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さんだいのきせき  作者: ちくましゃん
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気軽い 命乞い 蕩尽

 「いっただっきまーす……って、えぇ?!」

そう言って私がソフトクリームを堪能しようとしたとき、急に手元のソフトクリームが消え、世界中にノイズが走った。そして、そのノイズが消えると、私は檻の中に閉じ込められていた……。

「いや何で!!」

私は檻をがしがし叩く。

「うるせぇ!!」

「ごめんなさいっ!!」

急に目の前に大男が現れ、私をにらんだ。その大男は麻のような生地で出来たぼろぼろの服を身に纏っており、その手には大刀が握られていた。

(こんな格好、ラノベでしか見たことない……。) 

私は檻の端っこで小さく丸まりながら考える。

(ちょっと前まで私はソフトクリーム屋さんの前にいたのに、気付いたらこんな薄暗い場所にいた。瞬間移動みたい。それに、あの格好……もしかして、異世界?!)

「おい、出ろ。」

例の大男に連れられて歩いていくと、豪華な装飾をされた部屋に通された。

「ようこそ、異世界へ。そしておめでとう、今日から君は私の奴隷だ。」

 それからの日々は、地獄だった。日中はひたすら肉体労働をさせられ、夜はこの世界で生きるための最低限の知識を詰め込まれた。時々、雇い主様に奉仕もした。何度か自殺してやろうかとも考えたがさすが異世界、自分では死ねない呪いがかけられていた。ちなみに、私の後に召喚された異世界人は今雇い主様の側近になっているらしい。なんでも彼は聖剣に選ばれたのだとか。不平等だ。もちろんそんなこと言えるはずもないので私は毎日歯を食いしばりながら大っ嫌いな雇い主様のために働く生活を続けていた。

「君、異世界人だよね?」

そんな地獄は突然終わりを告げた。狐の仮面をつけた彼は持っていた剣で鎖と呪いの二つを断ち切った。

「……あなた様は?」

「そんなかしこまらないでよ。僕も君と同じ異世界人だよ。偶然剣に選ばれて奴隷を免れただけの。」

「……聖剣士様、ですか。」

「そんな呼び名らしいよね。」

「どうして私を助けてくださったんですか?そんなことしなければあなたの生活は保障されていたのに。」

「仕事内容が違っただけで別に君と大差なかったさ。それより、早く逃げるぞ。」

そういって彼は私を連れだした。

 「やつらはどこだ!もっと探せ!そんなに遠くには行ってないはずだ!」

 衛兵たちがそんなことを言っていたころ、私たちは地獄から大分遠い場所にいた。聖剣士は聖剣に選ばれてるだけあって肉体の強化が著しいようだった。少しずるい。

「聖剣士さん、足速いんですね…それに力持ちですし…。」

「まだこの距離じゃだめだ。もっと遠くに行くよ。とりあえずあの山を今日中に越える。話はそれからにして。」

「あの山って…え、もしかしてあのぎりぎり見えるあれ?!」

「そ、スピード上げるよ。」

「え、ちょっちょっと?!わああああああああああああ!!!!!!」

スピードが上がっていくにつれて、私はだんだんと意識が落ちていった…。

 「ここまで来れば、平気かな。」

そう言って、聖剣士は私をおろし、自分も切り株に腰かけた。そして、胸元から丸められた紙を取り出して開く。

『希望の泉、それは何かを贄にして願いをかなえる泉。願いをかなえるためには泉の前で三回のお辞儀をしてから腰まで泉に浸かること。そうすれば泉の精が現れあなたの願いを叶えるだろう。』

「場所は…ここから一週間か。長い旅になりそうだ。」

そう言って、聖剣士は紙を丸め、再び胸元にしまった。

(あの方は何をかなえたいのだろう。)

