68話
進化の源、変異種の肉。
先に不味いと分かっていれば大丈夫!
・・・なワケあるかぁぁぁ!!
味?ドブの味だよ!こんちくしょうが!!
決して口を開けないこの状況。開けたら出る。間違いなく、泥の魔物肉が昼に食べたパンケーキと一緒にコンニチワしてしまう!
飲み込まねば!飲み込まねば!と分かっているけど飲み込めない!
何とか!何とか・・・方法は・・・!
そうか!鼻をつまんでしまえば・・・!
・・・駄目だ!籠る!ドブの味が籠る!
負けてたまるか!ここで飲みこまなけりゃ先は無い!ベヒーモスごときにビビってしまった自分を超えろ!皆、オラに力を分けてくれ!!
「んぐ・・・がはっ!はぁっ、はぁっ、はぁ」
「「「「・・・」」」」
「はぁはぁ・・・頑張れ!皆、頑張れ!!」
「・・・ん、はあ・・・死ぬかと思ったわ」
「ブフッ・・・ン!ここまでとは!もしかして、我の血もこんなに不味いのか!?」
「うん!クソ不味い!」
「くっ!勝手に腹切られ、血を飲まれ、挙げ句の果てに不味いのか・・・」
「んんん・・・ん!スーーーッ!これが、これが変異種の味・・・」
「・・・ん・・・やったッス!ウチは乗り越えたッスよ!」
「おい!ゴルド!やばい!白目剥いてる!ゴルドーーー!気を確かに!だから無理するなと!」
「はっ!んぐっ!・・・おや、ジーク様。先程、川の向かい側で手を振っていたのは?」
「おぉぉい!三途の川を渡る寸前じゃねーか!いや、俺、生きてるから!」
「全てを超越する味がしました・・・」
「後はアーシャか・・・」
「ぐえ!」
「大丈夫か!?いいんだ!出してしまえ!」
「ぶえ・・・はぁはぁ、すいません」
「いいんだ!予想以上の味だったからな、大丈夫だ。これを食べなくても死なない!むしろ食べれば死にかける!」
口直しに水をがぶ飲みし、改めて普通の魔物肉を晩御飯として頂く。
「今まではサタンの血が一番だったが、この魔物肉は更に上を行ったな!」
「上じゃなくて下でしょ!?毒を食らう方がまだマシよ!」
「進化の為だからな。我慢するしかないだろ」
「ごめんなさい・・・せっかくのチャンスを」
「気にするなよアーシャ、ゴルドなんて白目剥いて、本当に死にかけた位なんだから」
「幻獣達もこれほどの味だったんでしょうか?」
「ああ。不味い!・・・スティーブだけは平気、いや、むしろ喜んで食ってたけどな」
「スティーブ様が・・・ん?もしや、スティーブ様がたびたび巨大化してたのは?」
「そうだ。確か・・・白銀狼と極楽鳥だな」
「人間にも効果が有るのでしょうか?」
「多分な・・・明日には判明するだろうよ」
「少し怖い気もしますが・・・」
「そうだな、こればっかりは運任せだよ」
俺はパトラと目を合わせ、頷き合う。
実は、進化の内容は自分が無意識に決めているんだ。これを知ってるのは俺とパトラだけ・・・。
もし、肉を喰うだけで己を好きに進化させられると分かれば、邪な輩が超常の力を持ちかねない!
皆を信頼してないワケでは無いが、逆に秘密を保持させるのも危険だろう。
俺とパトラは皆には進化の秘密を知らせない事にしている。
「お?腹の中に熱を感じるな!今回はアタリみたいだ。今日はもう休んで、予定通り、明日から王都へ出発しよう」
「うぅ・・・流石に今日はお酒も飲めません」
「ウチの胸がもっと大っきくなってるかも知れないッス!期待して欲しいッスよジークさん!」
「いいから寝ろ!」
翌朝。
朝早くから起きれたのは俺とパトラとサタンだけ。お互いを見合って、外見の変化を確認する。
まずは俺。背が伸びた!と言っても人並みよりちょいデカイ位だな。グラーフやバートンと並ぶ程だ。肉付きも良くなったか?・・・多少は。
しまった!服が無い!・・・あ、王都で買えばいいか?
次はパトラ。パトラは単純に成長したようだ!小学生位から中学生位・・・まだ子供だ。
「もうちょっと・・・もうちょっとなのよ!!後5歳・・・いえ、せめて3歳分の成長が欲しかった!」
「まあまあ、俺は逃げないから、気長に行こう」
「ジーク・・・ありがとう。でも、逃げるって言葉は止めて!トラウマなのよ・・・」
「あ・・・ごめんごめん!でも、本当に落ち込むなよ。今まで通り、一緒に居られるんだから」
「・・・そうね、焦る事は無いわね」
まだ子供・・・とは言え、もの凄い美少女に磨きが掛かって、普通に好みだ!金髪ゴスロリの幼女から金髪ゴスロリの美少女に進化した!
