77話
学校の構想をぶち上げた。いや、口を滑らせた・・・。
ふわっとした考えは有ったんだが、全然固まっていない。シュークリームくらいふわっとしている状態だ。
キラキラした瞳で俺を見る皆。
こ、これは、さも、以前から考えていた風を装いつつ話を盛っておこうかな?
「サタンとパトラなら分かると思うんだが、義務教育を始めようと思う」
「どのくらいでまとめるの?」
「・・・半年。半年で運営を始める。建物と教育者。何より教育内容を選定しなきゃな」
「国の土台作りになるであろうぞ。ノースティン王国から帰ってからゆるりと相談すべきでは無かろうか?」
「もちろんだ。サタンにも手伝ってもらうからそのつもりでな」
あぁ、どうしよ?大事になってしまった・・・。
フレイの相手が面倒だからって適当な事を考え無しに言い放ってしまった俺のせいなのは分かっている。
しかし!もう後戻りはできない。
サタンのお陰で一度話は置いておく事になった!グッジョブサタン!ついでに学校の件は丸投げ出来ないかな?
「流石ねジーク。次から次へとイベントを起こし続けるなんて」
「すまん。正直言うと予定外だ。ノースティン王国の貴族粛清と住民の移住で手一杯だよ」
「それはそうでしょ、移住の集合住宅なんて良く思い付いたわね」
「あぁ、『寄り添い』の辺りのスラム街を見て思い付いたんだ。細かい建物を密集させるよりは頑丈な建物に幾つもの部屋を用意した方が安全で協力しやすいだろうと思ってな」
「ジークは一度ヤマタイ国に戻るとして、私達が準備しておくことはあるかしら?」
「パトラとニーナには貴族と王族の選定。更に移住希望者を堂々と募集して欲しい。ミーシャとアーシャとサタンは服と食糧の確保だ。アーシャはゴルドと合流して、店を丸ごと亜空間で持って行くのも有りだな」
「貴族や王族で勧誘するのはマズいかしら?」
「人柄によるな。時間の制限があるから勧誘は後回しだ。まずは殺さない、程度に留めておこうか」
「了解よ」
「承知!」
「サタンは基本的にアーシャの護衛として動いてもらうが、魔力の強い者がいたら金獅子になってスカウトしてくれ」
「金獅子に?」
「あぁ、おそらく上手く行きやすくなるだろう」
「そうかそうか!我の気高き姿にて威光を示すのだな?」
「そうだ。今回は威圧も許可する。やり過ぎるなよ?」
「主殿。我を誰だと思っておる?全て任せよ!」
胸を張る猫。若返ったせいか、毛並みがフワフワでとても可愛い。
「ウチはジークさんの護衛が良いッス!」
「俺の?」
「そうね、私も賛成よ。ジークはこれから、王国に狙われると思うわ。王国がズタボロになったらヤマタイ国に戦争を仕掛ける所じゃ無くなるわ。それでも魔王にちょっかいを掛けるとしたら暗殺しか無いと思うの。護衛は必要よ」
「王国がズタボロに、って時に喧嘩売るかな?」
「ジーク様!あのアホどもはやりますよ!なにせアホどもですから!」
「・・・分かったよ。なら、ミーシャは俺と一緒に動いてくれ」
「了解ッス!」
「変な事するんじゃ無いわよ!?」
「りょ、了解ッス!」
パトラが金の瞳で威圧する。ミーシャは後退りながらパトラか距離を置く。さては、悪さをしようと思っていたな?
