第二話 ㈱アシタノヒューマン 4
三ヶ島吾郎が開発中のAIの話です。
ここでやっと、ほしのゆめみAIが登場します。
*最後に、自作の挿絵を試験的に入れてみました。ちょっと大きすぎたw
「もしもーし、聞こえますか~。」
千鳥ゆうなは、二つのディスプレイに写る自分がデザインしたアンドロイドの顔を見ながら、マイクに向けて喋った。
「大丈夫だよ。聞こえてるはずさ。」
ゆうなの横に立つ三ケ島吾郎が、すぐさま突っ込みを入れた。
「あら、わかんないじゃない。最初のコミニケーションは大事よ。」
ゆうながそう言うと、
《はい。聞こえております。》
《はい。聞こえております。》
と、二体のアンドロイドが同時に返答した。
「あ、こりゃいかんな。同じプログラムだから、反応も一緒なんだ。違う経験学習をさせれば、違ってくるのかな。」
吾郎があごに手を当てて、考え込んでいる。
「ねぇ、名前を付けてみたらどうかしら。」
「仮の名前であれば、問題ないか・・・。どんな名前がいいかな?」
「そうねぇ・・・、一号機は静岡にちなんで、静香さん。二号機は、浜松市にちなんで・・・、」
すかさず吾郎が切り返して、
「浜子ちゃん?」
と言うや否や、二人は爆笑した。
「やだ、吾郎さんて、センスないわねぇ。」
「君が浜松なんて言うからだぞ。」
二人とも、目に涙を浮かべて笑いながら言い合った。
「あと、浜松と言えば、菊、お茶、ガーベラ、ハモ、スッポン・・・。」
「名前にするには、どうにもパッとしないわねぇ・・・。」
「宇宙船の添乗員なんだから、そこから考えてみたら?」
「そうですよね。素直に考えた方が良さそうです。」
「そうは言っても、舟とかじゃおかしいしなぁ・・・。」
「紫色だから、あやめちゃんにしときます!」
「これまた、随分端折ったなぁ・・・、しかも、宇宙と全然関係ないし・・・。まあ、そんな感じもするし、藤子ちゃんとか、藤美ちゃんもおかしいもんなぁ・・・。」
と、言いつつ、マイクに向かう吾郎。
「これから、君たちに名前を付ける。試験用の名前だから仮登録とするように。いいかな?」
《はい、承知しました。》
《はい、承知しました。》
「じゃあ、ゆうなさんから発表してください。」
「はい。では、発表します。まずは、CAPEL I号機は、静香です。」
《確認いたします。〝しずか〟が私の仮登録名前でよろしいでしょうか。》
と、モニターのCAPEL I号機がスピーカー越しに聞いてきた。
「そうよ、し・ず・か・・・、よ。静岡県の静と、匂いの、かおる、で、静香ね。」
《承知しました。ただいまから本機の名前を〝静香〟と登録いたします。三ケ島主任、ご承認願えますか?》
「ああ、そうか・・・、僕が責任者だから、そうなるのか・・・。いいよ、承認しよう。」
《承認を確認。ただいまから、静香とお呼びください。》
ちょっと大人びた女性の声が聞こえた。
「じゃぁあ、次はCAPELⅡ号機ね。」
《はい。よろしくお願いします。》
「あなたは、“あやめ”さんよ。」
《はい。受理したいのですが、一つ質問させていただいてもよろしいでしょうか。》
モニターに映るCAPELⅡは、笑顔のまま喋っている。
「なあに?」
《〝あやめ〟というのは、「人を殺める」の、“あやめ”でしょうか。もしそのような理由でしたら、お客様に喜んでいただけるようにプログラムされている私の名前には、ふさわしくないかと存じます。わたくしには、日本の花である〝アヤメ〟のほうがふさわしいかと存じます。また、第三の候補として、“綾女”も考えられます。差支えなければ、ご回答をお聞かせ願えないでしょうか。》
ゆうなは、あっけにとられたような表情をしたあと、ちょっと眉をひそめて、吾郎にひそひそと耳打ちした。
「ちょっと吾郎さん・・・、この子、ちょっとおかしくない?なんだか喋り方も変だし・・・。大丈夫なの?」
「あれ?おかしいなぁ・・・。一号機も二号機も同時開発しているんだから、会話に差異が生じるようなことはないはずなんだけど・・・。変なドラマとかニュースとか取り込んじゃったのかなぁ・・・。」
吾郎は、プログラムが表示された数台のモニターをチェックしながら、うーん、と唸った。
《ゆうな様。もし、わたくしに選択権があるようでしたら、“アヤメ”としたいのですが、いかがでしょうか。》
「ちょ、ちょっと待って・・・。うん・・・、いいわ。ひらがなで〝あ・や・め〟よ。」
CAPELⅡから突然質問されたので、ゆうなは戸惑ったが、そう返事をした。
《承知しました。ただいまから本機の名前を〝あやめ〟と登録します。三ケ島主任、ご承認いただけますでしょうか。》
「承認します。」
《三ケ島主任の承認を確認いたしました。ただいまから、本機を、〝あやめ〟とお呼びになってください。》
「うーーん、やっぱり喋り方がちょっとずれているんだよなぁ・・・。顧客に変に思われなかったらいいんだけど・・・。」
と、心配する吾郎。
「大丈夫、あやめちゃんは、私がしっかり教育してみせるから。なんだか、私に子供ができたみたいなんだもの。」
ゆうなは、このちょっとおかしなCAPELⅡに親近感を持ったようである。
「おいおい、2体とも僕が手を加えたAIだぞ。しかも一号機はどうするんだ?」
「いいじゃない、吾郎さんとの共同作業なんだし。静香さんは、しっかりしている私の姉みたいで、怒られている感じがするのよねぇ。」
と、ゆうなは気楽なものである。
「2体とも、きちんと教育してくれよな。」
「はい、はい、お任せください。ご主人さま。」
「ちょ、ちょっと君、もうAIがデータを取り始めてるんだから、変なこと吹き込むなよ。」
「それは、吾郎さんの心がけしだいね。」
そんな二人のやりとりを、2体のアドロイドが覗き込むように、じっと聞いていた。
↓ 静香のイメージです。
小説を書くという行為は、孤独な作業だと思い知らされる今日この頃。
一人で想像し、一人で思考を巡らせる、なかなかに苦悩の連続です。
もう一度全体像を確認して、次話につなげます。