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さんだいのきせき  作者: ちくましゃん
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豆 時計 柱 (前編)

 大学からの帰り道。ぽかぽかと心地よい春の風が、僕の体を優しく撫でていく。こんなにも暖かいと心まで溶けてしまいそうだ。僕は日差しに手をかざした。あぁ、空から何か降ってくるな…。……⁈痛っ!!えっ⁈僕は落ちてきたものを拾った。…豆?しかし、それは空豆よりもいくらか大きく、硬かった。よく僕の頭は割れなかったものだ。僕はもう一度空を見上げた。何か四角いものが降ってくる…。それは近くにあった街路樹の根元に思いっきり突き刺さった。……僕は心の底から安堵した。僕はその封筒のようなものも拾ってみた。中を開けると、金属のようなものでできた薄い板が一枚あり、その板には、「我輩の豆を受け取ってくれて感謝する。その豆は今から二十四時間後に面白いことが起きるから、楽しむとよい。」二つとも捨ててやろうかとも思ったが、明日何が起きるかも多少気になったので、結局持ち帰ることにした。


 家に帰った僕は、バケツに公園から取ってきた土を入れ、そこに豆を植えた。「…ベランダにでも置いておくか。」ドン。殺風景なベランダに、土しか見えなくて面白みのないバケツ。男子大学生なんてそんなもんだろ。少し迷った後、バケツの隣に祖母の形見のまねきねこを置き、満足した僕はシャワーを浴びて寝た。


 次の日の朝、いつもより早く起きた僕は、すぐにバケツを確認した。「なんだよ、なんも変化ないじゃねえか。」僕は頭をかきながら時計に目をやった。その時まであと六時間ほどある。…僕は久しぶりにゲームをすることにした。


 そろそろか。まだバケツには何の変化も見られない。ため息を一つついて、僕は昼食の準備をしようと台所に向かった。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………。ん?僕は慌ててバケツを見に行くと、緑色の柱みたいなものがぐんぐんと伸びていた。ズドンという音とともに、緑の柱は下へ落下していった。成長した豆の重さに耐えきれず、ベランダに穴が開いたのだ。豆は養分を吸うところが無くなったのか、一瞬だけ成長の速度を緩めたが、すぐにアスファルトに根を突き刺し、再び天へと向かってすさまじいスピードで伸びていく。ギギギギギ……と音を鳴らしながら、マンションが傾いていく。やばい、と思った僕は必死に傾いていく床を駆け上がり、ベランダから豆の柱に飛び乗った。僕を乗せて、柱はどんどん上を目指していった。

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