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60話

明日から人間の街に偵察に出る。目的地はノースティン王国の首都。人間の文化や文明、生活水準の確認だ。

同行者はパトラとゴルド、サタンとミーシャ、アーシャを連れて行く。コロマルとバートンとスティーブはヤマタイ国の防衛に当たってもらう。

不満そうではあったがコロマルはデカ過ぎて目立つ。バートンは国中に顔が割れている。スティーブは熊の獣人という事を誤魔化すのは難しいだろう。ミーシャとアーシャも獣人とバレるだろうが、見た目的に害は無さそうに見えるらしい。二人とも、かなりの戦闘力を誇るのだが・・・。


「ジーク、これが視察の計画よ」

「・・・『旅のしおり』って書いてるぞ?旅行気分満々じゃねーか?しかもブ厚いし・・・」

「ゴルドと相談しながら作ったの。生活水準の把握の他に、唐揚げ屋も始めるんでしょ?」

「始められるかどうかも未定なんだけどな」

「私も賛成よ。初めて食べた人達の表情は見たでしょ?」

「そう。スッゴく喜んでくれてるからな。多分、店は上手くいくだろうな」

「私もノースノートの街しか分からないから、楽しんで視察しましょうよ」

「気を付けるのは王族と貴族だけか?」

「そうね、他は些末な問題よ」

「些末な問題?例えば?」

「金銭感覚や服の趣味。食事の味付けって感じかしら?」

「他に危険は無いか?」

「道中の魔物は雑魚だし、検問とかも無いらしいから大丈夫よ」

「・・・その割にドラゴン素材の防具を用意させられたんだが?」

「万が一よ!あなたもローブと仮面で隠すけど、油断は禁物よ!?」

「そういえば、その仮面、俺はまだ見てないんだが一体、どんな雰囲気なんだ?」

「4種類用意したわ、好きなのを選んでちょうだい」


側に控えてたアーシャがニヤニヤしながら亜空間から仮面を取り出す。

「あれ?6種類あるぞ?」

「あたしとミーちゃんも1つずつ買ってたんです」

「さあ、どれでもいいッスよ!」

「あなた達・・・いつの間に・・・」


明らかに獣人二人の選んだヤツは分かる。犬の面とウサギの面だからだ。・・・ウサギは無いな。可愛い過ぎる。犬の面は悪くないかも。だが、俺が犬の面を持ち上げた瞬間、パトラから殺気を感じたので慌ててテーブルに戻した。他には猫の面、鳥の面、狐の面、そしてタテガミのついた熊?みたいな仮面がそれぞれ並んでいる・・・。


「猫と犬と鳥の面に見覚えが有るんだが?」

「ジークさん、犬じゃなくて白銀狼ですよ!これらは幻獣を模しているんです」

「って事は、この熊みたいな仮面は金獅子のつもりかな?」

「多分そうだと思いますよ?ずーっと伝説のままに隠れてましたからね。若干ズレが出てきたんじゃないですか?」

「ライオンが熊さんになるなんて面白いでしょ?でもまさかソレにするつもり?」

「まさか、ってパトラが選んだんだろ?」

「ソレはウチが選んだッス!」

「おっと、予想外!今のところは狐かな?」

「猫はイヤかしら?」

「ウサギは嫌いですか?」

「ジークさんは強そうな面が似合うッス!」

「・・・あ・・・これ、ヤバい奴だわ・・・」

「「「どうなの!?」」」

「・・・」


個人的には狐がいいな・・・。

極楽鳥は絶対に嫌だ!ウサギもないわぁ。金獅子は金獅子に見えないから無し!白銀狼も悪くないんだが、パトラが怒る。なんで?

残るは猫か?

でも、猫はサタンのイメージが強くなってるんだよな。パトラは人化しちゃって猫ではない。

やっぱり狐かなぁ?