皆がこれからすべき事を確認して、俺とミーシャは先にヤマタイ国へと出立する。今度はゴルドが居ないので、遠慮無く走り抜ける。
「ミーシャが加速の魔法を使ったら、もっと速く走れるのか?」
「これ以上は危ないッスよ!物凄い勢いで木がぶつかって来るッス!」
「これ以上?もしかして今も使ってるのか?」
「そうッス。ジークさんやパトラさんの速さに『素』でついて行けるワケが無いッス!」
「そ、そうなのか?もう少しゆっくり行こうか?」
「大丈夫ッスよ、今くらいならついて行けるッス」
「分かった」
軽くジョギングくらいの感じだったんだが、ミーシャには少し負担が掛かっていたようだ。身体能力が高くなったはいいが加減が分からんのよ。逆に加速魔法は弱点が見えてしまった様だ。どうやら反射神経は加速出来無いらしい。
3時間程でヤマタイ国に着いてしまった。ここは元獣人の村。今では奴隷にされていた獣人達を一時預かりする農耕地帯となっている。
俺の命令で元兵士達が恐ろしい勢いで森を切り開いている。
「ジーク様!」
「おう、コロマル!作業は順調か?」
「はい!夜の内には伐採が終わりそうですね」
「分かった。夜通しの作業になるが、皆でヨロシクな」
「それなんですが、ジーク様の信者達が少し怖いんです」
「どうした!?」
「仕事が辛ければ辛い程、ジーク様が喜んでくれると信者達が狂喜して、我先にと頑張ってくれているんですが・・・」
「ふんふん」
「どうしても作業の速さや丁寧さに優劣が付いてしまうので、ある種の競争みたいになってるんです」
「そうか・・・分かった。ではもう一つ、皆に伝えてくれ。作業の早い者、丁寧な者、更に皆のサポートを上手に出来た者にも恩恵を与える。ってな」
「・・・なるほど!苦手な分野より得意な分野で頑張って欲しいって事ですね!」
「その通り!ご飯の支度や切った木材を運ぶ係、枝を落とす係や役割分担の上手な者。何だっていいんだ。己の能力を発揮出来た者に発毛の魔法を掛ける。って伝えてくれ」
「はい!」
マイクロバス並みに大きい白銀狼が遠吠えをする!ついつい俺も吠えそうになるほどの迫力だ!
皆が一度手を止めてコロマルを見やる。
「皆の者!魔王様よりのお告げだ!清聴せよ!これよりの作業だが、伐採、枝落とし、運搬、サポート、作業の指示、全てに置いて際立つ働きの者、それぞれに慈悲を賜る事を約束して頂けた!各自、己が得意とする能力を発揮せよ!」
「「「おぉぉぉぉ!!!」」」
「では作業に戻れ!」
「「「はは!」」」
「何かバートンみたいに芝居掛かってたな」
「これが一番しっくり来るみたいですよ?」
「コロマル、カッコいいッスよ!」
「ミ、ミーシャさんに褒められました!」
「コロマルはいい娘ッス!」
「ボクも、もっと頑張りますね!」
「無理すんなよ?」
「大丈夫ですよ!山の魔物狩りなんて暇潰し程度のお手伝いですから!」
「そ、そうか・・・」
コロマルが急発進して伐採地域の最前線を駆け抜けて行く。あんな巨体で魔物の駆除をしてくれているなら、安心して作業に集中出来るってもんだな。
作業を見守っているとダイクンとサイクンが不貞腐れながらやって来た。俺の家を作っていたのに無理矢理呼び出されたからしょうが無い・・・。
「物凄く不満そうだな?」
「「当然だよ!」」
「すまんな」
「何でもっと早く教えてくれないの!?」
「は?」
「集合住宅の構想だよ!」
「2千人以上が住める家なんてどういう家なの!?」
「そっち?」
「早く教えてよ!」
「今すぐ教えてよ!」
「分かったから落ち着け!・・・いいか?伐採が終わったら、俺の穴掘り魔法で土地を押し拡げる」
「うんうん」
「構想は5階建て。一部屋辺りをとんでもなく広く取るんだ。大変なのは屋上と階段作り。屋上からは常に水が流れるようにする」
「オリハルコンの魔道具だね?」
「他にも・・・」
排水はスライムプールを通して湖に流す事。部屋の大きさと数、階段の数。部屋の間取りや諸々を相談した。
「・・・凄い豪華な宿屋のイメージかな?」
「豪華かどうか知らんが、俺が王都で使っていた宿屋よりは使い勝手を良くしたい」
「一部屋辺りがそこまで大きいと建物の大きさが途方も無く大きくなるね」
「建物自体も2つ作るぞ。今伝えたのは家族用だ。もう一つは2人まで住める程度の部屋で、一部屋当たりの広さより部屋の数を優先して作る」
「・・・やってみるよ!」
「燃えて来たね兄ちゃん!」
「基礎の部分はミスリルにするし、階段や外壁も硬質化するから強度はそこまで追わなくても大丈夫だ」
「助かるよ、ってか期待してた。そうじゃないと石の加工が間に合わないからね」
「じゃ早速、設計を頼む」
「「任せてよ!」」
次はバートンだな。
「バートンはどこだろ?」
「はっ!こちらに!」
うおっ!ビックリしたよ!木材の影から急に出てくるんだもん。忍者か!
