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72話

ヨーダと別れた後も観光は続いていた。

今度は魔道具屋さん。もう、楽しくてしょうがない!

とにかく、くだらない道具が溢れていた。


消える魔道具。凄い効果に思えるが、消えるのは魔道具のみで魔力を込めた本人には作用しない。

他には、滑る魔道具や震える魔道具、手にくっついて離れなく魔道具に重くなる魔道具。

それぞれ、とても興味深い効果なハズなのに、どれ1つとして役に立たない!

俺もパトラも一般人よりは魔力が少ないなんて事はあり得ないので、どう考えても魔道具の効果がしょうもないのだろう!

どれもこれも作動後にくだらな過ぎて爆笑を誘う!

滑る魔道具なんて、俺もパトラもゴルドも慌てて拾おうとするが、やたら滑り過ぎて誰も拾えない!皆で笑いながら拾うに拾えない状況に陥る。

3分位で魔道具に込めた魔力が切れるまでゲラゲラ笑いながら滑り落とし続けるというシュールな場面を繰り返した。


俺たちは涙を流しながら笑っていると、店員さんが心配して声を掛けて来た。

「あれ?笑いが止まらなく魔道具なんてあったかな?」

「あっはっは!はっはっは!」

「どうしました?大丈夫ですか?」

「はっは・・・はあはあ、だ、大丈夫です!いやぁ、スッゴい楽しかった!」

「はっは・・・あー、ごめんなさいね。こんなに・・・何て言うか、個性的な魔道具を揃えてるなんて!楽しませてもらってるわ!」

「本当に!?皆はガラクタだって言ってすぐに帰っちゃうんですけど・・・」

「あー、分かるかも・・・」

「ですよね・・・」

「確かに、買おうとは思わないですね」

「いや、でもメッチャ楽しませてもらったよ」

「そうですか?それなら良かったです」

「良かった・・・の?」

「はい!とことんまでくだらない魔道具なんてなかなか無いでしょ?皆で笑える魔道具を作りたかったんですよ!」

「笑える魔道具ね、確かに。久しぶりに大笑いしちゃったわ!」

「・・・少し待ってくれ!」

「どうしたの?ジーク」

「今、魔道具を作るって言った!?」

「はい!私、魔道具職人ですから!」

「「マジで!?」」

「ほほう?これは面白い方に出会いましたね」

「そ、そうですか?」

「俺はジーク、こっちがパトラ。この人がゴルドだ」

「「よろしく!」」

「は、はい!私はオルトと言います!よろしくお願いします!」


オルトと名乗った魔道具職人の店員は、どうやらこの店を道楽で営業していたらしい。どうりでゴルドも知らなかったんだな。

金髪の若者で所作は上品。さぞ、高貴な生まれだろうと想像がつく。

「オルト・・・さん?」

「呼び捨てで結構ですよ、私は貴族から除名された身ですから・・・」

「元貴族なのか?」

「はい、実は最近まで研究所に勤めていたのですが、しばらく前に凄い鉱石を調べる事が出来たのです」

「研究所?・・・凄い鉱石?・・・もしかして、オリハルコン?」

「え!?どうしてそれを!?」

「どうしてもこうしても、ワタクシが研究所にオリハルコンを持ち込んだのですよ?」

「なんと!そうだったんですか!」

「それで、そのオリハルコンがどうしたの?」

「はい、オリハルコンが凄い鉱石だと分かった研究所・・・いや王族は、その伝説の鉱石で武器を作るようにと鍛冶職人を呼びつけていました」

「へえ・・・」


あれ?確かオリハルコンをゴルドの信頼出来る鍛冶師に見せたと・・・。

「まさか、ノブター?」

「ノブターさんも知っているのですか!?」

「知ってるわ。と、言うより私の下僕ね」

「げ、下僕!?」

「そこら辺は置いといて、どうなったんだ?」

「ノブターさんは王族の依頼を断っていました」

「彼は本来、命令されて働くのが嫌なタイプですからね・・・ワタクシも苦労しました・・・」

「今はパトラに命令されると喜ぶけどな」

「ノブターさんは王族の命令を断った。私は王族の命令を断れない・・・この差が気になったのですよ」

「貴族だから・・・か?」

「いえ、信念が有るか無いかです!」

「ワガママなだけだろう?」

「違います!彼はオリハルコンの性能を確かめて最高の武具にしたかった。しかし、国は『最高の武具』では無くて『オリハルコンの武具』を欲しがったのです!ノブターさんは飾りの武具を作る事を断ったのです!」