「ジーク様!」

「ゴルドじゃないか!これから店に行くつもりだったんだが、ゴルドがこっちに来るなんて一体どうしたんだ?」

「仮面はお決まりですか?」

「狐か猫か狼で迷ってる」

「猫じゃないの!?」

「間に合ったようですね!こちらをお持ちしました!」


ゴルドが背中の包みから仮面を2つ取り出す。

「魔王の面と古代神の面です!」


魔王の面って・・・俺じゃね?目付きが悪くて緑のタテガミ。更に頬に模様。間違いない。俺だ!

魔王の面は却下!魔王の面で魔王が素性を隠すって、なんのこっちゃ?


古代神の面は悪くない。機械的な・・・いや、ロボットのような雰囲気だ。まるでアレの初号機のようだ!

悪くない、悪くないぞ!?もうこれで決まりだな。


「決まりだな!」

「そうね、これなら文句ないわ」

「ゴルド、いくらだ?」

「もちろん差し上げますよ!唐揚げ屋はワタクシの提案ですからね!」

「そうか?ありがとな!」


俺はおもむろに古代神の仮面を持ち上げる。

「「「「えっ!?」」」」

「・・・えっ?・・・あれ?」

「てっきり魔王の面かと思ったッス!」

「ジークさんにそっくりですよ?」

「素性を隠す為に本人の仮面ってどうなの?」

「「「「なるほど!」」」」

「パトラ、お前まで・・・」

「あぅぅ、忘れてたわ・・・トランプのジョーカーすらジークの顔なんだから、仮面もそれかとおもっちゃったわ」

「お前が描いたんだろうが!」

「そうだっけ?」

「それに見てみろよ?まるで初号機じゃね?」

「・・・ふふふ、これも悪くないわね!」

「この古代神ってのは有名なのか?」

「人間に知恵と心を与えたらしいッス」

「おとぎ話ですがね」

「名前はあるのか?」

「古代神、ジークハルトですね」

「ジークハルト?・・・ややこしいな・・・」

「ジーク!面白いわ!ジークハルトの仮面にしましょ?」

「見た目は気に入ってるんだが、名前がな・・・」

「ただの仮面よ?そこまで気にしなくてもいいんじゃない?ミーシャが知ってる程、皆に周知されてる存在なんでしょ?そこら中に有るんじゃないの?」

「いえ、不思議な事にジークハルトは決まった顔が無いのです。しかし、人工的な顔という独特な特徴が有るので誰でもジークハルトだとすぐに分かるのです。つまり、ジークハルトの仮面は様々、無限に種類が存在します」

「ちなみにどんなおとぎ話なんだ?」

「おとぎ話とはいえ、現実味があるんですが・・・」


昔々の事、この大地には動物、魔物、獣人、人間達が暮らしていた。その頃の獣人や人間は動物と変わりが無く、本能のままに暮らしていた。ある時、海から船が流れ着いて来た。その船は櫂が無いのに前に進み、鉄で出来ているのに水に沈まず、大きな音をたてながら海を割って現れた。船からは作り物のような顔の、1人の男が降り立った。男は道に迷って違う世界から来たらしい。人間達は男に食べ物を与え、獣人達は男に住む場所を与えた。逆に、男はこの世界に暮らしていた獣人や人間達に言葉と心を教えた。助け合って生きる大切さを皆に教えてもらい、助け合って生きる大切さを皆に教えてあげた。人間と獣人は男にジークハルトと名前を付けて神様のように大切に祀ったといわれている。

めでたし、めでたし。


「リアルね」

「リアルだな。ほぼ、実在確定だな」

「そうなんですか?もしかして心当たりが?」

「知り合いって事じゃないんだけど、海の船は分かるわ」

「ボートだなエンジン付きの。言葉とかも、わざわざ教えたんじゃなくて、普通に使ってたんだろ?」

「心を教えたっていうのは過剰な装飾ね。元々持ってた心を定義しただけじゃない?」

「しっかし、神様の顔が人工的ってのは不思議だな。意外と本物の古代神も仮面を被ってただけかもな?」

「・・・素晴らしい考察ですジーク様!是非とも今の考察を研究所へ持ち込みましょう!」

「勘弁してくれ、ただの思い付きだよ」

「いえ、古代神ジークハルトが実在した可能性が高まったのですよ!?これは黙っておくには心苦しい!そして・・・やはりジーク様は神の世界からいらっしゃったのですね!?」