・・・これは、気を引き締めないと、俺も間違いを起こしかねん・・・。
そしてサタン。
「サタンは・・・ツヤッツヤだな!毛皮に光沢が増したぞ!?」
「フッフッフ・・・分かるか主殿?我、漲っておる!パンパンに脂が乗っておるぞ!まるで金獅子を名乗っていた全盛期のようだ!」
「もしかして、若返ったのか!?」
「いかにも!だが、魔力は更に増加を感じるぞ」
「これは凄いな。魔物を食って若返るとは!」
「主殿、せっかくなので昨日の魔物にも名前を付けるべきでは?」
「そうだな。パトラ、こういうの得意だろ?」
「んー・・・ドブ男」
「酷い!やり直し!」
「・・・ウーズラッカー」
「泥・・・幸運?・・・採用!ウーズラッカーな!」
「パトラ殿、やるのう!」
「ふふん!」
パトラのどや顔。鼻の穴が広がる。不細工。せっかく美少女なのに・・・ただただ残念です。
「おはようございます」
「おは・・・よう、ニーナ・・・だよな?」
「はい!」
「説明するより鏡を見てくれ!」
ニーナは端的に言うと若返った。10歳位は若返ったかな?見た目は20歳位にも見える。
そして、無くなった・・・。
何が?お乳が。
もはや絶壁。髪型と相まって美青年にすら見える。これなら俺を籠絡ってのも難しいだろな。
ちょっと安心とちょっと残念。
「これが・・・私?」
「・・・ニーナ、若返ったのは良い事よ」
「でも、これじゃ、ジーク様に・・・」
「ニーナ?」
「ジーク様に悦んでもらえないぃぃぃ!」
「どうした!?」
「ひぐっ!ひっ!ぐす・・・」
「泣くほどかよ?」
「ジーク!乙女には優しくして!」
「そんな事言われてもな・・・俺、巨乳好きなんて一言も言ってないぞ?」
「ひぐっ!・・・へ?」
「有ったら有ったでいいが、無いなら無いでも俺は気にしないタイプだ」
「あら、そうだったの?」
「むしろ尻にこだわる派だ!」
「堂々と言い切ったわね」
「ほう!主殿は尻フェチか!」
「お尻・・・お尻なら私も・・・まだ、この私にもチャンスは有る!!」
「・・・はぁ、何で俺の好みを暴露しなきゃならないんだよ・・・」
しばらくしてからアーシャに付き添われ、ミーシャが2階から降りてきた。
「ジークさん!やったッス!!ウチはやったッスよ!」
「ん?」
「ほらほら!また胸が大きくなったッス!」
「・・・そうだな・・・」
「パトラさんも羨ましいッスか!?ん?ん?」
「・・・そうね・・・」
微妙な、雰囲気。そりゃな。たった今、胸より尻が好きって話をしてた中で、胸を自慢されてもな・・・。
「後はゴルドか・・・」
「あれ?終わりッスか?ジークさん!終わりッスか?」
「ミーシャ、うるさいわよ!」
「酷いッス!」
俺は2階の客室。ミーシャ達の向かいの部屋へ入って行った。ゴルドはベッドで悶えていた。
「ゴルド、大丈夫か?」
「うっ・・・ジーク様・・・情けない姿を晒し、申し訳無い・・・」
「体調はどうだ?」
「身体は何とも・・・むしろ活力に溢れています。が、頭痛が酷くて・・・」
「二日酔いみたいな感じ?」
「そうですね。頭の中で・・・えっ!?」
「どうした?」
「む・・・ふふふ・・・」
「ゴルド?」
「やりましたよ!ジーク様!」
「どうした!?」
「ワタクシ、魔法を使えます!」
「マジか!どんな魔法だ?わかるか?」
「これは・・・念話でしょうか?・・・説明するより試してみますね」
ゴルドがベッドの上で体育座りをする。
おっ?本当に魔力を込めてるぞ!魔力は頭の部分に集まって来る。
(ジーク様!!!聞こえますか!!!)
「やかましい!!魔力を弱くしろ!!」
「す、すいません!!」
「あぁ、音量にびっくりしたけど、本当に魔法を使えるようになったんだな!・・・体も楽になったか?」
「あ、はい!スッキリしました!」
「魔力が行き場を失って暴れてたんだな」
「そんな事があるんですね」
「俺も一度なったからな。俺の時は魔力を固めて額に持ってきた。次の日、この角が生えてたんだよ」
「あれ?もしや、ワタクシも?」
「いや、大丈夫だ」
「ほっ!」
「ゴルドは人間なんだから、無茶な変形はしないと思うぞ?俺はゴブリン、腐っても魔物だからな」
「そう、ですね・・・皆様は既にお集まりですか?」
「ああ、準備が出来たら降りて来てくれ」
「かしこまりました」