「・・・あぁ、それは分かるな・・・」

「私は彼のように自分の意志で自分の作りたい物を作ろうと思ったのです!」

「それで、貴族の立場を降りた・・・と?」

「はい!私は魔力を見る魔法が使えます。魔法の式を見る魔法と言えば伝わりますか?」

「凄い!それは凄いわ!!魔術式を理解出来るのかしら!?」

「簡単な物なら理解は出来ます。でも、基本的に丸写しですよ?」

「とんでもない才能よ!?」

「ありがとうございます。時間も掛かりますし、魔法を使える人の協力も必要ですしね」

「魔道具1つでどの位の時間が掛かるの?」

「この店にある魔道具で、1つ10日程でしょうかね?」

「どんな魔法も魔道具に出来るのか?」

「いえいえ、限定的ですよ!例えば、障壁の魔道具は半年ぐらいの日にちが掛かりますので国からの依頼でないと無理ですし、兵団団長の加速の魔法はとても再現しかねますし・・・」

「再現が難しいのか?」


オルトが少し考え込む。

「・・・はい。おそらくこの店の壁位の広さがなければ式を描き切れないでしょうね。そんなに巨大な物に魔力を込めて加速させても無意味ですし」

「・・・なるほどな」

「何より、生活の為の魔道具ならともかく、相手を傷付ける為の魔道具なんて、作っているだけで憂鬱でしょうがないですし」

「それで、笑える魔道具か・・・」

「そういう事です」

「・・・面白いな。パトラ、ゴルド。オルトを勧誘してもいいか?」

「「どうぞ」」

「え?え?勧誘・・・ですか?」

「オルト。生活に便利な魔道具なら作ってくれるのか?」

「まあ、そうですね。それで喜んでくれるなら本望ですし」

「この街に居なきゃいけない理由は有るか?」

「・・・特には無いかなぁ?でも、私、他の街どころか寄り添いとか、ましてや外地すらほとんど行った事が無いですし」

「うーん・・・不安は分かるが、俺の国に来てほしいんだよな」

「ジークさんの国?」

「ヤマタイ国って言うんだが、聞いた事は有るか?」

「ヤマタイ・・・魔王の?・・・俺の国?・・・って事は!?」

「はい正解」


俺はフードと仮面を外して素顔を見せた。


「こ、こんな所に・・・」

「頼むから怯えないでくれ」

「そ、そう言われても・・・魔王様ですし!」

「別に魔物を連れて歩いてるワケじゃないから」

「そ、そうなんですか?」

「個人的には見た目以外は人間と大差無いと思うんだが・・・」

「ジーク様、能力や魔力が人間のそれとは違い過ぎますよ?」

「だ、そうだ。そんな事より!俺の国では、今、毎日が平和で楽しくなる方法を探しているんだ」

「平和で楽しく・・・少し興味が湧きますね」

「差し当たり、食事や温泉なんか皆に好評なんだが、娯楽がまだまだ少ないんだ」

「娯楽ですか・・・」

「そこでだ!是非ともオルトに協力を頼みたいんだが、どうだ?」

「娯楽と言われても・・・私は魔道具作りしか出来ないですし・・・」

「そうね・・・オルト、例えば、紙を作る魔道具とか作れないかしら?」

「紙・・・ですか?・・・紙職人達の仕事を奪ってしまいますし・・・」

「ヤマタイ国には紙職人はいないんだ」

「はぁ、それならば時間を頂ければ・・・」

「後はそうね・・・」


震える魔道具で洗濯機を作れるか?

