70話
買い物で金貨1枚を出したら、店員さんが血相変えて奥へ走って行ってしまった。
後ろで爆笑しているゴルドへジト目を向ける。
「ゴルド!笑ってないで助けてくれ」
「はっはっは!いや失礼!予想通りなので、あっはっはっは!」
ゴルドに金貨の価値を教えてもらった。
鉄貨1枚=十円
銅貨1枚=千円
銀貨1枚=一万円
金貨1枚=百万円
こんなもんかな?リンゴや鍋や家等、俺の分かる範囲で価値に大体のあたりをつける。
とりあえずで出したのが金貨なら、それは店員さんも驚くというものだ!
しかし!犯人はゴルドである!分かっていて、俺にアバウトな感覚しか教えてないのだから、犯人はゴルドに違いない!
軽く店員に誤りながらも買い物は無事終了。
・・・あれ?それなら、ミスリルの価値って?
「なあゴルド。ミスリル、高過ぎじゃないか?」
「そうですか?」
「葉っぱの形のミスリルを換金したんだよな」
「そうですね」
「1枚当たり、金貨20枚だったっけ?」
「そうですね」
「・・・二千万・・・」
「ヒサシ、ヨダレ、ヨダレが出てるわ!」
「お、おう。すまん。びっくりしてたわ」
「もちろん、高いですよ?石ころの形だったら半分位じゃないと割が合いませんから」
「葉っぱが、ねぇ・・・」
「芸術品ですからね」
「これは、予想以上だったな・・・」
「ワタクシは予想通りで大変楽しませてもらいましたけどね」
「いい性格してるよ!」
「光栄です!」
「「くっはっはっは」」
ゴルドにしてやられたが、俺は四千万を持ってると思えば、自然と笑えてくるってもんだ。
しっかし、ゴルド、儲けてるな!あの時も、簡単に金貨を40枚も出して来たからな!
「ジーク様のお陰で美味しい商売をさせてもらってますよ!」
「そうか?それは何よりだ」
「更に念話の魔法も手に入れましたし」
「魔法は上手く使えてるか?」
「まだ魔力の微調整が難しいですが、部下達との連絡は出来てますよ」
「おお、早速使ってるんだな」
「はい!例の葉っぱの形をしたミスリルもすぐに売れたようです」
「ほう!値段を聞いてもいいか?」
「ぐぬ・・・まあ、いいでしょう。オークションも予定してますからね。値段は金貨70枚です!」
「「「「おお!!」」」」
一同、驚愕の価格だった!
王族に売るって言ってたから高めの金額になるだろうとふんでいたが、完全に予想以上だった!
ゴルドは・・・というと、さもあらん。と当然のような顔をしている。流石はゴルド!度胸が違うな!
「次は朝ごはんにしたいわね。ヒサシのオゴリでね」
「かまへん、かまへん!ぎょうさん食っとき!」
「よ!太っ腹!」
「はよ、おっきくなるんやで!娘さん、ちっさいからのぅ!」
「叩くわよ?」
「サーセンシタ!調子乗りました!」
「では、次は私の紹介で行きましょう」
「ニーナの紹介か・・・地元民のオススメは楽しみだな!」
「あ、すいません。私が住んでたのは内側でして・・・」
「そうなのか?」
「ヒサシ、近衛兵士のトップがスラムに住むワケないでしょ?」
「あ、そうか」
「でも、この辺り安くて美味しいお店が多いので私達も良く来てますよ」
「へえ・・・楽しみだな」
案内された場所は屋台が立ち並ぶ通りだった。奥が見えない程の距離を屋台がズラリと並んで、ここはキレイに区画が整理されている。
「店も気になるけど、何より、ずいぶんとキレイに並んでいるな」
「ここは貴族もお忍びで来ますからね。自分達が用のある所は管理してるんじゃないですかね」
「だと思います。やっぱり自分勝手ですけど」
「ニーナ」
「は!すいません、つい・・・」
「重症ね」
「重症だな。暴発しないように見とかないと」
「不安ならウチが警戒するッスよ」
「ミーシャはミーシャで獣人だから気を付けろ」
「そうッスね。アーちゃんも門番さんに言われてたッス」
「なんか言ってましたね」
「ウサギの獣人は可愛くて人気が有るからねぇ」
「誰だ!?」
聞き覚えの無い声がして、振り返りながら戦闘体勢を取る!
