57話
「ダイクン、サイクン!いるかー?」
家の前から大声で呼び掛ける。ダイクンとサイクンの家にはサタンも住んでいる。コロマルも住んで居たんだが、昨日、進化して巨大化してしまった為、家の中には入れずに居る。コロマル自身は屋根と壁が有れば十分と言っているが、ここは一度、話をしておくべきだろうと考えていた。
ダイクンとサイクンからも俺に話が有るそうなんだが、一体、どんな内容何だろうか?
「ジーク様、おはよう」
「パトラ様も一緒なんだね」
「おはようさん」
「二人は二日酔いは無かった?」
「「僕達はまだお酒を飲めないよ!?」」
「そうだったわね、年齢なんて気にしてなかったわ。最近はいつも年上の弟子達を連れてるから忘れてたのよ」
「もう、いっぱしの師匠になってるもんな」
「「えへへ・・・」」
「さて、まずはコロマルの住みかの話からか?」
「ううん!先にこっちの話にした方がいいよ」
「一緒に解決出来るから」
「一緒に解決?何か面白そうだな」
「ジーク様の家の事なんだけど」
「家を作り直すよ!」
「え?何でだ?今の所、不便は無いぞ?」
「僕達も技術に自信がついて来たんだ!」
「今の家は即席だったからね」
「即席で、あのレベルとは・・・恐れ入るわね」
「そうだな、アレで十分だぞ?」
「ジーク様!僕達に腕試しをさせて欲しいんだ」
「格好良い家を作ってみたい!」
「なるほどな!俺に仕えてからはずっと質より量の仕事だったもんな・・・腕試しは構わないが、どんな感じにするんだ?」
「・・・言いたく無い!」
「はぁ?何で?俺の家だろ?」
「楽しみにしてて欲しいんだ!」
「ジーク、ある意味サプライズにしたいんじゃない?私は楽しみよ?」
「・・・家を?結構な賭けじゃねーか?」
「そう?ダイクンとサイクンに任せておけば大丈夫だと思うわよ?今までだって、基本的にはお任せでしょう?」
「・・・そうか?まぁパトラが良いならいいか」
「「やったー!」」
「場所はどうする?今の所か?」
「うーん・・・出来れば、温泉の近くがいいかな?あそこなら建物が少なくて見晴らしが良いと思うよ?」
「分かった。なら、好きにやってごらん?」
「今までより少し大きく作るからコロマルも入れるかもね」
「それは助かるな!基礎っていうか、地ならしは手伝おうか?」
「・・・整地はこっちでやるから、出来上がったら固めて欲しいかな?」
「あいよ!俺の家なんだから遠慮すんなよ」
「ラッキー!後さ、人手を借りたいな」
「おう、俺の名前を使っていいから適当に信者達でも集めてくれ」
「ぬふふふ・・・」
「ん?サイクン、その不気味な笑みは?」
「すっっっごいの作ってあげるよ!」
「ああ!楽しみにしてるよ!」
「期間はどの位掛かりそうなのかしら?」
「20日は掛かるかな?」
「そんなに?今のお前達なら、家一軒を2日で作れるだろ?」
「家っていうか・・・ま、まあ、準備に時間が掛かりそうだからね!」
「何か怪しいな?」
「ジーク、良いじゃない!好きにやらせてあげましょうよ?私の感覚なら20日で家が建つ方が異常なのよ」
「・・・あぁ、そうか・・・すっかりこの二人に染まってたよ。そもそも、2日で家が建つのが異常だったな」
「そういう事よ」
「それだけの手間を掛けるんだ、期待しても良いのかな?」
「「任せて!」」
「それから・・・その家が気に入ったら、お前達は独立しないか?」
「独立?僕達が要らなくなったの?」
「まだまだ、やりたい事が有るんだけど?」
「いやいや、ヤマタイ国には居て欲しい!奴隷から解放して、会社を作るんだ!」
「カイシャって何?」
「数人・・・お前達と弟子達の共同で仕事を請け負うようにするんだ」
「・・・今までと同じでしょ?何か変わるの?」
「お金を稼げる!」
「「おお!」」
「もちろん、弟子達にも払えよ?後でゴルドやバートン達と相談しながら、受ける仕事の料金や払う給金を決めような」
「分かったー!」
「燃えて来たね?兄ちゃん!」
「先にジーク様の家だよ!?」
「分かってるよ!僕も頑張るよ!」
「あははは!張り切り過ぎてケガすんなよ!?」
「「分かったー!」」
軽く手をヒラヒラと振りながら帰る。
斜め向かいが俺の今の家。新しい家も近くの予定だけど、こんなに気安くは行き来出来なくなるかな?関係ないか?走って3分だしな。
おやおや、二人も走って街の方に向かって行ったぞ?早速、人数をかき集めるのか?気合いが入っているようで、こちらも楽しみになる!
