6話
とうとう俺もこの世界に馴染んで来たな。魔術?魔法?どっちでも良い!超常の力を使いこなして見せるぜ!あわよくば人が羨む様な効果が望ましいな!異世界で無敵の強さで世界を支配してやろうか!?それともたくさんの女性に囲まれてハーレムとか!?どうなる!?どうする!?
・・・落ち着け俺!冷静に冷静に。ここで高望みは禁物だ。ゴブリンが凄い魔道具を持ってる!なんて皆にバレたらそれこそ大惨事になるだろう!盗まれたり、脅されたり、はたまた強奪だって考えられる。ここは慎重に、自重しながら・・・。
「試さないの?」
隣で猫の魔物、ケットシーのサチが急かす。
「ちょっとトリップしてました。」
「がっつり興奮してるもんね。はっきり言ってゴブリンが興奮してる姿は気持ち悪くて忌避感しかないわよ?」
「そりゃそうだ。自覚は無いけども。」
「一応の注意よ?何の術式か分からないんだから私には向けないでね?それと力み過ぎない事!効果が解ってから徐々に慣れていきましょう?」
「オーケー!ノッてきた!」
「・・・大丈夫かしら?」
俺は左手首に模様の入った腕輪を装着する。ゴブリンは魔力は持っているのだろうか?手首を意識すると、筋力ではない何かが身体中を駆け巡り、手首に集約される!すると腕輪がほのかに暖かく感じた。
スッと力が抜けた感覚が残ったが、何も起きない。・・・何も起きない。
「ん!?・・・あれ!?」
「はい、残念!どうやら効果を及ぼす対象が必要な様ね。」
「危ないヤツかな?」
「分かんないけど今度はそこの木に向けてみましょう?実験よ、実験!」
「そ、そうだな!」
俺はもう一度集中力を高めた。
「ふんぬ!」
何と!木の皮が剥がれた!
「ふぅ、ふぅ、・・・どういう事かね?」
「もしかして・・・。今度は地面に向けてちょうだい!」
「無理っす!ちょっと休ませて!」
「初めての魔法だもんね?ゴブリンだもんね?魔道具2回でへばるなんて流石ね!」
「後でデコピンな!」
動物愛護団体に叱られるかも知れない。いや、魔物だな。魔物愛護団体ってあるのか?
少し休んだら体が大分楽になった。5分位かな?
ゴブリンだから魔力は少なそうだけど、どうなんだろ?
「サチなら何回使えそう?」
「私は多分50は越えると思うわよ?私の想像通りの効果ならね。」
「50回!?・・・ハッタリって訳じゃなさそうだな。」
「ケットシーは魔力と機敏さが売りだからね。あっ、後は誰もが羨む美貌と溢れる知性と輝く様な気品と海よりも深い愛情と・・・」
「・・・まだ続くの?」
「とにかく!こう見えて私はレアで憧れの的なのよ!?」
「街から追われたけどな。」
「泣いちゃうわよ!?トラウマなんだから!」
「あ、そう?ネタかと思った。」
「使い魔の宿命よね。召喚師が死ぬと制御できる人が居なくなったって見なされるの。ただの魔物扱いよ?会話すらしてくれなくなるの。」
「扱いどころか、俺なんて正真正銘ゴブリンっていう最下級の魔物ですけども!?」
「それが嫌なら進化でもしたら?」
「えっ!?進化って何?」
「魔物は上位種族に変化出来る事があるの。」
「どうやって?ゴブリンから脱却出来るかな!?」
「進化の仕方は分かんないのよね。知ってたら皆で進化してるわよね?ちなみにゴブリンはジェネラルゴブリンとかキングゴブリンとか図鑑で見たけど、もしかしたらあなたもスゴいゴブリンになれるかもよ?」
悲しくなって来た。俺の現在はゴブリン。将来もなんとかゴブリン。どこまで行ってもゴブリンらしい。
気を取り直して再び腕輪を装着。今度は地面に向けて魔力を放つ。
ジャリジャリ、ズリズリと音を鳴らしながら土が抉れる!深さ30センチ程、直径50センチ程の穴が出来ている!
土を汲み上げる魔術っていうよりは物を上下左右に押し退けるイメージかな?
「確定ね!穴掘りの魔道具よ。・・・確か子供向けのおもちゃだったと思うわ。」
俺は泣いても良いだろうか?やっと使えた魔道具が子供用のおもちゃって・・・。しかも2回の行使でダウン?俺が不甲斐ないのか、ゴブリンが悪いのか、数奇な運命を恨めばいいのか・・・。
「そんなにがっかりしないでよ。子供用のおもちゃって言ったけど、庶民の子供じゃなくて貴族様の子供よ?魔道具なんて子供が皆持ってる訳じゃないわ。」
「慰めの言葉をありがとう。」(棒読み)
俺は遠い目をして呟いた。
「俺はこの世界で生き残れるだろうか?」




