7話
穴掘り魔道具か・・・。一言でいうとパッとしないな。俺の無双計画は15分で潰えてしまった。だが、何一つマイナスの要素は無い。大きなプラスが無かっただけで、何かが減ったとか無くなったとかでは無い。むしろ道具が増えたんだ!そうだ、ポジティブに生きて行こう!前向きにゴブリン人生を謳歌しよう!(泣)
「さて、魔道具の使い方は後で考えるとして、さっきの話が気になるな。」
「私の長所の事かしら?」
「進化の方だよ!」(怒)
「進化したいの?」
「しないよりマシかな?と思ってさ。」
「何となくで出来る事では無いんだけどね?」
「だって今なら野良犬にも殺されそうだし。」
「ここの野良猫にもね」
「やっぱりネタじゃねーか!」
とりあえず住みかまで帰る。しかし、進化か・・・。俺も強くなれんのかね?俺の体なんてガリガリで筋力要素なんて皆無だぞ?人間みたいに筋トレで効果は有るかな?
「そうだ!筋トレしよう!」
「何?その『そうだ!京都に行こう!』的なノリは?」
「進化って簡単じゃ無さそうだしな?今出来る事から始めようと思ってさ。俺のモットーはノンキなポジティブシンキングだからな!」
「大丈夫。既に体現出来てるわ。こんなに楽しそうなゴブリンなんて初めて見たもの。」
「クヨクヨしても人間に戻れないし、元の世界にも戻れないからな。むしろ生き延び無いと元の世界に戻るチャンスすら無いだろ?」
「なら尚更、よ?元の世界戻る手段も、人間になる方法も解らないのにゴブリン人生を謳歌するなんて・・・。驚嘆に値するわ。」
「馬鹿にしてる?俺だってゴブリンになったのを理解した時は茫然として絶望しちゃったよ?でもな?絶望しても腹が減る、眠くなる、元の生活に戻りたいって気持ちは無くならないんだ。生きるしか、生き延びるしか無いんだ!」
「・・・うん。確かにそうね、頑張るしかないわよね。」
「まずは死なない様に気を付ける!」
「よりによってゴブリンだもんね?」
「進化出来たら変わるかな?って考えたんだけど、方法も解らないんじゃな。」
「強い敵と闘うとか!?」
「どこの戦闘民族だよ!?」
「だって魔物は食べる為に獲物を狩るの。人と違ってね?だから魔物は強くならないといけないのよ。」
「おう、信憑性のある話だな。もしかして前例とか有るのか?」
「親友を殺されて怒りで目覚めるとか?ライバルに先を越されて、己の不甲斐無さを怒りのパワーに変えるとか?」
「それ金髪になる戦闘民族の話だよな!?色んな意味でやめてくれ!」
「他にはそうね・・・。封印された魔力を解き放つとか?」
「ゴブリンですけど?ゴブリンの秘められた力なんて想像出来ませんが?」
「神様からチートな力を授かるとか?」
「多分だけど本当に神様が居たら呪い殺すよ?今の俺なら。」
駄目だ。全くアテにならない!そしてこの猫、無駄に、いや、無駄な知識が豊富な気がする。
「・・・。待てよ?無駄な知識?」
「軽く失礼だけど、なによ?」
「こんなにファンタジーな世界なら、何があっても不思議じゃ無いのか?」
「さっきから私が言ってるのは元の世界の二次元よ?あなたの頭は大丈夫?」
「でもケットシーとかゴブリンとかも二次元じゃねーか?」
「・・・確かにね。魔法とかね。私は召喚された後にメーベルの婆さんにイチからこの世界を教えてもらったわ。それからは自然とそういう世界だからって納得しちゃってたわね。」
「なんか違和感を感じる話だな。なんだろ?」
「今思えば早く理解しなきゃって焦ってたのかも・・・。まぁ、命の危険が迫る中でハッチャケるなんて考えた事も無かっただけかもね。」
「力の温存、力の加減か・・・。周りに合わせる日本人の体質だよな。」
「ついでに言うと妄想を膨らます心の余裕も無かったのかもね。」
「なんか・・・俺のせい?」
「あなたのお陰、よ?」
「こんな話出来る相手も居なかったならしょうが無いよな?」
「婆さんは良くも悪くも先生みたいな人だったから生きる事に真面目だったの。あなたみたいな人はこの森に居ないのよ。ノンキでポジティブシンキングなゴブリンなんてね。」
サチは嬉しそうに尻尾を振って歩いている。
俺だってこんな世界で日本人だった奴に会えるとは思って無かったんだよ。サチには心からありがとうと言いたい。
「はぁ、これであなたがゴブリンでさえ無ければね?」
俺も心からそう思う。