様子を盗み見していた私は剣士が目を閉じたのを確認してから再び眠りに落ちた。

 それからしばらくして、私は走っている聖剣士さんに背負われていた。

「…聖剣士さん。」

「その呼び名はあまり好きじゃないんだ。元の世界の名前、剣心って呼んで。」

「えっ…剣心なの??」

私はその名前に聞き覚えがあった。いや、それどころじゃない、彼は私が好きな人だった。

「なんで…なんでこの世界にあなたがいるの?!そもそもなんで仮面着けてるのよ!」

「仕方ないだろ!この仮面はおれの気配を消すために必要なの!てかお前も気づけよ!気付かれないのちょっと悲しかったんだぞ!」

「それは…ごめん。」

私が謝ると剣心は少し気まずくなったのか、「まあ、別にいいけどさ。」とつぶやいてそのまま無言で走るペースを上げた。私はさっきまでより少しだけ強く彼のことを抱きしめた。

 一週間後の朝、剣心が少し回り道したからか、それとも足が速すぎたからか、私たちは追手に見つかることなく泉までついていた。周囲を軽く見まわした後、剣心は私を近くの木陰におろし、彼の仮面を私に着けさせた。彼の顔は元の世界と変わらず凛々しくて、少し童顔だった。

「いいか、これから何が起きてもすべてが終わるまで絶対にここから動くなよ。」

そう念を押した彼はゆっくりと剣を抜き、泉へと一歩足を踏み出した。その瞬間、嵐のように矢が降り注ぎ、彼を襲った。彼は剣を振り回してそのほとんどを打ち落とすが、落としきれなかった矢が彼の体を貫き、血飛沫をあげる。剣心は顔をゆがめながらも足を踏み出そうとして、そのまま前に倒れる。

「くっ…毒か…。」

周りの木々からいろんな光が生み出され、剣心へと襲い掛かる。

「絶対に、お前を元の世界へ返すんだ…!!」

剣心は泉へと手をのばし、そして…。私は、身動きはおろか声を出すことも出来ず、ただ彼の体だったものが燃えるのを眺めることしかできなかった。

 夕方近くになって、私がのろのろと立ち上がると、一枚の紙が足元に落ちた。

「…希望の泉。」

題材が気になった私はその紙を拾い上げ、動かない頭を懸命に動かしながら読んだ。そして、泉の方を見つめた。一歩一歩と足を引きずるようにしてほとりまで歩き、三度お辞儀をした。

「お願いします…剣心を…私の大切な人を生き返らせてください…私はどうなってもいいから…お願いします…。」

私のお腹の辺りまで水が浸かったとき、仮面の紐が切れ、落ちた。その瞬間、矢が私の頭を貫通した。私の体が端から砂となって泉に溶けていく。剣心は私のことをどう思っているだろうか。なんだか、その答えはもう聞いてる気がした。

「さよなら…」

こうして、私は…。

 「あーもう、何落としてるのよ!」

「えっ…」

私は自分の手を見る。それから体中をひとしきり触る。

(良かった…。あれ、なんでそんなこと思うんだろ。あれ、なんで体の一部分が無くなったように感じるんだろう…。)

「え、なんで泣いてるの…?どうかした?」

「なんか…今すごい辛くて幸せな時間を過ごせた気がするんだけど…。」

「なにそれ、Mに目覚めたの?」

「そういうことじゃなくて…いや、なんでもない。はやく、アイス買いに行こっ!落としちゃったし!」

「そんなに食べたら太っちゃうよ~」

「好きな人いないから気にしないっ!」

(あれ、なんで今胸が痛くなったんだろ。…アイス食べ過ぎたかな。)

「…やっぱアイスいいや。ちょっと食べ過ぎたみたい。」

「そう…ほんとに大丈夫?顔色悪いよ?」

「大丈夫…。ちょっと今日はもう帰ろっかな。」

「帰ったら休むんだぞ~。」

「うん…ありがとう…生きててくれて。」

「大げさだな~私も君の可愛い顔を毎日拝めて幸せだよ~」

そういって彼女は私に抱きついた。そのまましばらくじゃれあったあと、私たちは別れた。なぜか久しぶりの感じがする青空はとてもきれいだった。

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