帰って来たミーシャが昼ご飯を作ってくれた。ザリーガの唐揚げとリンゴを擦り下ろしたソースかな?アーシャも料理に見入っているみたい。
「ミーシャのオリジナルかな?」
「そうね、私は教えてないわよ?」
「センスいいな!美味しそうだ!」
「リンゴの皮も使ってるのね!色合いもキレイよ」
「ジークさんとパトラさんに褒められると3倍くらい嬉しいッスね!冷める前に食べて欲しいッスよ!」
「「「いただきます!」」」
旨い!素晴らしい!コレなら毎日でも食べられそうだ!見た目もキレイでフカフカのザリーガの肉と程よい酸味が絶妙だ!
「美味しいぞ!全然、飽きが来ない!いくらでも食べれそうだ!」
「やったッス!今度は色々な食材を組み合わせて見ようと思うッス!」
「そうね、今までは、基本的に一品を煮るか焼くかだったわね。食べ物も豊富になって来たし、私も久しぶりに作ろうかしら?」
「おお!・・・タカスサチの頃の得意料理は?」
「サチね・・・ジーク、今から私は、パトラとして生きるわ」
「どういう事ッスか?」
「タカスサチはもう居なくなっちゃったのよ。私はパトラ。獣神パトラよ」
「知ってるッス」
「ミーシャ、少し黙っててくれ。パトラがそれを望むなら構わない・・・が、前の世界に戻る気が無くなったって事か?」
「あなたが居てくれるなら、私はパトラとして生きて、パトラとして死んでもいいわ!」
「・・・俺、ゴブリンだぞ?」
「そうね。出来れば、進化して違う種族が良いんだけどね?とりあえずはゴブリンでも満足してあげるわ!」
「パトラ・・・」
「それとも、あなたは帰りたいの?」
「今は・・・どうだろ?自分でも分からんな」
「それでもいいわ。今決める事でも無いしね!でも、私はこの世界を楽しむ事にしたわ!」
「・・・この世界を楽しむ・・・か・・・」
「面白いでしょ?」
「・・・ぶふ!あっはっはっはっは!!そうだな!パトラが居て、ミーシャもアーシャも居る。コロマルやサタンやゴルド、スティーブ、他にもたくさんの仲間が居る!料理も旨いし、何で前の世界に帰りたがってたんだろ?家族はキモいアニキだけだし、仕事はキツいし!」
「あら!?この世界でも仕事はしなさいよ!?」
「「仕事!?」」
「ん?なんで二人してびっくりしてんの?」
「仕事って・・・魔王ッスよね?」
「命令一つで何でも出来るんじゃないですか?」
「・・・それはつまらん!」
「そうね!つまんないわ!」
「つまらんって・・・」
「俺はとことん楽しむぞ!この世界を!その為には、魔王だからって座ってるだけなんて願い下げだ!人間の街も楽しみだし、ミーシャやパトラの料理も楽しみだ!アーシャと酒を飲むのも楽しみだ!全部やる!好き勝手に生きてやるよ!」
「流石、魔王ね・・・ふふふ」
「はっはっは!はぁっはっはっは!!」
「ふふふ・・・」
「「ヤバいッス」」
清々しい気分だ!最近は皆を守らないと、とか、食べ物どうしようかな?とか、人間と獣人の関係とか・・・色々考えてた。
何て、くだらない。
別にいいじゃん!最低限の安全性が有れば。食べ物はもう、どうとでもなってるし。ヤマタイ国の中なら人間と獣人は仲良いし。
俺はこれから好きに生きる!
