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小説家になろうラジオ大賞6

久遠院さんのカレンダーは、ちょっと変

作者: 夜狩仁志

なろうラジオ大賞6 参加作品。

テーマは「カレンダー」

 今日は祝日で大学も休みだったため、朝から寝ていた俺。

 しかし朝、突然電話が鳴る。

 相手は彼女の久遠院(くおんいん)さんからだ。


「はい、もしもし」


「いまどちらですか?」

「え? 家だけど?」


「もう()の刻ですが?」

「み?……10時?」


「明治節に逢瀬(おうせ)を楽しみましょうと約束しましたよね?」

「……明治節?」


霜月(しもつき)の三日、いわゆる文化の日です。今日です」

「あー ごめん。今 行きます!」


 大学のゼミで知り合った久遠院さん。

 とてもお(しと)やかで奥ゆかしい美人で、一緒に講義を受ける間に親しくなり付き合うように。

 とても聡明な彼女は、実家が神社で先祖は陰陽師とか、由緒正しいどうのこうのとか……


 そんな彼女のこと、俺は大好きだ。

 出会えて幸せだと思ってる。


 しかし厄介なことに……

 彼女のカレンダーというか、暦の感覚が独特なのであった。


立秋(りっしゅう)ですが、残暑が続きますね」


 とか?


霜降(そうこう)を迎えると涼しくなりますね」


 とか?


 旧暦を使ってくるから、予定とか約束が上手く伝わらないのだった。


 この前も旅行の予定を立てる時に……


「今度、出雲に参りませんか?」

「あーいいね」


霜月(しもつき)廿二(じゅうに)日はどうでしょうか?」

「しも……11月?」


「旧暦の神無月(かんなづき)の十日です」

「かんな……?」


「でもその月は出雲のみ神在月(かみありづき)です」

 ?


「方位も坤宮(こんきゅう)で」

 ??


先勝(せんしょう)なので午前中に出発し……」

 ???


 こんな具合だ。


 以前、普通のカレンダー通りにしない?

 と提案したら……


「なぜ日本の素晴らしい暦を否定するようなことをするのですか!?」


 と、めちゃくちゃ怒られたのだ。


 でもさすがに、このままでは日常生活に支障をきたしてしまう。


 意を決して、ある日俺は久遠院さんに打ち明けた。


「あの〜 久遠院さん」

「はい?」


「俺、久遠院さんのお陰で、日本の暦の美しさに改めて気がつくことができて、感謝してるんだ」

「それは! 私も嬉しいです!」


「そこでなんだけどさー

 久遠院さんも俺たちが普段使ってる太陽暦、使ってみない? もしかしたら、なにか新しい発見があるかもしれないよ」


「なるほど……私も努力してみませんといけませんね」


 というわけで、俺たち二人は2つの暦を使い分けることにした。


 ふー これでようやく普通の生活が送れそうだ。


 ところが……


「今日のクリスマスケーキ、何にします?」

「え? クリスマス? 先月終わったじゃん?」


「今日は旧暦で12月25日ですよ」

「またやるの?」


 あんなに西欧の催事、嫌ってたのに。


 お陰で年間行事のイベントが、

 2倍になりました……




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― 新着の感想 ―
久遠院さんの天然なところが良かったです。 確か島根県ではリアル10月のことを本当に「神在月」と呼ぶらしいですね。 太陽暦を使う→旧暦を使わないとは言っていない というところに言葉のマジックがあって良…
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