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11話 コロンがころんだ

「もおぅ!聞いて下さい!ひどいんですよぉ!」


 いつになくプリプリとしたウサギのコロンは畑の手入れの際に出会ったオケラに一方的に話しかけていた。


「朝、目が覚めたら姉御がケンチ様の握っていたんですぅ!じぶんから線引いて『ルール!!』とかゆってたクセに、しっかりケンチ様の握って寝てたんですぅ!信じられませんよねっ!手を握ってたんですよぉ!!そんでズルイってゆったら『私は線を超えて無い!』『ケンチの手がコッチ側に入って来ててなんかと間違えて捕まえちゃっただけ!私も寝ぼけてたのp(`Д´)q』ってゆ~んですよ!?」


 突然掘り起こされたオケラはまだ驚いているみたいでその場でじっとしている。


「そんで、私『ズルイズルイズルイズルイ~』ってずっとゆってたら『ウッサい!!早く畑行って朝ご飯の材料採ってこ~~いp(`Д´)q』ってほっぽり出されちゃって!こんな朝早くから労働なんてブラックですぅ!姉御なんて寝てばっかしなのに!!フアアっ・・・私もまだ眠いんですぅ・・・もう!姉御のばかっ!」


 悪態をつきながらもミーシャの大好きな栗ばかりを拾う可愛いコロン。


「・・・そりゃあ大変だ。でもオイラにゃ関係ないね!オイラ忙しいんだ、じゃ!」


 オケラは羽を広げるとバタバタと飛んで行ってしまった。


「わわわっ!喋る虫さんなんて始めてですぅ!これは何やら楽しそうな予感がしますよん!?」


 好奇心に駆られて畑仕事もそっちのけでオケラの後についていく。オケラは大木の根元に空いた大穴へと消えていった。


「お~~い、オケラさ~ん!ドコですかぁ~~?暗くて見えな・・・わ!わ!ひやああっ~~!!」


 根っこにつまづいて大穴に!

ゴロゴロゴロゴロ転がるコロン。一番下まで落ちた先は見覚えのない野原だった。穴の出口はずっと上の方。背伸びしたって届かない。


「きゅううう~~。目が回りましたぁ~~。

・・・う~~ん・・・ここはドコでしょう?あのオケラさんは?」


 キョロキョロ見渡すと森へと続く道を忙しそうに飛ぶオケラを見つけた。


「待って!オケラさん!ここはいったいドコなんですかぁ~?」


「ああ、忙しい忙しい!早く行かなくちゃ!」


 オケラは聞く耳持たず小さな家の鍵穴からスルリと中へ入って行った。


「どうしよう?あのオケラさんに帰り道が聞きたいだけなのに・・・あのオケラさんたら全然聞いてくれないですぅ!こうなったらとっ捕まえて絶対聞いてやります!」


 コロンがドアノブに手をかけると


「あ、イタタタ!そんなに強く握っては駄目だ。それに君は大きすぎて中には入れないよ」


 ドアが喋った!でも今はそんなこと気にしてられない。


「じゃあ、どーすればいいんですかぁ?私、オケラさんに聞かなきゃならない事があるんですぅ!」


「じゃあ、僕のノブをニギニギしてごらん?そうするとノブの先っぽから白い液が出てくるからそれを飲むんだ。そうすれば君は小さくなれて部屋に入れるよ」


「やですぅ!」


「じゃあ中には・・・」


「開けろ開けろ開けろなのです!!」


 ノブを無理矢理ガチャガチャするものだからドアはオウオウと悶え、白いネバネバした液をまき散らして家ごと壊れてしまった。


「うえっ・・・なんかバッチイ・・・スンスン・・・栗さんの花の匂いがしますし最悪!・・・お家壊れちやったし、オケラさん一緒に潰れちやったかもですぅ。どうしましょ?オケラさ~~ん!!」


 でも大丈夫でした。モゾモゾと瓦礫から這い出すと再び何処かへ飛んでいってしまいました。


「よかったですぅ!いや、ってゆーかシカトですかぁ~ヒドいなあ、もう!」


 とりあえずベタベタな手を洗いたくて何処かに水辺はないかとフラフラ歩いていると二匹の子豚が絡んできた。


「ねえねえ!僕たちと遊ぼうよ!」

「遊ぼう遊ぼう!」


「遊びませーん。それよりオケラさん知りませんかぁ?」


「面白い話があるんだ」「えっとねぇ!先ずは僕からね?可哀想な柿の話ぃ~~」


「そーゆーのいいですぅ!どうせ『食べられちゃった』ってオチですよね?オケラさんの事、知らないんならサヨーナラ!おととい来やがれブタヤロー!です!」


 さっさとお別れしたいのにナンパよりもしつこく話しかけてくるものだからサッと森の中へ入って隠れてやり過ごす事にした。

 さて森へ入ったもののやっぱりここがどこだか分からない。途方に暮れてトボトボと歩いていると水たまりを見つけた。乾いてパリパリになってきた手を洗おうとしたとき持っていた栗を一つ落としてしまった。