「お呼びですか?」
「ハチに会った」
「おぉ!奴は元気でしたか?」
「ああ。勧誘には失敗したが、情報はくれるみたいだな」
「ふふっ、ハチらしい。ジーク様の勧誘を断るとは」
「バートン。感付いてるとは思うが、これから王都は大変な事になる・・・いや、する」
「やはり・・・団長、いやニーナさんがキレましたね?」
「正解!俺も止める気は無いしな」
「王都が魔物に襲われたのは聞いています」
「流石だな」
「兵士では無く、恐ろしい程腕が立つ傭兵達が殲滅させたとも・・・ジーク様でしょう?」
「暇潰しだよ。それより、その一件でニーナが貴族の粛清を始める決意を固めてしまってな。バートンは貴族、王族の見極めの手伝いをして欲しい。性根の腐っている奴は消し去る予定だが、善良な為政者は保護したいんだ」
「かしこまりました!十名・・・いや二十名ほどをお借りしますがよろしいでしょうか?」
「任せる。取り込むのは後回しだ。今は見逃すだけでいい。ニーナが言う事を聞かない時にはパトラに言え」
「かしこまりました!」
さて、指示は一通り出したから一休みしようかな?
「ジークさん!」
そうは問屋が卸さなかった。
「おお、スティーブ」
「やっぱりジークさんはイベントが大好きですね!」
「いや、そういうワケじゃ・・・」
「あのノースティン王国の王都に出掛けて、ただ見てくるだけなはずが無いと思ってましたよ!」
「・・・」
「てっきり王女でも攫って来るかと思ってました!」
「・・・」
「それが、まさかの王族皆殺しとは・・・」
「待て!いや・・・待て!」
「どうしました?」
「こっちのセリフだ!王族皆殺しって一体何の事なんだ?」
「ジークさんが人間の王族にいちゃもんを付けられて腹が立ったから皆殺しにするんですよね?皆が分かってますよ!」
「分かって無い!全然分かって無い!俺は楽しく過ごしてたぞ?むしろバートンの元上司がキレたんだ!」
「・・・もしやキレイな女性?」
「女性だな。仲間になってレアな魔物を食べて若返った」
「また信者にしたんですか?」
「い、いや。信者ってワケじゃ・・・」
「全く。ジークさんはポンポンと女性を手籠めに・・・やっぱりゴブリンの習性は侮れませんね」
「色々と誤解が有るんだが・・・」
「流石は魔王!」
「はぁ・・・もう、いいか・・・」
「ノースティン王国は取り潰しですか?」
「それはマズい。ノースティン王国そのものが消滅してしまえば、今のヤマタイ国の容量を超えてしまうから住民が不便を感じてしまう。住み慣れた土地から離れたく無い者も居るだろうから、ノースティン王国自体は存続してもらう予定だ」
「・・・本当に?可愛い王女に情が移った・・・とかじゃ無いですよね?」
「も、勿論だ。知り合ってはいるが、情が移る程じゃないからな・・・いや、アーシャとは仲良くなったみたいだがな」
「どうして観光して数日で王女様と知り合うんですか!?」
「いや、そんな事言われても・・・」
「まぁ、今回は建前を信じますよ」
「本心なんだが?」
「はいはい」
「・・・何故、信用されない?」
どうせ、『ゴブリンだから』って言われるんだけどね!