「ずいぶんと晴れやかな顔ね?」
「自分でも気付かない内に重荷を抱えてたな」
「そうね」
「俺も、ジークとして生きる事にするよ」
「職業、魔王ね」
「手始めに・・・」
「何するの?」
「美味しいご飯だ!」
「「「ん?」」」
「ノースティン王国を乗っ取る!」
「「「マジで?」」」
「まずは丸裸にしてやろう!」
「魔王覚醒ね」
「魔王の所業ッス」
「ジークさん・・・戦いになるのですか?」
「多分、ほとんど戦わないな」
「・・・戦わないで乗っ取る?どうするつもりなんです?」
「いくつか作戦を考えないとな!経済、料理、物流・・・」
「ふふっ!ジーク!チートね?ザ・異世界チートね!?燃えて来たわ!!」
「・・・良く分からないんですが・・・」
「ジークさんとパトラさんが本気になってしまったのなら・・・ノースティン王国なんて、目じゃなさそうッスね?」
「ミーちゃん、どうしよう?」
「大丈夫ッス!二人を信じるッスよ!」
「・・・うん。そうだね!二人とも楽しそうだしね!」
さてさて、まずはノブターに防具を作らせる所からだな!腹も膨れたし、また、ゴルドの所に行ってみるか!
「ゴルド!ノブターは治ったか!?」
「は、はい。なんとか・・・」
「おお!魔王様と女神様!さっきはすみませんでした!このノブター、お二人の為に身を捧げますぞ!?」
「「信者!?」」
「今さらでしょう?上手く使ってあげて下さい」
「大丈夫か?王国でも名うての鍛冶師なんだろ?有名人がヤマタイ国に住むのか?」
「ギルドマスターや特務隊隊長を配下におさめて今さら、ですか?」
「・・・ま、いいか!ノブター、まずはドラゴンの素材を確認してくれ」
俺とパトラ、ゴルドとノブターで氷室の方へと歩いて行く・・・おっと!氷室の奥に大勢の人が集まってるぞ?なんだろ?
「あの人だかりはなんだろ?」
「ジーク様のお・・・家では?先程、ダイクンとサイクンが集合を掛けてましたよ?」
「今日から作業を始めてるのか・・・それにしても、人、多くね?」
「当たり前でしょう?ジークと私の家なら信者のほとんどが手伝うと思うわよ?」
「皆・・・暇なのか?」
「普段は狩りと建築と戦闘訓練くらいですからね。治安も良いし、お金を稼ぐ必要もありませんから・・・」
「これからはそうも行かなくするけどな!」
「おや?何だか素敵な表情ですね!?面白い話ですか!?」
「ふふっ!近々、ノースティン王国を乗っ取る予定だよ!」
「・・・はぁっはっはっはっは!とうとう、踏み出しますか!?ワクワクして来ましたよ!?」
「気が早いよゴルド!」
「いや、失礼!ジーク様の国落とし!楽しそうでしてね!」
「まずは、人間の街の下見だな!・・・って事で、ノブター!このドラゴンの素材で俺とパトラ、後、獣人の女の子二人分の防具を頼みたい!」
「こ、これが・・・ドラゴンの・・・す、少し待ってくれ・・・」
流石に仕事となると目付きが変わったようだな!
さっきまではただのキモい変態信者だったから、少し安心したよ!
ノブターは素材の長さを計り、固さや厚さ、弾力を確かめる。結構な時間を掛けて確認作業を続けていた。
「待たせた!余裕で10人分は作れるぜ?魔王様と女神様の希望はあるかい?」
「俺は動き易い格好がいいな」
「私もよ!ついでに可愛くお願いね」
「もちろんですとも!女神様の美貌を損ねるワケにはいきませんとも!魔王様の武器はあるのかい?」
「ああ、ノブター・・・前にギルマスのグラーフに作ってあげたグレイブは覚えていますか?」
「もちろんだ!儂の自信作よ!」
「それをジーク様が使っているのです」
「へぇー!グラーフが良く手放したな!」
「ミスリルのグレイブをジーク様が用意されたんですよ」
「ほう!後で見せてもらおうかな?」
「そして、代わりに切れ味鋭いグレイブと交換した。というワケだ」
「その布を巻いた長物がアレだったのか!一度、確認させてくれないか?」
「・・・驚くなよ?」
「驚く?なんで?」
「今は『フリード』という名前が付いてる」
「え?どういう事だ?」
「こういう事だ!」
オリハルコンに変質させたグレイブ、フリード。
普段は布で隠すようにしている。俺の魔法の秘密に直結するからな!俺は布の巻き取る。どや顔でノブターの方を向くと・・・。
・・・ノブターは白目で気絶していた・・・。




