69話
全員が揃った所で、改めて結果発表。
ウーズラッカーと名付けた魔物と皆の進化を確認する。身体的な変化はもちろんだが、実は内面、つまり、魔力や筋力も見違えている。もっとも、本人達は気付いてないかも知れんが・・・。
特に、ゴルドが魔法を覚醒し、ニーナの身体能力が半端ない!もはやミーシャでは勝てないだろうな。
足止めをくらってたが、今日から王都へと遠征を続ける。王都の視察・・・より先に、俺の服を買わねば!
上はローブで誤魔化せるが、下は七分丈になってしまってる!どこぞの芸能人か!?
「ニーナ、今のうちに身体能力の確認をしておけ」
「確認ですか?」
「ああ、前にパトラがヤバかったんだ。力の加減を間違えて、獲物を黒焦げにしたり、獲物の頭を吹き飛ばしてしまったり・・・」
「ちょっと!恥ずかしいでしょ!?」
「まあ、そんな事態になりかねんから、安全なうちに身体を動かして来い。俺達も足は止めないから・・・道は分かるな?」
「大丈夫です!では少し離れます!」
「ミーシャも付き添ってやれ」
「了解ッス!」
二人が林の奥へ消える。しばらくすると・・・。
・・・ゴン!・・・ダダダダ・・・ズドン!
「ふぅふぅ・・・ありがとうございました!ジーク様のお陰で無様な姿を晒さずに済みそうです」
「凄い音だったな」
「ウチと軽く手合わせしてたッス」
「おいおい!大丈夫か?」
「大丈夫ッス!」
「はい!情けないですが、手加減してもらいました」
「ほう!ミーシャが手加減する立場だったか」
「ふふっ!酷いッスね!でも、油断は出来ない強さになってたッス!」
「いえ、素手でしたが、全ての攻撃を見切られてました・・・劇的に身体は動くのですが、私もまだまだですね!」
「ニーナが進化したように、ミーシャも進化しちゃってるからな。進化の分だけじゃ生物としての格、つまり強さは差が縮まらないんだ」
「なるほど!やはりここから先は修練が必要なんですね」
「もしくはニーナだけが進化する。とかな」
「更に進化ですか・・・」
そこでどうして自分の胸を見る?そしてミーシャの胸を見る?
そして俺を見るな!何も言えないから、俺を見るな!
「んんっ!ともかく、ミーシャも勝ちたいなら鍛練が必要かもな?」
「うーん・・・面倒ッス!!そもそも、ウチはニーナじゃ無くて、パトラさんに勝ちたいんス」
「「「無理」」」
「そんなぁ!パトラさんとジークさんはともかく、ニーナまで!」
「私も進化して、更にパトラさんとの強さの距離を遠く感じました。パトラさんは次元が違いますよ!相手をするだけ愚かです!」
「あら、言い切っちゃったわね」
「俺もそう思うけど?」
「私の強さに届くとしたら・・・ドラゴンかジーク位ね」
「無理無理無理!ミニ太陽なんて出されたら、近づく前に消滅しちゃうよ!」
「やる!?」
「やんない!!」
「やろ!?」
「絶対やんない!!」
「やりましょうよ!」
「やりませんって!!」
「やっぱり仲良しッス。ウチも入れて欲しいッス!」
「パトラさんってジーク様にだけ、態度が違うんですね・・・」
「そうなんス。こうやって見てれば可愛い美少女なんスけどね・・・」
「向かい合うと、威圧感だけで足が動かなくなりますからね・・・」
「分かりますか?ワタクシも恐怖ですくんでしまうんですよ」
「ゴルドさんも?」
「と、いうより、ヤマタイ国の皆さんだと思いますよ・・・良いですか?ニーナさん。絶対にパトラ様を怒らせては行けませんよ!?『絶対に』です!!良いですか!?」
「わ、分かりました!!」
「少なくとも、パトラ様はジーク様にしか止められませんからね・・・」
「はい!承知しました!」
「・・・ゴルド?聞こえてるわよ?」
「ヒッ!こ、これは・・・その・・・」
「ま、いいわ。ニーナも気を付けてね。私はいいけど、ジークに害意を持ったら・・・」
「パトラ、瞳を光らすのは止めなさい」
「冗談よ?」
「・・・し、死ぬかと・・・」
「殺さないわよ!・・・多分」
「弱い!そこは言い切れよ!」
なんやかんやでワイワイと楽しくピクニックしてる気分だ。
おっ!森がひらけて街が見えてきたな!
