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71話

ノースティン王国首都観光・・・もとい視察の二日目。予定通り、2チームに分かれて首都を堪能する。

ちなみに、偽名は皆が間違えそうなので貴族や王族、兵士達の前だけにしようと決めた。


俺とパトラとゴルドは首都の内側、貴族やら王族やら金持ちの上流階級の人々が住んでいる界隈にやって来た。通称『内地』だそうだ。ちなみに内地の外側が『外地』。更に外側が『寄り添い』と呼ばれているらしい。一番外側の寄り添いとはスラム街の事なのだが、意外と好意的にとらえているらしい。

物価は内側に行くほど高くなっているようだ。


「なら、内地の真ん中に王様が住んでいるのか?」

「いえ。実はお城は内地と外地の間になっています。正確にはお城の正門が内地。お城の裏門が外地なんです」

「それは・・・便利だな。城なら王族や貴族以外の者も働いているだろうからな」

「はい、この点だけは見るべきところではないでしょうか?」

「この点だけ?他はどうなのかしら?」

「お城・・・と言っても大きくて豪華な砦という感じですしね」

「他の国にノースティン王国の権威を見せ付ける場という雰囲気はないのか?」

「他の国とはほとんど付き合いは有りませんよ?国の民達が王族を敬えば、それでいいんじゃないですか?」

「他の国ね。そういえばノースティン王国以外の国は私も知らないのよ」

「何でなんだ?貿易・・・国と国との商売とかしてないのか?」

「この大陸にはノースティン王国以外の国はございませんよ。海を越えての交流は非常に限定的ですね」

「大陸が全てノースティン王国なのか?」

「王族はそう考えているかも知れませんがね」

「獣人の村やヤマタイ国で分かるでしょ?管理してるワケじゃないの」

「そうか、兵士も五千・・・いや、今は四千位か?そんな人数じゃ王都の守護で手一杯か」

「でしょうね。コロマルさんのような機動力も有りませんから」

「これからはアミダマルもいるから、一層安心だな」

「既に王都より強大な力をお持ちですね」

「後は魔物対策かしら?魔物なんて私達の食糧でしかないものね」

「むしろ増えてくれると助かるんだがな」

「・・・なんと恐ろしい事を・・・」


ゴルドに呆れられながらも建物を紹介してもらう。流石に城は後回しにして、首都の中央に飾られた船のオブジェを見学する。大きさは原寸大かな?漁師の船位だ。お?モーター部分も再現されているな。どういう事だ?

