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planetarian 前日譚 第五夜 ほしのとゆめみ 前編  作者: オーガスフロンティア
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第十三話 ㈱アシタノヒューマン 10 別れと始まりと(5)

ゆうなが酷い目に合って、そのまま放置した格好になってしまったので、後から挿入しました。

ゆうなと吾郎の仲が良いことが分かり、絆が少し強くなるようなエピソードでもあります。


 なんとか星野が場をとりなしたが、かと言って、皆の気分が晴れるわけでもなかった。

 特に千鳥ゆうなの場合は深刻である。

 星野達が帰った後も、西田女史から浴びせられた罵声から、立ち直ることができなかった。

 気を利かせた女性社員が、ゆうながよく飲んでいるホットミルクティーを持ってきて、椅子に座らせた。

 周りのスタッフ達は自分もショックを受けていたが、ゆうなの落ち込み様に、あまりにも気の毒に思い、言葉を上げることもできなかった。

 責任者である杉本も、慰める言葉を考えてみたが、どうやっても思いつかず、へたな言葉をかけることはできないと思った。

 二体のアンドロイドを前に、椅子に座り込んだまま、うなだれているゆうな。

 吾郎も心配でゆうなを見つめていたが、あやめがゆうなの前に立って、ぎこちなく腰を落とし、膝を立てた。

 《千鳥様、お加減が良くないのでしょうか。社内の安全保安部に連絡を取って、救急を依頼することもできます。》

 と、聞いてきた。

 ゆうなはコップを両手でつかんだまま、黙って首を振った。

 すると、あやめは、

 《おそれながら、私の分析によりますと、千鳥様の反応や姿勢から、千鳥様の体調に異変があると警告が発せられています。》

 と、反応した。

 吾郎は、

「あぁ・・・、身体的に異常はないんだ。いや、あるのかな。でも、救急を呼んでも改善する症状ではないんだ。」

 と、言った後、ゆうなの前で言うのは憚られたが、

「精神的なことなんだ。」

 と、付け加えた。

 《左様でございますか。人間の方々は、精神的なダメージを受けると身体にも影響があります。つまり、精神ダメージを取り除く必要があります。私たちに何かお手伝いできることがあれば良いのですが。・・・なにしろ、皆様のお役に立てることが私たちロボットの使命ですので。》

 と、言った。

 すると、今度は静香が、

 《ところで、三ヶ島主任。花菱商事の方々はお帰りになりましたが、テストは終了したのでしょうか。》

 と、聞いてきた。

「あぁ・・・、そうだね。今日のところはこれで終了だ。明日からまた、テストの続きをすることにしよう。」

 《了解しました。本日のテストの結果を教えていただくことは出来るでしょうか。》

「今日は・・・今日は中止になったから・・・結果は〝中止〟だね。」

 返す吾郎。

 《中止になった理由をお聞かせ願えないでしょうか。学習して、今後の対応を分析します。》

 と、静香が、ちょっと返答に困ることを聞いてきた。

 吾郎は腕を組んで、うーんどうかなぁ。と考えていたが、答えに窮して立っているのもしんどくなり、近くにあった椅子を引き寄せてその場に座った。

「君たちも椅子に座って聞いてくれないか。立ったままじゃ落ち着かないから。」

 と、吾郎が言うと、静香とゆうなが《承知しました。》と言って椅子を押してきて、吾郎とゆうなの前に座った。

 杉本開発部長、開発スタッフ、社員たちは、ここは二人と二体にさせたほうが良いと思い、少しずつ開発室を出て行った。

 二人と二体はしばらく黙っていたが、

 《千鳥様、今のご様子だと、精神ダメージを取り除かれていないと推察します。お体に影響は出ていないでしょうか。》

 と、聞いてきた。

 ゆうな、やっと顔を上げて、

「うん、少し良くなったかな。」

 と、弱弱しく返事をした。目に涙を浮かべている。

 《千鳥様の目に涙を確認いたしました。人間は、主に〝悲しい〟という感情を発生させた時、また〝嬉しい〟〝おかしい〟などの大きな感情が発生した瞬間に、涙を分泌させ、精神に掛かったダメージを和らげようとします。つまり、千鳥様は、そのうちのどれかに該当する大きな感情によって、精神的ダメージを負ったことになります。しかし大変申し訳ありませんが、千鳥様。 私たちロボットは、感情を理解することができないため、千鳥様のお役に立てそうもありません。》

 と、あやめが言った。

「もう、あやめちゃんて・・・、ずけずけと、なんでも言うわね。そう・・・、ちょっと悲しかったの。」

 と、ゆうなが少し気を取り戻して声を発した。

 《現在の状況から察しますと、本日のテストが中止になったことと関連があるのでしょうか。》

 と、冷静に静香が聞いてきた。

「まあ、そんな感じかな。」

 と、吾郎。

 《つまり、私たちのテストが中止になったため、千鳥様に精神的ダメージを負わせたのでしょうか。》

 と、静香。

「そうだなぁ・・・。」

 と、吾郎が言いかけたとき、ゆうなは、

「ううん、テストされたのは、私達、人間のほうだったみたい。結果は不合格だったけどね。」

 と、涙を浮かべながら、微笑んでみせた。

 《それは、残念です。次回のテストで合格しましょう。私達もご協力を惜しみません。是非、協力させてください。》

 と、静香か答えた。

「そうね、明日から、また頑張りましょう。」

 と、ゆうなが言うと、静香は満足げに、ゆうなは穏やかに笑顔を作った。

 

なんだか立場が逆転してしまって、これでいいのかなぁ・・・と思う吾郎であった。



 ちなみに、西田女史は、帰りのタクシーの中で、「そんなことで、お客様に接客できるのか。」と、松永からお説教を受けていた。


planetarian 本編 ちいさなほしのゆめ に出てくる、「悲しいと、涙」のエピソードをちょっと引っかけてみました。


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