「「違います!」」

「隠しても無駄ですよ!?水の栄養の話や氷室の知識。人の人身掌握術や規格外の戦闘力・・・どれをとっても神の力と言っても過言では有りません」

「過言だよ。俺やパトラのいた世界は知識と道具が発達した世界・・・この世界も500年経ったら同じくらい発展するだろうよ。知識を平等に分け隔てなく、広く、深く浸透させれば誰でも俺くらいにはなる可能性が有るんだ。戦闘力だって魔法に頼らなくても本当は生きて行けるんだからな」

「そうね、元の世界の戦争なんて、私やジークの力でも生き残るのは難しいわよ。あっちの世界には魔法なんて存在しないのにね」

「「「・・・」」」

「ま、戦争なんてした事ないけどね」

「テレビや新聞やネットの知識だしね」

「知識を平等に・・・」

「誰でも生きて行ける・・・」

「魔法が存在しない・・・」

「皆、あっちの世界なんて気にしてもしょうが無いだろ?どうしたんだ?」

「ジークさんはこの国を発展させるんスよね?」

「そうだよ・・・待て!そんなにすぐには変革させないぞ?」

「ジーク様、それは信用出来ませんね。ジーク様はいつもいつも予想の斜め上を進み続ける」

「いっつも大事にしたがるッス」

「さも、何でもないような顔をして」

「同感ね」

「パトラまで・・・ちょっと加減を間違えてるだけじゃないかよ・・・」

「なんだか、今回の遠征も雲行きが怪しい気がしてきたわね?ジーク!自重しなさいよ?」

「・・・はーい・・・」

「パトラ様もお願いしますね」

「ぐっ・・・なんで私まで・・・」

「獣神ッスよ?神ッスよ?暴れたら大惨事ッスよ?」

「なんで暴れる前提なのよ?」

「気に入らなければ皆殺し。パトラさんのイメージですよ」

「どこの暴君よ!?」

「殺しはしない・・・と思う・・・」

「弱い!フォローが弱い!」

「パトラ様!くれぐれも世界を滅亡させないようにお願いします!」

「もはや獣神じゃなくて破壊神の扱いね・・・」

「破壊神・・・ぴったりな雰囲気ですね!」

「破壊神パトラ・・・ヤバいッス!格好いいッス!」

「ジーク様!パトラ様の扱いは慎重にして下さいね」

「さすがにパトラが可哀想になってきたからそろそろ出発にしよう」

「魔王ジークさんと破壊の神パトラさん。無敵ですね」

「違うから!破壊の神じゃなくて獣の神だから!」


しばらく、パトラをおちょくりながらノブターの工房まで歩く。


「ノブター、調子はどうだ?」

「これは魔王様!完璧ですわい!儂の魔法も掛けてあるぞ!」

「ノブターの魔法?どんな魔法なんだ?」

「自動修復じゃ!」

「すっげぇ!マジで凄い魔法だな!」

「ただし、修復には装備者の魔力を使うんじゃ。だから、儂の作る作品の全てに魔法を掛けるワケじゃないがな」

「俺達の魔力なら問題無いな」

「そういう事じゃな」

「しかし、こんなに早く作れるモノなのか?」

「手間が掛かるのは赤毛の嬢ちゃんの軽鎧だけだからな。ローブは皮をなめして、二枚に重ねる、間に鱗を挟んで終わりじゃ!」

「簡単に言ってるけど大変だっただろう?」

「ドラゴンの素材なぞ一生に一度の贅沢かも知れん。のんびりなんて出来るか!」

「贅沢って・・・」

「ワタクシの防具は出来てますか?」

「ゴルドさんもローブでいいだろ?出来とるぞ」

「ありがとうございます」


さっそく俺はローブを羽織る。そして古代神の仮面を装着。パトラは自前の服を持ち込んでいたようだ。ミーシャの軽鎧は格好いいな!これら全部を作り上げたのか!?流石は王国内でも有数の鍛冶師だ!


