18話 行ってきます
海へ向かうに差し当たって、ここの管理をどうするのか、ヌシ不在で縄張りの治安は保たれるのか?メンバーは??と色々な問題が発生するかと思いきや、あまりにも呆気なく解決してしまった。池の管理は今までもスゥアンジャンが見てくれていたから問題ないし、釣り堀以外に離した魚で補充をして貰えれば1週間位なら運営は何とかなる。出発メンバーに関してはソントンさんはロッジ、コロンは畑とウェイトレスで忙しいから無理。エンフェイは猿軍団の統率が効かなくなるとかでやっぱり無理。結果、俺とミーシャの二人で行くこととなる。それから縄張り・・・コレには驚かされた。
「あんまり会いたく無いかもだけどさ、アイツらロッジの中にはおこがましくって入れないってゆ~んだよね・・・ちょっとだけでも会ってやってくんないかな(-ω-;)」
「・・・ら?」
外へ出ると背中の古傷がちりりと痛む。
3匹の小柄な奴らと一匹のデカい金髪の獣人・・・あまりどころか、かなり会いたく無かったヒト達だった。
「申し訳ございやせんでした!!ホント俺らとんでもねぇ事しました!!俺らココロ入れ替えたんでどうか!どうか!!」
顔を土に擦りつける程の土下座で謝られてはこちらとしても許すよりも他になかった。そう、あの時の、俺の背中にデカい傷を付けてくれたあのライオンとイタチ達!!
実はあれからもう一度ミーシャに襲い掛かり、コテンパンの返り討ちにあったそうだ。長い金髪で隠してはいるが片耳をミーシャに喰われ、泣きながらの命乞いで舎弟にしてもらったのだとか。今まで俺達の前に姿を見せなかったのはいくら百獣の王と謳われたとてバツが悪くて中々出て来られなかったからだ、本当に申し訳ないと・・・まあ、気持ちは分からないでもない。
「まあまあ。そこまでしなくても。ここは弱肉強食の世界だってのに緩い気持ちでいた俺にも非がある。殺され無かっただけでもラッキーだし、あなただって片耳が・・・。それで痛み分けってことで!それよりもあなた方が縄張りの件を引き受けてくれるとはむしろ心強いってもんですよ!!」
「任して下さいや!!俺らが姐さんの縄張り
は命に代えてもきっちり守りますんで!!安心して夫婦旅行を楽しんで来て下さい!!な!お前ら!!」
「へい!!」
「ん?いや!待てっ!メオト!?違うぞ!?」
「またまたぁ~。まっ、こっちは任せて下さい!!兄貴!!俺がゆうのもナンですけど、気をつけて行って来て下さい!!」
「・・・ああ、ありがとう」
ライオン達に礼を言うと再びロッジへ。入り口のドアーを静かに閉めゆっくりと振り向く。
「・・・ミ~シャァ~~!?」
「はい?いや!違うの!「私の(所有物)!!」ってゆったら勘違いして、そんで、訂正すんの面倒くて、んで、そのまんまで・・・(;¬ω¬)」
「いや!ちゃんと説明しといてよ!!」
「・・・そんなに・・・嫌なら・・・ごめんね?分かった・・・ゆっとく・・・(´・_・`)」
明らかにしょげてしまったミーシャ。あれ?俺、罪悪感でいっぱいだぞ!?語気強めだったのも失敗だった。。。
「あー、うん、まあ、無事に帰って来てからでもいっかなー。そうだ!!ミーシャ見て!?すっげーよ!?見てて!」
俺はこの胸の締め付けから逃れるために、この間覚えたとっておきを披露してみせることにした。
「さぁ~てさて、お立ち合いお立ち合い!希代の召喚士、亀井健一の「召喚しよう!ショーしよう」で御座います!!このワタクシの不思議な右手の上で食物連鎖をばご披露したいと存じます。細工は流々、仕上げはご覧じろ。見事演じきれたなら拍手など頂けましたら喜びますのでどうかよろしくお願い致します!」
少し大袈裟に右手をグッ、パッとして手の平を上に向けると
「チャララララララ~ン♪」
と、マジックショーでお馴染みの曲を口ずさむ。
先ずは口細を空に放つ。
「パシャ」っと跳ね出る口細目掛けハスを召喚するとパクッとそいつに喰らいつきまるで俺の右手が水面かのように戻る。続いてハスを呼び出し直すと今度は鱒を召喚!
「バシャッ」と見事な跳躍を見せ落下するハスに飛びつく鱒!素早く収容してもう一度空目掛け召喚、収容。更に召喚からのかなり大型の鮭にそいつを喰わせ収容、召喚、収容。それでフィナーレ!!とした。
「うわ~~!(≧∇≦)!パチパチパチ~!!」
良かった!!ぶっつけ本番でやってみたけど上手くいったぜっ!うん!!やっぱりミーシャは笑顔が一番だな。ショーの成功もあって、俺の心のモヤモヤも一緒に晴れたし!