「あれが、ノースティン王国の首都です!」
「ゴルド、入るのに許可は必要なのか?」
「名乗るだけでいいですよ。なので、ここで偽名でも考えましょうか?」
「いや、いい。俺はヒサシ」
「なら、私はサチね」
「「ふふふっ」」
「我は」
「いらないだろ!」
「喋らなきゃいいだけでしょ?」
「そ、そうか・・・」
「ニーナさんはどうしますか?・・・ニーナさん?」
「そ、その、お二人のお名前は!」
「ニーナ?どうかしたの?」
「も、もしや・・・お二人は神の国から!?」
「・・・ん?あ!教えてなかった!」
「完全に忘れてたわ・・・」
あー、王都に入る前に一旦休憩だな、こりゃ。
いや、異世界から喚ばれたのを伝え忘れてた俺達が悪いのか・・・。
一度、森へ戻り、俺の魔術で空き地を作り、アーシャに家を出してもらう。
この話は他の人には聞かれると面倒だ。
王都の門には人が多く見えたから、この辺りも油断は出来ない。家の中が一番安全だろう。
説明をしてる内にすっかり日も暮れ、王都入りは明日のする事にした。ニーナは内容をすんなりと受け入れた。疑ってもしょうがないのだろう。
朝を迎え、今日の朝食はどうしようかと悩んでいると、2階からニーナが降りて来た。
「おはようございます、ジーク様・・・昨夜のお話ですが・・・」
「おはよう、どうした?」
「内容を疑っているワケでは有りません。しかし、ジーク様はもしや古代神と同格の存在なのでは有りませんか!?」
「古代神、ね・・・知らん!そいつと話を出来れば良かったんだが・・・かなり昔の話だろ?」
「そうなんです・・・もし、ジーク様がそんな格の高い方なのであれば、私は一体、どのような態度で接すれば良いのか・・・」
「いや、変わらなくていいから!」
「もしや、顔を見せるのも失礼にあたるのでは!?いや、むしろ、このようにお話させて頂くのも不敬なのでは!?」
「こら!まず話を聞け!」
「はっ、はい!」
「ったく・・・一晩考えた結果がこれかよ?」
「申し訳ございません!」
「いいか?良く聞け!俺はゴブリンだ!」
「・・・承知しております」
「多少、強くなったかも知れないが、俺は神じゃない。それはむしろパトラの方だ」
「・・・はい」
「向こうの世界では、いや俺達のいた国では、基本的に存在価値に上下は無い。もちろん、身分や能力、経験や経歴なんかで敬われたり、仕事上での指示、命令なんかは有る。だが、決して絶対的な序列では無い」
「・・・」
「もし、本当に古代神が俺と同郷だったのなら、古代神と俺は同格だろう。だからと言ってこの世界の皆より格上という事では無いんだ・・・分かるか?」
「・・・つまり、私達とジーク様が同格と?」
「そう!そもそも立場や仕事以外で上も下もあるか!!」
「・・・承知しかねます!」
「Why!・・・びっくりして英語になっちまった!どうしてだ?」
「その考えは・・・あまりにも・・・この世界とは違い過ぎて・・・」
「そうだよ?だからこの世界は進歩しないんだ!魔物と戦うのも強くなければいけない、王族や貴族だから他より偉い・・・そんなの、俺は認めない!」
「・・・」
「王族や貴族がふんぞり返っているのは、お前達が、民達が必要以上に下手に出るからだ。お前は王国の貴族を殲滅すると言う。何故だ?貴族が民を虐げるからだろう?」
「はい」
「民は何をしている?それでも従っているんだろう?」
「う・・・」
「例えば、貴族に食事を作るのは誰だ?貴族を守る兵士は何処から来ている?貴族の着る服は誰が作っている?」
「・・・庶民です」
「だろ?皆が貴族を拒否するのであれば、貴族に価値は無い・・・俺と同じだ。俺が何処の誰であろうと俺の存在は変わらない。俺だけがいても無駄なんだ。つまり、お前達と同じ。俺達は対等で、俺は俺の役目を。お前達はお前達の役目を果たせばいい。それが、俺の目指す国の有り方。優しい国に繋がるんだ」
「ジーク様・・・ちょっと難しいです」
「朝っぱらから何、難しい事を説教してるのよ?」
「パトラか?・・・難しいかな?」
「難しいわ。価値観を一瞬で変えるなんて難し過ぎるのよ・・・だから、ね、ニーナ、簡単に考えなさい。私とジークの元に全ての命は等しいのよ!」