「ノブター!流石だよ!凄い腕だな!」

「おう!魔王様に喜んで貰えて光栄極まる!・・・女神様はいかがですかのぅ?」

「素敵よ!ノブター、見直したわ!」

「おお!女神様がこの儂に微笑んで・・・儂は、儂は・・・」

「病気ッスかね」

「病気ですね、心の」

「不治の病ですね」

「末期症状は狂信者になるぞ」

「既に末期では?」

「パトラ親衛隊か?」

「嫌よ!イケメンに限るわ!もしくは美少女軍団!」

「こっちも末期だった・・・」


なんとノブターは全員分の防具を完成させてしまっていた!しかも自動修復機能付き!更に手間賃無料!なんとお得な事だろうか!

やるな!髭だるま!


「満足して貰ったみたいでなにより!では儂は寝るぞ!」


言うやいなや、大の字に倒れ、イビキをかき始める。一瞬、脳卒中か!?とも思ったが大丈夫そうだ。徹夜で防具を作ってくれてたみたいだな。


俺とゴルドとアーシャがローブ。パトラがゴスロリファッション。ミーシャが軽鎧だ。これで防具は完璧。武器は普段から使っているモノが有るので大丈夫。後はテントと食料とお金かな?


「ゴルド、ミスリルの換金を頼む」

「その事でワタクシからも提案が有るんですが」

「どうした?」

「ジーク様はたしか石以外もミスリルに変質出来ますよね?」

「大体はな」

「木の葉や草花なんかも?」

「・・・そうか、芸術品として売りに出すのか?」

「はい、重さ以上の価値が出ると思います」

「武具への転用も躊躇するだろうな・・・良し、採用する!」


俺は3枚の葉と一輪の花をミスリルに変質させた。

「素晴らしい!すぐに買い手が・・・」

「オークションなんてどうだ?」

「オークションとは?」

「公開の競売だな。品物を欲しい客同士で値段を競争させるんだ」

「ふむ・・・面白そうですね!では木の葉1枚と一輪の花をオークションにしてみましょう!2枚の木の葉は先に現金に代えますね」


ゴルドが奥から持ってきたお金は異常に多い気がする。

「こんなに高くするのか!?」

「王族に売り付ける予定ですから!」

「・・・なるほど!オークションを視野に入れて。だな!」

「そういう事ですよ」


ゴルドがいい笑顔で目を光らせる!


「俺は助かるがな、身の回りの安全には気を付けてな」

「承知しました。また信者の方にお願いしてもよろしいでしょうか?並みの冒険者より腕が立ち、礼儀正しいので助かるのですよ」

「あいよ、むしろ使ってやってくれ。出番が足りなくて寂しそうだからな」

「むしろ、ゴルド商会で雇えれば良いのですがね」

「それはマズイな。奴等はとにかく尽くしたいらしいからな。対価があると逆に困るのだろうよ」

「そうですか、残念です」

「それとも護衛団にすれば管理しやすいか?」

「・・・それは・・・エリート集団を作ってしまっても大丈夫なのですか?」

「評価が適正なら問題無いだろう。後は髪が生えた連中なら是非雇ってくれ」

「無理ですね!髪を生やして貰った人達はジーク様に全てを捧げる狂信者です。管理出来る自信が有りませんね」

「おぅふ!何とか奴等の仕事を増やさねば・・・」




信者達の信仰心が強過ぎて扱えない・・・。


・・・何か嫌な予感がする・・・。

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