異世界のような現実世界を生きていくために
昨日までは夏の様相を呈していた街が
今朝にはすっかり冬に衣替えしてた
遠い国に旅行に来たわけじゃないし
ここは異世界なんかでもない
いつもの街のいつもの景色
そこには変わらぬ日常がある
冷たい風から身を守るために
風を通さない服を着る
冷たい言葉から心を守るために
目に見えない殻を着る
多分どんな世界でもおんなじ
死を運んでくる魔物はいないし
身を守るための魔法もないけど
生と死はいつも隣り合わせで
終わりは突然訪れる
数値化された身体能力
レベル分けされた階層構造
強いものが君臨していて
弱者は蹂躙されるだけ
どこにいたってみんなおんなじ
どの世界だってみんなおんなじ
理不尽なのも
不公平さも
そこに人がいる限り
夢なんか見ても仕方ない
それでも人は夢を見る
多分それが誰でも使える
数少ない魔法だから
嫌な相手は倒せないけど
嫌いな世界は忘れられる
遠くに転移は出来ないとしても
遠くに気持ちを飛ばせたりする
今日を越えるたび「勝てた」気になるのは
目に見えなくても成長してるから
死んだら終わりの世界だけれど
負けても時にはやり直せる世界
それはどこまでも優しくて
だけどどこまでも無慈悲な世界
ひとりひとりに世界があって
みんな違う敵と戦ってる
戦い方は人それぞれで
器用に見えたり不器用に思えたり
手を差し伸べられるべき人に
届かぬ手があるのもどこでもおんなじ
理不尽だけど
不公平だけど
それが人の生きる世界だから
過去を振り返っても仕方がない
それでも時には思い出にすがる
多分それが誰でも使える
時を超えられる魔法だから
助けてくれる使い魔は喚べないけど
支えてくれる記憶なら喚べる
時を戻してやり直せないから
未来は自分で作り続けられる
今日を終えた時「勝てなかった」としても
まだ明日を生きていけるなら
死んだら終わりの世界だけれど
負けても時にはやり直せる世界
それはどこまでも優しくて
だけどどこまでも無慈悲な世界
そうしてまた敵と向き合うんだ
ハッピーエンドはまだ見えないけど