「スッゴいじゃん!!え?なに!?戻せんの??ってか選べるようにもなったん??すごいじゃん!!」
目を輝かせて喜び、俺のホッペを指でツンツンしてくるミーシャにドキドキを感じるぞ!?艶やかななショートの髪・・・パッチリな瞳・・・ぷっくりとした・・・俺がチュ~しかけた唇・・・。なんだコレ・・・恋?鯉?
・・・違うな。きっとアレだ、獣人化が進んできたせいだな。さっきの鮭、旨そうだったし。うん。そうに違いない。そう思いたい。
「ま、まぁね!俺は小さい頃から「アンタはやれば出来る子なのよ」ってゆわれてたからな!ははっ!!スゲ~だろ!ホレんなよ!?」
「えっ!?惚れ??・・・あ・・・うん(〃¬_¬)」
照れて目を逸らすミーシャがやたらと愛おしく思え、両肩に手を掛けこちらに向き直すと、顔は背けたまま一度チラッと俺を見る。どうしたらいいのか分からない、といった感じのミーシャが可愛くて堪らない!どらからともなく自然と顔が近づき・・・
「掘るとか掘られるとかまたで御座いまするか!?」
「だうっっ!」
「ひよっ!?」
反射的に飛び跳ねて離れる二人。
「びびびびっっくりした!!なんだよ!スゥちゃん気配断って後ろ立つのやめて!?」
「ふむ。ケンチ様がソッチ専なのは結構で御座るが、人目も憚らずいちゃつくのは如何なものかと・・・うらや・・・呪いますよ?」
「えっ!?呪い!?私悪くない!ケンチが、そう・・・!ケンチが悪い!!だから呪うならケンチだけにして(゜ω゜*;)オロオロ(;*゜ω゜)」
「なっ!?俺??」
ついこの間ミーシャは
・テーブルの下に物を落とす
・拾おうとしてオデコぶつける
・拾って後頭部ぶつける
・コップが倒れて水被る
の負のピタゴラスイッチをくらい
「・・・呪いですなニヤリ」
とスゥに言われてから“呪い”がちょっと恐いらしい。
「呪いは遠慮しとこうかな・・・それで?何か用事でも?」
「出発に先だって猿妃様よりケンチ様にと。コレは先日お渡し申した傷軟膏の予備に御座る。それと、頼まれていたヒトヒロ分のハリス付袖五号と鹿の弓角なるもの。そしてコレは・・・ちっ!猿妃様より格別の賜り物など・・・勿体ない!!・・呪われてしまえ!」
「ああ、ありがとう。大事に使うよ・・・ってゆうか、お世話にならないよう色々気をつけて行って来るね」
心の声がダダ漏れのスゥアンジャンから傷薬と、格別だという手のひら位の大きさの木箱に入った何かを受け取った。軟膏は有り難いが、木箱の方はイヤな予感しかしない。
「なにそれ(`・ω・´)」
「ナンデモナイ!!」
・・・だって
極薄 オカモト
って書いてあるんだもの・・・エンフェイのニヤつく顔が目に浮かぶ。
・・・とか言いながら懐へ。万が一。
「ミーシャ様へは拙者からコレを」
・・・天狗のお面だと!?
