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転生歴女 〜メイドとオタクと歴史の終わり〜  作者: 平沢ヌル
第六章 歴史の終わり
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第4話 公開実験

 そして、公開実験の日だ。

 この日は妙に暗い曇天で、雷雨でも来そうな雰囲気だったが、公開実験がある午後までぎりぎり天候は崩れては来なかった。このまま持ってくれ、そう俺たちは思っていた。

 会場の様子だが、公宮近くの開けた空き地に、長円形に線路がぐるりと敷かれていた。そこから少し離れた場所に、一段高くなった観覧席が設けられ、賓客たちは良い場所から公開実験の様子を観覧できるようになっていた。アリーシャやヴィルヘルミーナ嬢もその辺りにいるだろうが、俺のいる場所からは確認できない。そこからさらに少し離れた柵を隔てて、一般の観客がすし詰めに押しかけていた。付近では屋台が商売していて、すっかりお祭りの様相だったが、俺には関係ない。むしろあまり食欲がなく、用意された昼食と水を無理矢理腹に詰め込んで、俺は自分の出番を待っていた。


「……ボイラーで加熱された蒸気は、機関車下部のシリンダーに送られます。その蒸気が圧縮されることで、ピストンを押し上げ……」

 ウワディスラフはそんな説明をしている。早くしてくれ、俺はそんなことを思わないこともなかった。なぜって、彼の説明は明らかに、聴衆の理解を超えている。でもまあ時間内に終わらせてくれれば、聴衆は何か分からないけどすごい話を聞いたと思って帰ってくれるかもしれない。

 発車開始時間が迫っていた。もう火を入れなければならないし、火が入ったら走り出すまで間がない。俺たちの蒸気機関車はそんなに洗練されていないので、速度の制御は火力によってしかできないし、走り出すのも止まるのも即座にはできない。

 ウワディスラフは、時間を数秒すぎたあたりで説明を終えてくれたようだった。


 ボイラーの水が加熱され、蒸気となって流れ出ていく。

 それはシリンダーに移動し、やがて力となって。

 車輪がゆっくりと回転を始めた。

 落ち着け。落ち着いていれば、上手くいくはずだ。

 俺はそんなことを考えていた。

 蒸気機関車が、やがて走り出す。


 そして。


 巨大な、暗い影が、俺たちの頭上を掠めていった。

 いや、違う。掠めていない。

 巨大な影は、今、俺たちの頭上にあった。


 そこにあったのは、見たこともないほど巨大な構造物。

 それが今、宙に浮いている。

 どうして今まで気が付かなかったのだろうか?

 それは雲を纏って、俺たちの頭上に移動してきていた。

 それが姿を表したのだ。

 今まで夢に現れたことすらなかった、神々しいとも悍ましいとも言えるその物体。

 斜めにした立方体のようなものが、真ん中でぱっくり割れて、その中で何かが光っている。

 そこから、何か、巨大なものが、こちらに向かって伸びてきた。

 腕、の、形をしていた。

 それは、俺が制御している、まさにこの機関車を持ち上げる。


 俺は、空中に放り出された。

 そしてそのまま、地面に激突する。

 それはある意味、運が良かったのかもしれない。

「ヨハン!」

 アリーシャの悲痛な叫びが、俺の耳に届いたような気がする。

 すぐに俺は意識を失ってしまった。


『腕』はその後、掴んだ機関車を地面に叩きつけたらしい。

 蒸気機関車は炎上する。

 そして、原型を留めないほどに焼けてしまった。


 その下には、彼、ウワディスラフがいた。

 ウワディスラフは、炎上する蒸気機関車の下敷きになったのだった。


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