「なんと!とても分かりやすいです!」
「それ、意味が違うんじゃ・・・」
「これでいいの!私達が後で居なくなれば万事解決でしょ?」
「あ、そうか!俺達が居る内に慣れとけばいいのか」
「そういう事よ」
「お、お待ちください!居なくなるというのは!?」
「何もあなた達を見捨てるワケじゃないの。立場から降りるって意味よ」
「そうそう。いずれは俺達がいなくても問題無く治世が送れればいいと思ってるんだ」
「そういう事ですか・・・」
「さっきのジークの理想は掲げるけどね。皆が理解して常識になるには時間が必要よ。ジークも焦らないで行きましょうよ」
「意識改革って難しいんだな・・・」
「大丈夫よ。イタダキマスの言葉なんて、10日足らずで皆に広まったじゃない!」
「そうだな。まずは実践あるのみ、だな」
「・・・ジーク様もパトラ様も本当に民の事を考えて・・・私、決めました!!」
「ど、どうした?急に大声で」
「私!ジーク様に仕えます!」
「いや、既に仕えてるだろ?」
「実は、今朝までは・・・」
「そうね。私に敗れて、テイムの魔法で半ば強制だったのよね」
「す、すいません・・・でも!今、ジーク様の話を聞いて決めました!私は一生を掛けてジーク様に力添えをします!神に誓います!」
「え?神ってパトラ?」
「茶化さないの!」
「はっはっは!本当にニーナはお堅いな!・・・分かった!これからは頼りにさせてもらうよ」
「お任せ下さい!」
話が一段落した所で、2階からトテトテとミーシャ、アーシャ、ゴルドが降りて来る。
「素晴らしい!ジーク様の理想を理解して頂けたようですね!」
「すいません、なんか盗み聞きみたいで・・・」
「いいのよ。朝から騒いでるこの二人が悪いのよ」
「ニーナさんもウチと同じッスね!ウチと同じ使い魔ッスよ」
「え!?ミーシャさんもテイムされてたんですか?」
「そうッス!そして、将来のお嫁さんッス!」
「あ~ん!?」
「パトラ、キャラ!」
「パトラさん、怖いッス・・・」
「でも、私も参戦しますからね!パトラさん!側室として可愛がって下さい!」
「ほら!こういう事よ!ミーシャ、分かった!?」
「違うッス!パトラさんが側室ッス!」
「・・・」
「パトラ、瞳を光らすな」
「くっ!き、今日はこの位にしてやるッス!」
ミーシャがヨボヨボと2階に戻って行く・・・。
・・・あれは・・・漏らしたな。
ミーシャが服を変えて戻って来た。
「あ、朝飯をどうするか考えてなかった」
「王都で食べればいいじゃない?」
「店、開いてるの?」
「開いてる・・・あ、ジークは初めての人間の街だったわね。そうね、分かりやすく言えば東南アジアの朝市みたいになってるの」
「へぇ、なんとなく分かった!それなら時間の遠慮はいらないな!早く行こう!」
「ウチも楽しみッス!」
「美味しいお店をご紹介しますよ」
「私も馴染みの店があるわ」
「お酒はありますかね?」
「「朝から!?」」
パトラとハモった。
サタンを起こして、家を収納し、王都入り口の行列に並ぶ俺達。
順番になり、門番に名前を伝える。
「待て!そこの兄ちゃんは顔を出してくれるかい?」
「すいません。昔、魔物にやられて大ヤケドを追ってしまったので・・・」
「そ、そうか。ごめんな?じゃ、いいよ通って」
「ありがとうございます」
「サチよ」
「ずいぶん可愛い・・・ゴホン!通っていいよ!」
なんだ?急に爽やか対応だな!
「ミーシャッス」
「ミーシャッス?変な名前だな」
「ミーシャが名前ッス」
「ああ、分かった。通ってくれ」
いつも、ミーシャの自己紹介で引っ掛かる。
「アーシャです」
「通ってくれ。人買いには気を付けろよ」
「はい、ありがとうございます」
優しい門番だな。
「ニーナだ」
「はいよ・・・待て!いや、お待ちください!」
「何だ?」
「も、もしや団長では!?」
「違う。名前が同じで、良く間違われるがな」
「そ、そうですか。いや失礼。通ってくれ」
「ああ」
危ない危ない。そう言えばニーナは有名人だったんだっけ。
「毎度様です」
「これはゴルドさん!お疲れ様です!」
「はい、ご苦労様です」
流石はゴルド。こういう所で人柄が出るよな。門番からも労いの言葉が出るとは!