滑る魔道具を並べてソリを作れるか?

重くなる魔道具と水に浮く素材を使って湖に水上の建物を作れるか?等々。

どんな魔道具が作れるか確認しながら勧誘を続けてみた。徐々にオルトも楽しくなって来たようで、面白そうだとヤマタイ国に来てくれる事になった。


だが、研究職上がりなので体力的にヤマタイ国までの遠出に抵抗があるようだ・・・。

何とかオルトを迎え入れたいんだが・・・。


(ジーク様!)

(おう、コロマルか)

(何か面白そうな物は有りましたか?)

(ああ!メッチャ面白そうな奴を見つけた!オルトって魔道具職人だ!でも、ヤマタイ国まで行く体力がな・・・)

(ボクが迎えに行きましょうか?)

(・・・ビビるだろ)


白銀狼のコロマルのサイズだが、今ではマイクロバスくらい。初見で腰を抜かす可能性がある。ついでにコロマルが王都付近で目撃されれば討伐隊を組まれる可能性すら有る!

(そうですか・・・)

(落ち込むなよ、コロマル)

(では、信者達に何とかしてもらいましょうか?)

(何とかって?)

(荷車を作ってもらってボクが引くとか?)

(・・・それ、有りだな!)

(でしょう!?)

(林から出るなよ?)

(はい!・・・ちょっと待っててくださいね、信者達に聞いてみますから)


(5日くらいあれば大丈夫だそうです。信者達もお手伝いしてくれるみたいです)

(おお!それは良かった!日にちは拘らなくていいから、気を付けてな)

(はい!ありがとうございます!それでは数日、お待ち下さい!)

(それから、オルトはほとんど街から出た事が無いそうだ。助けてくれそうな信者を選んでくれ)

(お任せ下さい!)