「これは前にお話した古代神が乗って来た船を模した物で通称『古代船』ですよ」

「ああ、俺の仮面の元になった伝説か!」

「はい。ほら、周りに仮面を奉納してあるでしょう?一年に一度、王様が仮面を奉納するんです。20年は飾っておいて、20年が経った物から処分するんです」

「何で20年なんだ?」

「一説によると、古代神は20年でこの世を去ったと云われています」

「伝説になぞらえてあるわけか」

「仮面のデザインがバラバラね。これも伝説通りなのかしら?」

「はい。ですが、あくまで伝説なので信じる人と否定する人がいらっしゃいます」

「確証がないものね。人は自分に理解出来ない物は信じないのよ」

「おっしゃる通りかと」

「これは間違い無く実在したな。形に見覚えがある」

「漁師さんの船よね?」

「・・・あれ?あの船、ミスリルじゃないか?」

「流石です!それだけ王様は伝説を信じているのでしょうね」

「無用心だな」

「盗まれないのかしら?」

「無理ですよ!あれだけの大きさですから、重さもかなり・・・サチ様なら持てそうですね」

「うん。多分、俺もイケるな」

「駄目ですよ!?」

「「ふーん」」

「お願いですから!」

「はっはっは!大丈夫、冗談だよ!あれくらいの量ならすぐに用意出来るから!」

「・・・それはそれでとんでもない話なんですがね」


次に内地の雑貨屋にお邪魔する。

香水やドレス、剣にブーツにマント。つまり社交界に必要な物を取り揃えしているお店だ。

「香水の香りが強いな」

「私は五感が鋭いから特にキツいわね、外で待っててもいいかしら?」

「お二人には良く似合うと思うのですがね」

「雰囲気は分かったからヤマタイに帰ったら正装なんかも作らせてもいいかな?」

「まさか・・・」

「ノブターのお仕事だな」

「あれでも腕利きの職人なんですがね」

「私の下僕なのだから、きっとお願いすればジークの分も作ってくれるわよ・・・じゃ、外で待ってるわね」

「王国でも高名な鍛冶師なんですがね」

「とはいえ、自分から俺達に仕えると言ってるしな。テイムの魔法すら掛けて無いんだが」

「そ、そうですね。彼の希望ですからね」

「そのうちにオリハルコンの武器でも造らせてやるさ」

「・・・伝説の鉱石、オリハルコンがご褒美の扱いですか」


お昼を迎えたので食事処に入る。ゴルドにおすすめのお店を聞いたが、内地ではあまり食事をしないので心当たりが無いらしい。

適当に道行く人に声を掛けて聞いてみよう。見た目優先でパトラに頼む。仮面とローブの男や鋭い目付きのおじさんよりは良いだろう。

「ごめんなさい、ちょっといいかしら?」

「どうしまし・・・あっ!!」

「ん?・・・あっ!あの時の貴族!」

「ヨーダです!サチ!僕に逢いに来てくれたんだね!」

「しくじったわ・・・」

「ハズレ!よし撤収!」

「待ってください!」

「今日はニーナが居ないから俺が相手をしなきゃならない。すると、間違って首の骨を折ってしまうかも知れない。と、いう事で・・・さらば!」

「さらば!じゃないですよ!」

「いや、お前の相手をするのが面倒だ。俺達は美味しいお昼ご飯を探してるだけだから邪魔すんな」

「では!そういう事なら僕が!サチが満足出来る店を紹介しよう!」

「なるほどね、それならそれで・・・その前に!ヨーダって言ったかしら?」

「なんだい?何でも言ってくれ」

「呼び捨てが気になるわ。さん付けか様付けにしてくれない?」

「サチ様!」

「即決だな」

「後、馴れ馴れしいのが鼻につくわ。礼節を守りなさい」

「はい!分かりました!」

「即決だな」

「いいわ。美味しいお店、教えてくれる?」

「はい!喜んで!」

「「下僕が増えた」」

「何かしら?」

「「何でもないです」」

「しかし、パトラ様とこうして今日も逢えるなんて夢のようです!運命でしょうか?」

「違うわ」

「神様のイタズラでしょうか?」

「違うわ」

「そうですね!神様の巡り合わせですね!」

「ううん、きっと神様も間違えたのよ」

「「確かに」」

「ささ、行きましょう!おすすめのお店はこちらです!」


案内されるままに暖簾をくぐる。

「へぇ、いい雰囲気だな。喫茶店みたいだ」

「僕とパトラ様には似合いますが、そちらの二人はどうかと思いますが?」

「ヨーダ。私の連れに喧嘩を売るなら、私、帰るわよ?」

「すいませんでした!」

「お品書きはあるのか?」

「いえ、この店は二品しかないので」

「二品だけ?」

「はい。鶏肉のスープと・・・ふふっ、ちょっと変わったパンですよ」

「ほほう?さっそく食べてみようか」

「パトラ様は僕がお代を払いますからね」

「結構よ」

「それは失礼しました。昨日は『寄り添い』の辺りでお会いしたので・・・」

「パトラ様、この辺りの物価は昨日の店の5倍位が目安なんですよ」

「そうなの?」

「ま、気にする程でもないかな」

「パトラ様の気品溢れる姿はともかく・・・二人は旅の者では?」

「失礼、ワタクシはゴルド。ゴルド商会というお店を経営しておりますので、懐は気にせずとも結構ですよ」

「ゴルド商会!あのゴルド商会の会頭さんでしたか!!なるほど、今や行商の最大手、ゴルド商会であれば、旅人の装いも財布の中身も納得ですね!」

「それほどでもないですがね」

「そんなに儲かってるのか?」

「ふふふ、ジーク様のお陰ですよ」

「では、そちらの仮面の方は?」

「俺は・・・俺の職業は何だ?」

「「・・・言えない・・・」」

「だ、そうだ」

「・・・まさか後ろ暗いお仕事ですか?」

「そうじゃない・・・と思う」

「何か怪しいですね・・・」

「色々とやってるからな。一言では難しいんだ。土地の開発や武具の素材集めとか」

「そうね・・・湖を作ったり、ドラゴンを討伐したり・・・」

「シーーーーッ!!」

「湖・・・ドラゴン?・・・」

「き、気にせずとも大丈夫ですよ!ワタクシやパ、いやサチ様が心から信頼するお方です!」

「はて?どっかで聞いたような・・・」

「お待たせしました!お食事をお楽しみください!」

ナイスタイミングで店員さんが料理を運んで来た!