「うわ~!カッコい~~!いいの??ありがとう~~(≧∇≦)b」
早速被ろうとするミーシャ。
「ダメ!!仕舞いなさいっ!!百歩譲って家に飾りなさい!!」
「え~~?分かった。確かに持ってくと荷物だもんね!置いていく~( ̄△ ̄)」
「・・・ちっ」
「ああ、間に合った!ケンチ殿これもたがいで行ってたんせ。レンコン粉にして作った携帯食だす。なもかもウチのエンフェイ言うには使命帯びで指輪なげに行ったわげもんがこれ食って旅したそうだすよ。確が蓮蓮どがなんとが言ってましたっけがな」
出発の準備が着々と進んでいく。(ミーシャの)ワガママで急に行くことになっちゃったのに、皆なんて手際がいいんだろう。
「うわ~!!ソントンさんありがとう御座います!俺の為に忙しい中作って頂きまして・・・助かります!!大事に食べますね!ん~~っ!いい匂い!」
何か大きな葉に包まれた、そう・・・まるでカロリーメイトの馬鹿でかいヤツみたいなブロック状の携帯食を頂いた。ドライフルーツ入りのと茶葉が練り込んである物とがセットになっていて飽きさせない工夫がソントンさんの優しさを感じさせる。
「ケンチ殿もミミズ食われるのならえがったのんだども・・・んめぁよ?」
「いや!それは・・・」
「ふぇぇ~~・・・ケンチ様さみし~ですぅ!私も一緒に行きたいですけど、ゼッタイ足手まといになって誰かに食べられちゃってウンチになっちゃう自信がありますものぉ~⤵⤵だからお留守番なのですぅ・・・。うぅ~・・・ケンチ様ぁ・・・浮気はダメ!ゼッタイなのですよ~!?だからコロンの毛玉でネックレスってゆう~の作ったのです!着けてって下さい!そんで私だと思ってやらしくモフモフ撫でてやって下さい~・・・ぐすん」
「あ、ああ。ありがとうね!やらしくは撫でないけど御守りとして首から下げとくよ!!・・・ホントにみんな急でごめんね!?直ぐ帰って来るからさ!色々よろしくね!」
「そんじゃあ、行ってきます!!」
ズタ袋一つ、ポッケにはヴィクトリア。最強のお供“羆”!!海までの道中に不安は無い!!もう何が起きても屁のへのカッパッてなもんだ。
「いやぁ~!何とかなるもんだね!!ヒトとの繋がりってさ、やっぱ大事なんだな~!・・・俺さ、向こうで友達とかいなかったけど外面だけはいい方でさ、それなりになんとかなってたんだ。けれどやっぱり上っ面だけの付き合いだからピンチのときにはいっつも独りになっちゃって。でもね?コッチ来て、いっぱい仲間が出来て、信頼されて・・・助けてもらって・・・。本当の仲間ってこうゆ~のか!ってさ・・・俺、今すっげー充実してる!生きてる!って感じがするよ!!」
「へぇ~そうなんだ、良かったじゃん!でも、ケンチが外面のヒトってのはちょっと信じらんないな~。だって全力でイイヒトじゃん。私達は獣人だよ?イイヒトかワルイヒトかはニオイでわかるんだ。ケンチはイイヒト(。・ω・。)」
「・・・ありがとう」
「どういたしまして(ゝω∂)」
「・・・あら!?おはようございます!今日は旦那さん連れで見廻りですか?」
「おはよう。お?番でお出掛けかい?いいねぇ!行ってらっしゃい」
「ミーシャちゃん、おはよう!!あら!?お隣さんは噂の?いいオスじゃないのさ!羨ましいわ~」
恐らくロッジへ向かうであろう獣人達から、すれ違いざま声をかけられその度に足止めを食う。どうも勘違いが広まってしまっているらしいが、いちいち説明するのも面倒で俺は「ええ」「まぁ」「はぁ」と愛想笑いで誤魔化した。
「ミ~シャ?」
「わっ!私じゃないもん!!たぶんライオン達・・・(エヘヘ♪そう見えるのかな(〃ω〃))」
「帰ったら訂正して回らないとな~!・・・ってかさ、ミーシャはいつ海に行ったの?海ってさ、砂浜?磯?どっちでもいいか~。とりあえず塩だな!今まで果物なんかで甘味はあったけど、塩気はゼロだったからさ~!!もうね、海の水そのまま飲みたい位に塩分を欲しているんだよね~!楽しみだな~!!」
「ん~?私行った事無いよ~( ̄0 ̄)縄張りから出た時ないし~」
「・・・えっ!?だって4日位って言ってたじゃん?行った事ないの!?じゃあ、場所位は知ってるの?」
「そんなもん、多分あの辺??みたいって感じ?ん~、獣人の勘ってゆ~の?まあ、何とかなるんじゃない?(≧∇≦)b」
「なんだ・・・行った事あるのかと思ったよ。勘、ってのもまたテキトーだけど獣人は鼻が利くからな。ま、ミーシャを信じましょ!・・・ところで海がどういうところかは知ってるんだよね??」
「ん?海ってゆーのはアレだよね?向こう~側が見えない位でっかくて、砂が白くて、アベックが水引っかけ合って「まて~こいつ~」「アハハハ~」とかやってるトコだろ!?知ってるよ!そんくらい( ̄△ ̄)」
「・・・なんとかなる、ね。ははは、不安しか無いや・・・」
ぼそっと独り言が溢れる。さっきまでの軽やかな足どりが急に重く感じる・・・コレじぁあ、屁のへのカッパじゃなくてヘロヘロカッパだ。
「い~ってらっしゃい!姐さ~~ん!!姐さんの旦那さんも、お気をつけて~~!!」
「おーーっ!ソッチは任せたからよろしくね~~!行ってきま~す!!ヨ~シっ!海に向かってレッツらゴ~ヾ(≧ω≦)」
辺りよりも頭一つ高い木の上からライオン達が見送ってくれている。
俺は手を振り返しながら心の中で、だから旦那じゃないって、とツッコんだ。