「オルト、5日くらいで迎えを出す。護衛と荷車だ。いや、馬車、いや、狼車か?ま、まあ、旅の苦労は極力減らすから、準備をしてくれないか?」

「・・・分かりました。護衛の人には案内もお願い出来ますか?道も分からないですし」

「大丈夫だ。元々は王国の兵士だしな」

「あ、あの頭が可哀相な・・・」

「言わないやってくれ。あいつらも今、必死で髪を増やそうと頑張ってるから」

「髪を増やす?そんな魔道具が?」

「ジーク、あなたの魔法を魔道具に出来ないかしら?」

「やってみるか」


俺はテーブルに発毛の魔法を掛けた。

オルトはテーブルを凝視して・・・ため息。

「駄目か?」

「・・・何度か見て見ないとはっきりとは言えませんが、かなり難しいですね。3つくらいの効果を1度に干渉させています。魔術式同士が重なって見えにくくなってましたし」

「・・・モザイク?・・・俺の魔法はモザイク必須って事なのか・・・」

「ドンマイジーク!」

「残念ですが・・・それより、魔王様のその腕輪なんですが・・・」

「これか?」


俺は穴堀魔術の腕輪を見せた。

「これ・・・オリハルコン!?」

「そうだよ。元々は他のゴブリンから奪っ・・・貰ったヤツだけど」

「オリハルコンの魔道具!」

「凄く便利だよ?穴堀魔術なんだけど」

「穴堀・・・私も昔、国に内緒で穴堀魔術を組み込んだ魔道具を腕輪で作ったんですよ!いや、懐かしいな!」

「・・・その頃、もしかしてノースノートの街に行った?」

「いえ、私はこの街から出た事は無いですし・・・でも、腕輪は流しの商人に売りましたよ」

「流しの商人?行商の事かな?」

「はい。私が作った魔道具は王族が買い取るか、商人達に買い取って貰うかですし」

「もしかしたら、この魔道具もオルトの作ったヤツかもな!」

「いえいえ!オリハルコンで魔道具なんて作った事は無いですし」

「実はこの魔道具は元々、ただの金属だったんだ。ある魔法でオリハルコンへと変質してしまったがな」

「オリハルコンへと変質!そんな事が・・・」

「これは内緒な」

「言えませんよ!そんな事!」

「はっはっは!」

「笑い事では無いんですが・・・」

「でも、この魔道具、良い意味で壊れてるかも知れないんだよな」

「どうかしたのですか?」

「魔力を込めると穴堀を発動するんだが・・・」

「はい」

「魔力次第でいくらでも広く、深く、大きく掘れるんだ」

「はい」

「はいって・・・普通なのか?」

「はい。魔道具は基本的に魔力次第でどこまでも強力になりますし」

「どこまでも?」

「魔道具の素材の耐久力を越えなければ。ですが」

「ふーん・・・オリハルコンなら限界は無いかもな」

「でしょうね!伝説の鉱石ですし」

「いや、ホッとしたよ!前に全力を出したら、湖が出来ちゃって・・・」

「・・・すいません、言ってる意味が分かりません」

「思いっきりデカイ穴を開けたんだ。そこに川から水が流れ込んで湖になっちゃった」

「・・・どうやら、伝説の鉱石を生み出す魔王様は伝説になる程の魔力をお持ちのようですね」

「あれは、失敗しちゃったね。その事件でギルドから魔王と認定されちゃったしね」

「あれは本当だったんだ・・・」

「それからも魔力が増えてるからな・・・今ならどこまでの効果か分からないんだけどな」

「・・・王国の兵士を基準に言わせてもらえば、普通は牛2頭分の穴を開ける前に気を失うでしょうね。私でも3頭分が出来るかどうかですし」

「この魔術は効率が悪いんだな」

「私の魔法ならどうかしら?」

「えーと、パトラさん、でしたっけ?どんな魔法をお持ちなのですか?」

「稲妻ね」

「稲妻・・・稲妻?」

「そうだよ。雷、雨の時に落ちてくる奴な」

「本当に?もしかして、狙った所に落とせたりするのですか?」

「落とすって言うより私から放たれるの」

「雷を?・・・なんてこった・・・」

「何かマズいのか?」

「マズいも何も・・・雷なんて!最強の魔法の1つじゃないですか!!」

「だろうな。あれを喰らったら俺も死んじゃうよ」

「ジークはゴブリンだものね」

「まあ、いつもの稲妻ならギリギリ避けられそうだけど、この間の太陽はヤバかったな!」

「太陽?」

「あー、あれね!思い出しただけで笑えて来るわ!」

「メルトダウン起こし掛けてたもんな!」

「あのままだったなら、今頃はこの大陸が無くなってたわね」

「間に合って良かったな!」

「メルトダウンとは?」

「うーん、簡単に言うと温度が高過ぎて、周りの物を全て溶かして、更に地面すら溶かして大地に周りを巻き込みながら沈んでしまう現象だ。下手をすれば1日で世界が滅ぶ現象だな!」

「・・・」

「オルト?おーい!オルトくーん!」

「・・・はっ!」

「オルト?大丈夫?」

「すいません。脳内で想像してみたら恐ろしい事になってしまいまして・・・」

「おお!凄いな!多分、想像の通りだよ」

「あれは流石に焦ったわね・・・」

「焦ったわねって・・・危うく世界が終焉を迎える所だったのでは!?」

「「うん」」

「オルトさん、良いですか?ヤマタイ国では絶対にパトラ様に逆らってはなりませんよ?」

「はい!!」

「『絶対』ですよ!?」

「はい!!」

「どんな教育だよ・・・」

「私よりジークが国の象徴なんだけどね」

「パトラ様の魔法は見学する事すら危険なので遠慮させて下さい!お願いします!どうか命だけは!」

「・・・」

「返事くらいしてやれよパトラ」

「何と言えば・・・」


うん。何と言っても怯えるだろうな。

分かった。と言っても怯え続けるだろうし。

断る。は論外だし。

仕方ない。と言えば、元々命を狙っていたように聞こえるしな。


「そうね、私とジークに心から仕えるのなら助けてあげるわ」

「はい!粉骨砕身、務めさせて頂きます!!」





せっかくなので下僕にした!


悪魔か!?


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