「「「いただきます」」」

「何ですか?それ」

「私達のマナーよ。気にしないで」

「料理を作ってくれた人への感謝や食材の命をいただくという意味の感謝の言葉かな」

「・・・素晴らしい!では僕も『いただきます』」

「・・・美味い!」

「美味しいわね。このドーナツ」

「どうなつ?このパンの事ですか?」

「知っているのですか?」

「ああ。これはパンじゃないよ。生地も違うし、作り方も違うんだ」

「パンは焼くけど、このドーナツは油で揚げてるのよね?」

店員さんがこちらを驚きの表情で見る。

「そうです!そうです!良く分かりましたね!」

「あ、ごめんなさいね?秘密だったかしら?」

「そ、そうなんですけど、食べただけで作り方を分かった人は、初めてですね!びっくりしました!」

「パトラ様。もし良ければ、後で作り方をワタクシに教えて頂けませんか?」

「いいわよ。私も好きだから。コーヒーと合うのよ」

「コーヒーと?」

「そう。ドーナツに・・・」

「待ってください!後でお願いします!」

ゴルドがチラチラと店員さんを見ている。

なるほど、売りに出す気だな!どれだけ商売のネタを増やすつもりだろう?

店員さんが仕事に戻って行った。

「それで、ドーナツに?」

「そんなに特殊な事じゃないわ。砂糖をまぶしたり、メープルシロップを染み込ませたりして甘くするの」

「・・・なるほど!ここでメープルシロップですか!」

「チョコやホイップクリームも捨てがたい・・・」

「分かるわ~、ポンでなんとかもハマるわね」

「そうか・・・ゴルド商会はサチ様のお陰で儲かっていたのか・・・やはりサチ様はただ者ではないのですね!」

「はい!お二人のお陰で、最近は大きく業績が伸びているのですよ」

「「いやいや」」

二人で照れてしまった。


ま、本当の事だけども。もっとも、今よりゴルド商会とべったりの関係なら発売の権利なんかもお金になるかも知れないが、実際の所は俺達の下にお金が貯まってもな・・・使い道が無いんだ。衣食住はノブター、ダイクンとサイクンが居れば食糧以外は事足りるし、ミーシャやパトラのお陰で好きな物も食べている。

つまり、生活に関しては娯楽以外は充実してるからなぁ・・・お金が必要なのはお酒と調味料位かな?


今回はせっかくだから王都で色々楽しみながら散財しようと思う。王国の文化を調べながらな。


特に美味しい食べ物は大歓迎だ!ドーナツはモチモチで美味しいし、鶏肉のスープも香草が程よく作用して良い味だ。仮面のせいでどうしても食べにくいが、本当に美味しいお店だった。やるじゃないか、ヨーダ!今日は貴族っぽい格好だしな!くそっ!イケメンが!爆発しろ!

それから世間話をしながら完食。最後は『ごちそうさまでした』も真似していた。


「すいません!これから仕事が有りまして・・・名残惜しいですが、僕はこれで失礼します!」

「美味しいお店だったわ。ありがとう」

「はうっ!!・・・昇天しそうだ・・・」

「早く逝け!」

「あ、あの・・・もし宜しければ、明日もどうですか?」

「そうね、どうする?」

「ワタクシは同行して頂いた方が視察もはかどると思いますが?」

「そうだな。ヨーダ。明日も古代船の所でな」

「分かりました!それでは失礼します!」


パトラが釘を刺したお陰でヨーダの態度が豹変した。貴族としての教育で庶民にはへりくだらない様にしていたらしい。一応は実践していた様だが、元々の性格のせいか、違和感が有ったと言っていた。

確かにパトラを様付けで呼び始めたら凄く自然だったからな。



俺の事は怪しんでいたがな!

・・・仮面とフード付きローブだもんな。

実際の中身なんて魔王でゴブリンだしな。



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