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四日目 擬態
著名な方が自死すると、やたらとメディアが騒ぎ立てる。
「悩んでいる様子は無かった」
「相談して欲しかった」
ほとんどの人が同じ事を言うけれど、何にもわかってないのね。
旅立つ時には相談やら悩みやら、そんな所はもう通り越している。
本当に悩み苦しんでいた時は、表面上「いつもと同じ」自分を保ちながら、小さな小さなSOSを出している。
気付かなかっただけ、気付かせようとしなかっただけ。
悩んでいる本人は、積極的に気付いて貰おうとしない方が多いんじゃない?
少なくとも私はそう。
気付かなかった人は、他人の小さな機微になんて気付かないくらい、幸せに人生を歩んでいるのだろう。
「死にたい」って言ったら、諭されるか、聞き流されるか、「言ってる間は死なないだろう」と言われてお終い。
「気を引きたいんだろう」と思われてお終い。
その「死にたい」という言葉が、貴方に伝えられた本当の気持ち、本当の言葉、最後に交わした一言だって、気付いてないだけ。
受け止めて貰えない現実を知った人は、「普通」を貼り付けて最後の時を待っている。