけどなあ~」
「まあいいか。その時はしっかりゆうのだゾ!!ケンチ!」
「ははっ。了解です」
はあ~!何とか凌げたや。
「・・・モグモグ・・・ケ~ン~チ~さ~ま~。モグモグ。それは姉御にカワイイとゆってるのと同じですぅ~」
静か~に草をモムモムしていたはずのコロンがぬらりと這い寄ってくる。貞子かっ!!
「ズルイですぅ~。私もゆって欲しいですぅ!モフモフして欲しいですぅ~~」
「わ!分かった。そうだね~。いい子だね~。よしよし」
左手でコロンの長い耳と頭をなでなでしてやる。
「わ!それ左手・・・さっきおちん○ん隠してた方・・・!もしかしてマーキングですかぁ?いやぁ~ん♡」
なななっ何てことを!!そんなつもりじゃ無いって!
「うッ・・・」
ただならぬ殺気に総毛立つ。ゆっくりとその主の方を向くと羆が両腕を目一杯広げ威嚇していた!!
「グルオォォ~~!!」
「ひっ!?」
あまりの恐怖に腰を抜かしてしまう。
コロンはサッとウサギに戻りその辺の地面の穴にスルリと潜り姿を隠した。
「ガタガタ・・・姉御、ごめんなさいですぅ。ちょっと揶揄っただけですぅ。ウワァ~ん・・・怖いですぅ~~!」
俺は迫力に当てられ口をパクパクするより他無かったがふと、ミーシャが顔を上げ威嚇を解いた。
「ちいっっ!!向こうの方からコッチ来ちやったよ・・・(´・ω・`)」
何かの気配を感じとった様だがそちらの方を睨みつけたまま微動だにしない。頭の中がハテナでいっぱいだが、どこからかほのかに馴染みのある匂いが流れて来たのに気が付く。
「スンスン・・・ん?果実酒・・・の香り!?」
甘ったるいがかなり度数高めなアルコール臭が鼻腔をくすぐる。一体どこから??
「あ”~~やっぱコッチ来る!!」
ミーシャが苛ついて手近に生えていた木をなぎ倒し、喉の奥を鳴らした。「一体なにが?」彼女の視線の先に目をやると、瓢箪を担いだ艶やかな中華風の衣服を纏ったヒト・・いや、長い尾っぽが生えているからあれは・・・猿の獣人だろうか?酔っ払っているらしく、千鳥足で寄ってくる。アルコール臭は彼女からか。
「キッキッキッ。相変わらず荒れてるねえ、ミーシャは。ぶっちゃけ遠くからずっと見てたけど、お前あれだろ?自分の物盗られそうになって怒ってんだろ?熊の習性だもんなあ。さっさと埋めちまえばいいのによ~。ひっく、うい。それともアイツん時みてえに看取るまでくっついてるつもりかなあ?ひっく」
絡み酒タイプの感じか。確かに鬱陶しいな・・・。それと彼女が服を着ている事が気になる・・・この世界にそんな文化が!?それにアイツとは一体・・・。
「むはぁ~。ひっく。ん~~。近くで見るといい男だねえ!さすがメス二匹従えてるだけの事はあるねえ」
「はあ、どうも」
従えてる訳では無い。くそ、絡むな。早くどっか行け。
「はあ~。素っ気ない返事だねえ~。いいねえ・・・そおゆう男こそ、振り向かせたくなるってもんだ。気に入ったよ」
なんなんだ??このサルは?
「・・・ソイツだよ。ソイツが多分作れる。気に入られたんなら、頼んでみれば?私は気分悪いから家に帰る!コロン!いつまで隠れてんの!背中乗りな。連れてってやる」
「ア~ネ~ゴ~!ウルウル。ありがとうですぅ」
羆の背中にピョンと飛び乗るウサギ。やっぱりミーシャは優しい熊さんだな。
「いいのかい?置いてってさあ・・・。アタシがこのにぃちゃん食っちまうかもしれないぜ?」
「すっ・・・好きにすれば?どうぞ?私のモンじゃないし!」
「姉御!それは駄目ですぅ!!何かアイツ!ホントにヤバい気がするですぅ!ケンチ様と一緒に帰りましょうよ~~」
背中から飛び降りたコロンが人型になり必死にミーシャを止めにかかった。
「・・・ん。ま、まあ、コロンがそう言うなら、仕方がないやヽ(^ω^;・・・ほら!ケンチ!!さっさとハリの事聞いてみたら?」
「キッキッキッ。素直じゃないねえ。そ~ゆ~とこは、昔から変わらないねえ。揶揄い甲斐があって好きだよ?アタシは。
・・・そんで?アタシに聞きたい事があるって?」
俺は釣り堀の事、それは道具が揃わなければ始められない旨の事を猿の彼女に話してみた。
「・・・なる程ねえ。『イト』と『ハリ』ねえ。まあ~~、何とかならんことも、ないやね」
「でっ、出来るのか??」
「交渉次第だねえ。ま、とりあえず長くなるわさ。話しはミーシャんトコで呑みながら聞こうじゃないか」
「う!ウチ来んのかよ!!ヤダよ!!酒臭ぇし!オマエ面倒くせぇし(●`ω´●)」
「まあいいじゃないのさ。アタシらの仲だろう?久しぶりに蜂の子でも頂きたいねえ~酒のアテにさあ。兄ちゃん呑めんだろう?・・・おっと、アタシはエンフェイ、猿の妃って書くんだ。兄ちゃんはわかるだろう?」
「に、人間の??漢字!?」
「まあ、それも含めての話しになるねえ。ホレ、兄ちゃんは?」
「・・・ケンチ・・・だ」
「そうかい。じゃあ、ケンチ。早速向かおうじゃあないかね」
獣人、ってのはみんな強引なのか?俺は引きずられるようにミーシャの家へと連れて行かれた。
・・・何故服を着ているのか?何故人間の世界の言語を知っているのか?ミーシャとは昔からの付き合いな様だし・・・。
聞きたい事が山ほど出来てしまった・・・。まあ、せっかくだし、呑みながら色々と聞くとしようか・・・。