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転生歴女 〜メイドとオタクと歴史の終わり〜  作者: 平沢ヌル
第四章 システム
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第9話 制御室

 ある意味では、予想通りの光景と言えたのかもしれない。

 現代日本の間取りに直すと二十畳ぐらいだろうか。横に長い部屋に、壁一面に広がる巨大なディスプレイ。

 制御パネルのようなものはなくて、その代わりに、タブレットを接続するためのドックがあった。

 私は当然、タブレットを接続する。何が起きるか正確には分からなかったものの、他にできることもなかった。

 ディスプレイが点灯し、文字がそこに表示される。


 システム第三十八監視塔 管理メニュー


 監視機能のコントロール

 他施設情報

 管理者記録の閲覧

 設定


 表示されているのは日本語だった。タブレットの登録言語に合わせているらしい。

 私はまず、『設定』を選択し、言語を切り替える。この世界で私たちが使っているのはインド・ヨーロッパ系の言語で、アルファベットもよく似通っている。言語を切り替えれば、部分的にはリヒャルト様にも理解できるかもしれない。


 それから、『監視機能のコントロール』『他施設情報』を後回しにして『管理者記録の閲覧』を選択した。

 目の前のディスプレイに、長い文章と、それを補足しているらしい図表がいくつか表示される。それは、こんな風に続いていた。


『現代の世界に山積し、人類の存亡を脅かしている政治的、環境的、技術的諸問題は、実のところその歴史に端を発している。それは一見トリビアルな問題の集合体でしかないが、その複雑な集積が不可逆過程を生み出す。それは今後、致命的な状態まで人類を追い込んでいくことは論を俟たない。最新の予測によると、二四〇〇年には地球はほぼ生存不可能な状態となり、スペースコロニー計画はそれを本質的に解決するには至っていない。これら諸問題の根本的解決のためには、問題発生の歴史的過程から紐解く必要がある。問題同士の絡み合いがより単純な段階での介入により、人類の歴史のより健全な発展が可能となる。……』


「何だ、これは」

(何だ、これ)

 リヒャルト様と、私の感想がシンクロする。

 まだ序盤はマシな方だった。ここから先の内容は、正直、何を言っているのか分からない。たとえ言語が理解できたところで、人間には理解できることと、理解できないことがあるようだ。かろうじてスペースコロニーとか、その他のSF的な単語が散りばめられていることは把握できた。

「この文章を、そのまま記録することはできるか。私には正直、何がなんだか分からない」

「……分かりました」

 私は、タブレットにこの管理者記録がダウンロードできないか試してみることにした。

「……次の項目も見てみるか? もう少し、何か分かるかもしれない」


 続いて、『他施設情報』を閲覧する。正直、興味深いことがあるとは思えなかった。『他施設情報』なんて、いかにも魅力のない名前だから。


「……これは、この一帯の地図、か?」

 リヒャルト様はそんな風に呟く。

 普通に考えれば、まあ順当だろう。普通に考えれば。

「そう、なんですか。この、地図が」

 私の声は、少し震えていたかもしれない。

「おそらく。我々が把握している地図とは少しずれがあるが」

「……多分、こちらの地図が正確です。おそらく」

 あまり特徴がある地図とは言えない。海岸線は北の方に追いやられているし、河川の流れや等高線の特徴なんか覚えているわけがない。もし表示されていたら分かりやすかっただろう国境線の表示はない。

 それでも、一つ目に付くものがあったのだ。

 地図の北の端に、特徴的な形の半島。ユトランド半島だ。つまり、ドイツの北端の海岸線と地続きにあって、デンマークがあるあの半島。それと同じ地形がディスプレイの地図上に表示されていた。

 これは、『あの世界』の地図だ。


「ちょっと待って。少し考えさせてください」

 私は頭を抱える。

 つまり、この世界の地図が、あの世界の地図だということだ。同じ舞台の上で、違う演劇が上演されているようなことなのか。それはつまり、何を意味するのか。

 分かるようで分からない。思考が追いついていない。あるいは、脳が理解することを拒絶しているのかもしれない。

 自分の中で疑問が、形にならない。形にしてしまったら、回答は明らかなのかもしれないが。

 ねえ、どういうことだと思う?

 私は、結論を出すことができなかった、この場では。

 

 最後に、『監視機能のコントロール』を選ぶ。

 そのメニューの中には、『監視機能を停止する』というものがあった。それを選択する。だがこの選択で何が起きたのかは、内部にいる私たちには把握できない。

 それ以上のことで、分かることはあまりなかった。仕方ないので、私たちはそこから、外に出ることにしたのだ。出ていく間、それからその外に出ても、災厄には一度も遭遇しなかった。


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