どころか、ニーナが男の懐に走り込み、喉元に指先を当てる!・・・先走り過ぎだ!
「ひっ!」
「ニーナ、そこまでにしておけ」
「は!」
「どちら様だ?」
「ふぅ。びっくりした!僕はヨーダ。これでも貴族だよ?」
「ニーナ、剣を触るな」
「す、すいません。無意識に・・・」
「こんな街中で武器をだすのは止めて下さい」
「そうだな。すまない。この娘は貴族に少なからず恨みがあってな」
「・・・それは、すみません。貴族にはろくなヤツがいないもので・・・」
「お前が、ろくなヤツかどうかは知らないがな」
「これは手厳しい!」
「ヒサシ様!思い出しました。ヨーダさんはこの区画の管理者です!」
「そうか。その貴族様が何の用かな?」
「ヨーダと、呼び捨てで結構です。こんな若造ですしね」
見た所、イケメン。長い茶色い髪で爽やかイケメンだ。くそ!主人公面が!
着ている服は意外と平凡だ。貴族と言われなきゃ分からないだろう。だが、佇まいは落ち着いて、傲慢な感じは見受けられない。貴族の兵士とは別物の風格を持っている。
それなりに印象は悪くないな。
「敬語は苦手でな、助かるよ」
「ん?スッゴい可愛いね!名前は?」
「・・・サチ」
「サチか・・・良し!僕と結婚しよう」
「殺すわよ?」
「ひっ!」
「サチ!瞳を光らすな」
「・・・はぁ、はぁ、い、今のは!?」
「何の事かしら?」
「あ、すっとぼける気だ・・・」
「サチ!これは運命の出会いだ!今、身体中にバチンと来たよ!きっと神様からの天啓だ!」
「色んな意味でおしい!!」
「こいつ、馬鹿なのかしら?」
「サチ!どう?僕は本気だよ!」
「お断りよ!私には婚約者が居るの。残念だけど、他を当たって頂戴」
「どこのどいつだい?僕が話を付けてやる!」
「ここのこいつだよ。ヨーダ、首を跳ねられたくなければ、この辺にしておけ」
「・・・この仮面の男かい?」
「そうよ。あなたはお呼びじゃないの。消えて」
「そう、言わされてるのかい?」
「「は?」」
「僕が助けてあげる!さあ!サチを開放しろ!」
ビシッと俺を指差す。
失礼な奴だな。ニーナがまた一歩、前に出る。
「ヒサシ様、よろしいでしょうか?」
「・・・殺すなよ?」
「は!」
ニーナが無言でヨーダを裏路地に引っ張る。ヨーダも多少は抵抗したようだが、元団長に敵うワケがない。
少ししてからボロ雑巾の様を体現した貴族(笑)が首根っこを摘ままれてやって来た。
「少しは懲りたか?どーせ、手当たり次第に声をかけてるんだろ?」
「ヒサシ様、残念ながら、ヨーダさんは数少ない善良な貴族ですよ・・・まあ、手遅れですけど」
「そうなの?でも俺の邪魔はいかんな」
「更にはサチ様への無礼、私は許しません!」
「ううん・・・はっ!サチ!助けに来てくれたのか!?」
「もう、トドメを刺してもいいかしら?」
「やめとけ。ヨーダは一体、何の用で俺達に話掛けて来たんだ?今更だけど」
「本当に今更じゃないですか・・・いや、若い獣人がウロウロしてたからちょっと注意喚起を・・・」
「普通に善意だったみたいだな」
「その後が問題なのよ。私に声を掛けるなんて何様のつもり?」
「貴族様だろ・・・」
「私に求婚なんて、魔王になってから言って頂戴!」
「なんて事を言い出すんだ・・・」
「魔王?・・・分かった!魔王を討伐すればいいんだね!?」
「ほらぁ、やっぱり!」