「ありゃりゃ・・・この栗さん、虫が入ってますね?プカプカ浮いてますもの!これは姉御に『苦い(▼皿▼)』って怒られちゃうとこでした」


 浮いた栗からは直ぐに一匹のイモムシが溺れちゃ敵わないとばかりに這い出してきた。


「わ!ねえねえイモムシさん!ここはドコですか?帰り道知ってます?それとオケラさんがドコへ行こうとしてるのかとか・・・」


「・・・・・」

「え?なんです?全然聞こえないんですけどぉ?」


 イモムシがあまりにも小さい為に自慢の耳でも聞き取れない。するとイモムシは懐から水タバコを取り出して一言ずつ煙で話し始めた。


「え~とっ、な、ん、だ、こ、の、あ、ま、し、ら、ね、え、よ・・・ムカッ!とんでっちゃえです!」


 コロンは栗の上のイモムシを指でぱちんと弾いた。すると、怒ったイモムシがゾウムシとなりコロンに魔法をかけたのです!コロンの体はみるみる小さくなりノミほどの大きさになってしまったのでした。


「わっはっはっ!!どうだ?自分の方が小さくなった感想は?おっかないだろう!俺は強そうだろう!」


 ゾウムシにすごまれてちょっと泣きそうになった。


「ふええぇっ・・・ごっ、ごめんなさいですぅ~!謝りますから元に戻してほしいですぅ~!」


「ふん!もう二度と来んなよ!!・・・仕方ないな・・・そこにキノコが生えているだろう?それを舐めてみな!そのうち元に戻れるから。それとオケラは知らない。じゃあな」


 コロンはゾウムシが言った通りにキノコを一つもいでペロッと舐めてみた。


「・・・はれ?」


 何だか変わらない?もうひと舐め。あれれ??ペロペロペロ・・・ペロリ。


「舌、疲れちゃいました~~。でも十センチ位は大きくなったかもですぅ・・・」


 確かにちょっとは大きくなってきたが不思議なことに、キノコも一緒に大きくなっている。このまま頑張れば元に戻れそうだけど、余りに時間がかかる上に疲れる。そこでコロンはひらめいた。


「そうだ!このキノコで対ケンチ様用にあみ出した必殺のコロンちゃん“ローリングタンタカターン”を試してみるときが来たみたいですねっ!・・・えい!かぷっっ♪」


 キノコを口いっぱいに頬張ると、きゅうううと吸いながらキノコの傘の部分を舌全体で包み込む様にレロレロと舐め回した。するとみるみるキノコは大きくなり、逞しくはち切れんばかりに立派になった。


「ぷはあっ・・・もう十分大きくなりましたぁ♪これなら絶対ケンチ様もイチコロですぅ♪・・・キノコもう要らない。ぽいっ」


 元に戻れたけれどやっぱり何も変わらない。辺りは段々と暗くなってコロンは心細くなってきた。ビクビクしながら森の中を彷徨うと木の上に三日月が見える。


「む~ん・・・こんな時間になっちゃいました。みんな心配してるだろうなぁ・・・ぐすん・・・オケラさんドコへ行っちゃったんだろ」


「知ってる」


「!?だだだっ、誰です!?・・・はれ??三日月さんが喋った??」


「喋るかもしれないし、喋らないかもしれないねえ」


 よく見ると三日月は大きなキツネの大きな口だった。

 

