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プロローグ
(……ありがとう。連れてきてくれて)
(こちらこそだよ。ここに一緒に来れて良かった)
いささか風化したこぎれいな墓標の上に、小鳥が一羽。
ほわりと柔らかそうな白い羽毛。短い嘴に細い脚は黒。瞳はルビーのように美しい赤色。
その前に屈んだ彼は、その小鳥の小さな額にそっと指を添える。小鳥の思念の声を読み取るために。
(私は、本当に……幸せ者だな)
(はは。未練が増えちゃった?)
(ああ、まったく。今になっても、君との時間が名残惜しくてたまらない)
小鳥の赤い瞳が潤んで光る。
(全部、やり直せたらな)
「…………あっ」
彼は、ふと声を漏らした。そして、首を傾げる小鳥を掬い上げる。
「……もし、よかったらだけど」
そして、彼は小さな小鳥に向かって、あることを告げた。