「私を取り合う二人・・・楽しい!」
「馬鹿な事言ってないで朝ごはんにしようや?」
「・・・そうね」
「じゃあなヨーダ君」
「・・・魔王を・・・魔王さえ倒せば・・・」
なんかスイッチ入ってるけど大丈夫かな?ニーナもいるし危険は無いと思うが・・・。
トボトボとどこかに歩き出すヨーダ。
俺は横目で見ながら朝ごはんを決める。
そんな事より飯だ、飯。
様々な屋台が並んでいる。
・・・が、良くみると、ほとんどが似たり寄ったりのメニューだ。
豚汁、パンとポタージュ、果物、うどん。
それなりに味付けや値段、ボリュームは工夫している様子だが、残念ながら目新しさが無い!
適当にうどんを頼んで食べる。塩味。不味くはないが、喜ぶ程では無いな。
「ヒサシ様、ご理解されましたか?」
「ん?そうだな。これじゃつまらないな」
「イケる。と思いませんか?」
「これは楽勝だな。唐揚げ屋台。出店するぞ!」
「ありがとうございます!」
「国に戻ったら戦略を練らないとな」
「戦略・・・と、いいますと?」
「そうだ。適当に出しても成功するだろうが、簡単に真似されてもつまらん」
「・・・なるほど!」
「味、価格、出し方、立地に従業員の教育と賃金。それに作業の隠蔽。考える事は多いぞ」
「流石です!ヒサシ様、本格的に商会を開いては?」
「・・・それは」
「それは駄目よ?」
「あれ?駄目なんスか?」
「サチ様、何故です?」
「ヒサシが忙しくなるじゃない!」
「は、はあ・・・」
「それにゴルドも儲からなくなるぞ?」
「そ、それはそうですが・・・」
「俺は楽して稼ぎたい!」
「ヒサシ、流石よ!性根が腐ってる!」
「よっ!魔王!」
「しーーーっ!」
「あわわわ!しまったッス!」
慌てて周囲を見渡すが、この人混み、この喧騒で誰も聞いて無いみたいだ。危ないな!もう。
「アーシャも預けるからな。ゴルドにはしっかり儲けて貰わないとな」
「お任せ下さい!」
「「ふっふっふ」」
「怖いッス・・・」
お?奥からニーナとアーシャがサタンを連れて戻って来た。何か持ってるな?
「ニーナ、それ、何だ?」
「ふふふ・・・鳥焼きです!甘く味付けしていて美味しいんですよ?」
「なるほど、ヤキトリだな」
「そうね、ヤキトリね」
「いや、鳥焼き・・・まあ、どっちでもいいのかな?」
「一本くれないか?」
「そう来ると思って沢山買ってきましたよ」
「気が利くね!ありがとな」
「はう!・・・サチ様、すいません!キュンと来ました!」
「いいのよ?好きに堪能して!」
「はい!」
「・・・何のこっちゃ?」
皆でヤキトリを味わう。
モキュモキュと咀嚼しながら・・・。
「何か・・・物足りないな」
「分かるわ・・・そうね、塩と・・・少し辛みも欲しいかしら?」
「え?この甘さがいいんじゃないですか?」
「アーシャ、醤油と一味出して」
「・・・はい、どうぞ」
パトラ、いやサチがパパッと味を変える。
「ほら、ヒサシ、どう?」
「・・・これ、これ!これぞヤキトリ!」
「皆もどう?」
「「「「「いただきます」」」」」
「おお!懐かしい!200年ぶりのヤキトリであるな!」
「美味いッス!これはいくらでもイケるッス!」
「お酒が飲みたーい!美味しいです!」
「こんなに変わるモノなんですね!やはり王都に同行して良かった!」
「凄い美味しい!いつもの3倍、いや5倍は食べれます!」
出た!サチのどや顔!