「キツネさん、今知ってるって言いました?若しそうなら教えて欲しいですぅ!」


「何を教えて欲しいのかえ?」

「え?今オケラさん知ってるって・・・」

「誰がだい?」

「キツネさん!今あなたが」

「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れないねえ」

「なんなんです?はぐらかさないで下さいよぉ!私、みんなのトコに帰りたいんですぅ!オケラさんに帰り道聞きたいんですぅ!」

「挨拶と名前すら名乗らない者に教えてやる義理はないねぇ」


「あら!あなただって・・・」と声が出かかったが飲み込んだ。


「・・・今晩は、私はコロンですぅ。はい、お願いだから知ってる事教えて下さい」


「そうかい。アタシはキシャ。帰り道はないんだよ。ドコへ向かっても無駄。ここは全部女王様の所へ繋がっているからねえ」

「じゃあじやあ、オケラさんも女王様のトコへ?」

「今頃みんなで酒盛りさね!アタシもこれから行くところさ」

「じゃあついて行きますぅ~~!」

「そうするといい。女王様は優しいオヒトだからねぇ」


 こうして女王様の所へ向かったのだが既に()()()()()()いて困惑した。


「あんれま~、随分とめんこいウサギだぁ。どぉれ、おじさんの膝の上にのせてやろうかの~!」

「や~、モフモフはやっぱり俺のトコでしょうモフモフ、モフモフ♡」

「ダ~~メp(`Д´)qそこは私がすわるの~~(*≧ω≦)」


 酔っ払いの面子はそれぞれカバ、ペンギン、タヌキだが、何だか他人とは思えない。


「ペンギンの上に座るだと!?呪われてしまえ!」


 多分、この偉そうにしてるレッサーパンダがここの女王様なのだろう。その脇にあのオケラが居たが泥酔状態でグデグデでとても話せる状態ではない。


「あの・・・ですねぇ・・・私、ここに迷い込んじゃって・・・おうちに帰りたいんですぅ。飲み会の邪魔はしませんからどうか帰り道を教えて下さいな」


「私に飲みで勝てたらな!!まあ、この私が下賤の者に負ける事などありはしないが」


「受けてたちますぅ!!」


 勢いで受けてしまったが、直ぐに酔ってしまう事をたった今思い出した。


「アチャ~ですけど!勝負しないとみんなのトコに帰れません!!頑張るのです!コロン!」


 注がれた酒は近づけただけでアルコール臭がツンツンするほどで、女王がパカパカ呑んでいる酒とは色すら違う。これは絶対違うお酒。


「なんだ!オヌシ下戸か!ならばオヌシの負けじゃの!!」

「何だかズルッコですぅっ!いかさまですぅっ!」


「なっ!?この私がズルッコじゃと!!無礼な!!」


 女王の顔はみるみると赤くなりとても怒りだした。


「女王様はズルしかしないからこれはズルくないんだよ。馬鹿だねぇ・・・アンタ」


 いつの間にかに女王の肩に乗ったキツネが言った言葉に腹が立ってきた。


「キシャって言いましたっけ?キツネさん!あなたも大概ですぅっ!このヒト全然優しくありません!嘘つきはドロボーの始まりなんですよお!?嘘つき毛虫挟んで捨てろっ!です!」


「誠に無礼千万なウサギだ!この私のキシャに向かって何て雑言を!!このウサギを捕まえろっ!!呪いだ!!呪い殺してやる!!」


 あちらこちらからキシャの子分らしきキツネが次から次にワラワラと沸いてきてコロンを捕まえようとする。コロンは必死に逃げて、逃げて、逃げてまた森の中へ来てしまった。


「待て~~っっ!!呪い殺してやる~!」


 しつこく追ってくる女王達。何処か隠れる場所は無いものかとキョロキョロすると大木に大穴が空いているのを見つけた。


「真っ暗でおっかないですけど、ここしかないのですっ!エイッッ!」


 思い切って飛び込んだものの、いつまでたっても落ちたまま。


「ふええぇっ・・・このままずっと落ちてたらそのうち空が飛べる様になっちゃうんじゃないかしら?お耳でパタパタ・・・。そしたらみんなのトコに帰れるかな?

・・・うえぇん・・・姉御ぉ・・・ケンチさまぁ・・・」


 「・・・コロン・・・おい!コロン・・・」


「あっ、会いた過ぎて姉御の声が聞こえて来ちゃいました・・・ふええぇっん・・・あねご~~」


「コラ!!起きろコロン(▼皿▼)」


 ゴチン☆頭を小突かれて目が覚めると、そこはいつもの畑の木の根元。


「はれ?はれれれ??・・・わ!あねごぉ~~~!会いたかったですぅっ!怖かったですぅっ!もう、もう会えないかとおもいましたぁ~~!」


 ミーシャの胸に飛びつくと、コロンは思いっきり泣いた。


「そこの大穴からヘンなトコ行っちゃってイロイロあってもうここから出られないんじゃないかしらって・・・ウワァァン」


ゴチン☆再び軽いゲンコツをもらうとコロンは不思議そうな顔でミーシャを見上げた。


「・・・痛いですぅぅ。ヒドいですぅ。ぐすん」

「うろだけにウロボロスって馬鹿コロン!中々帰って来ないから心配しただろーがp(`Д´)qまったく、何の夢見てたんだか知らないけれど、畑で居眠りしてるなんて・・・!でも無事で良かった!あんな事があったばかりだから何かあったんじゃないかって・・・もう!走ったら疲れた~(´Д`)」


「ごめんなさい、あねごぉ・・・」


「まあ、私も色々ゴメンね( ̄ω ̄;)

・・・さ!早く帰って一緒にご飯作ろっか!ケンチも心配してるしさ(。・ω・。)」


「はあいっ!あっ!姉御の大好きな栗さんいっぱい拾ったんですよぉ!ぷっくりほっくりですぅ!!」


 ・・・こうして大好きなみんなの元に帰って来られましたけど、あれはやっぱり夢だったのかしら・・・?それとも?





 


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