・・・これで全員か?
「にゃ」
「はいよ、猫ちゃんも通りな」
「にゃ」
・・・にゃって!普段は「我」が「にゃ」って!
気付いた俺とアーシャは声を殺して笑っている。
憮然とした表情のサタンが、より一層面白かった!
「サタンさん、可愛いかったですよ」
「そ、そうか・・・アーシャ殿が喜ぶなら良しとするか・・・」
サタンは本当にアーシャにメロメロだな!
全員が問題無く門をくぐり、いよいよ街の探索か?
「とりあえず、飯か?」
「先にあなたの服よ」
「あ、そうでした・・・」
「ならば右手の奥に良いお店が有りますよ」
ゴルドの紹介してくれる店なら安心だ。
早速ぞろぞろと皆で向かう。街を見ながら・・・。
王都か・・・。
道行く人々は黒髪や茶髪。普段着と旅人と鎧が入り交じってごちゃごちゃした感じだな。ゴミがそこら中に落ちていて見苦しい。
あれは貴族か?人混みが自然とはけていくな。嫌われてるのが一目瞭然だ。
建物が乱雑に並び、道は狭い。人が多くて余計に歩き難い。道は土でボコボコ・・・。
「歩きにくいな・・・」
「ジ・・・ヒサシ様、あの国が特殊なのですよ?」
「均した後で硬くしただけ、なんだけどな」
「硬く、というのが難しいのです。まさか石を整形して並べるなんて言わないですよね?」
「そこまで言わないが、穴埋めくらいは出来ないのかな?」
「やはり、気になりますか?流石はジーク様です!目の付け所が違う」
「ヒサシな」
「す、すいません!ヒサシ様!」
「そうね、砂利を敷くくらいは出来そうよね」
「昔はやってたんですけどね・・・兵士達が」
「何?そうなのか?」
「ニーナさんはやってないんですか?」
「私は腕一本で闘い続けたからな・・・」
「兵士ってのも色々あるんだな」
「兵士というより・・・命令を下す、貴族や王族に問題が」
「ニーナさん!!」
「は、はひ!」
「ここは王都です。路上での言葉は気を付けて下さいね。本懐を遂げるには、相応しい時が有るでしょう?」
「申し訳ない!」
「ニーナ、愚痴を言いたい気持ちは分かるがな、ゴルドのいう通りだ」
「面目有りません・・・」
「それはいいとして・・・この辺りはスラム街にあたるのか?」
「そうなりますかね・・・住民達が勝手に店を出したり、空き家に住んだりしてますから」
「そうか。パトラ、ヤマタイには団地アパートを作ろうか?」
「・・・良いアイディアね!賛成よ」
「ヒサシ様、だんちアパートとは?」
「んーと、部屋ごとに仕切って、皆で住めるようにデカイ家にするんだ。部屋によっては家族で住める」
「・・・なんと・・・」
「ヤマタイの国では俺の権利で作るからな?ゴルドは他の国で経営してくれよ?」
「もちろんですとも!むしろ、他の国なら良いんですか?」
「構わないよ」
「ふふふ。ヒサシ様と居るだけでワタクシの店が大きくなりますねぇ」
「ゴルド、良い顔よ」
「ゴルドさんの笑顔が黒いッス!」
「そりゃ、俺が信頼する商人だからな!やり手に決まってるだろう?」
「光栄です!」
「あたし、ついて行けるかな・・・」
「さあ、皆さん、着きましたよ!」
その店は、周りの乱雑なイメージとは違い、老舗感のある雰囲気。店の周囲もキレイに整備されている。服屋というよりは布製品を取り扱いしている店舗という感じだ。
金額の相場が分からないが、以前にミスリルと交換した金貨で大丈夫だろうか?足りなかったらゴルドに助けてもらおうかな?
とりあえず、服を見繕って金貨を出す。
店員は驚いて、一度奥へ引っ込んでしまった。
・・・振り返ると、ゴルドが爆笑していた!