鼻の穴が拡がってるぞ!アゴがしゃくれてるぞ!
不細工だぞ!
元が可愛いから、余計に残念なんだよな・・・。
次に宿を決めた。王都から出て家に帰っても良いのだが、せっかくなので宿屋のレベルを体験しておく事にしたのだ。チェックインしてランクの違う部屋を3つ用意する事になった。俺とゴルド、ミーシャとアーシャ、ニーナとサタンだ。お互いに部屋を確認して価格と擦り合わせする。ローテーションで泊まる予定だ。部屋の値段は一晩、晩御飯付きで上から銀貨二枚と銀貨1枚と銅貨7枚。先払いで払ってしまおう。
期間は20日。20日もあれば視察もあらかた終わるだろうとの判断だ。
その後も1人当たり金貨1枚ずつ配って、好きに買い物をさせた。
言ってしまえばモニタリング調査である。興味の湧く物やヤマタイ国には無い物。必要な物や趣味、嗜好品。
チーム制にして買い物のダブりやトラブルが無いように気を付けた。
ゴルドチームは俺とパトラ。
ニーナチームはミーシャとアーシャとサタン。
ゴルドチームは建物や設備、文化や制度の視察。
ニーナは食事、流行、ファッションと便利な道具なんかの興味が湧くモノを中心に買い物。アーシャもいるから買い放題だ。軍資金も渡してあるから大丈夫だろう。
まずは街の配置を覚えて迷子にならないように。更に、ゴルドからニーナへ定期的に念話で状況確認をしてもらう。そう言えば、念話を使えるのがもう一人、いや一匹いたな!
ゴルドを通してコロマルに連絡をさせる。
少し待っていると、コロマルから念話が届けられた!
(ジーク様!聞こえますか!?)
(コロマルか?)
(はい!恥ずかしながら、ゴルドさんから念話の上手な使い方を教えてもらいました!)
(こんなに離れてても大丈夫なんだな)
(ジーク様とパトラ様の魔力は異常ですからこのぐらいの距離でもボクは察知できますよ!どっちの方角に相手がいるか分かれば大丈夫みたいですね)
(そうなのか。初心者のゴルドがコロマルに連絡出来たんだな)
(ただし、相手の事を知らなきゃ駄目っぽいですね。相手を探せませんから)
(それでも、この距離で連絡を取れるのは便利だな、ヤマタイ国は問題無いか?)
(バートンさんが凄まじい人数の兵士さん達を連れて来ましたよ!)
(ああ、それは俺が頼んだ。規模は大きいがいつもの信者になりそうだ)
(・・・既に腕にタトゥーを入れ始めていますよ?)
(気にするな。気にしたら負けだ)
(はい!他には・・・特に異常はないですね)
(それは何よりだ。これからは暇な時か、時間を決めて連絡をくれると助かるんだが)
(良いんですか?じゃあ時々連絡しますね)
(もし、俺に連絡がつかない時はパトラに頼むよ)
(分かりました!それでは視察、頑張って下さい!)
(ありがとう、またな)
凄く安心出来た。コロマルはヤマタイ国の番犬、いや守り神になっているからな。コロマルが居ればドラゴンすら撃退出来るかも知れない。
この前の軍隊すら戦いにならないだろうからな。
スティーブが獣人をまとめながら国の決め事を守らせ、コロマルが外敵から国を守る。人間達はバートンが面倒を見てくれるとくれば、今の所は安泰だ。
・・・あれ?既に俺の出番が無くね?




