55話
バトルジャンキーで獣神で元日本人で見た目10歳くらいの金髪美少女パトラ。
それが俺の婚約者になった!
自分でも驚く程、すんなりと結婚の約束をしてしまったモノだ。
もちろん後悔は無い。
むしろ、あのパトラがすんなりと承諾した事の方が驚きだったくらいだ。
ミーシャは何と言うのかは心配だが、俺からの求婚なのだからパトラには何も言えないだろうな。
ま、パトラが成長したら。という制約が有るので、しばらくは今まで通りに過ごす事にしよう!
「さて、飲み直すか!」
「ジークさん!一緒に飲みましょう!」
「おお!スティーブじゃないか」
「どうやら体が大きくなってお酒にも強くなったようです・・・いや!そんな事より!とうとうパトラさんと結ばれるんですね!?」
「なんか恥ずかしいな」
「お似合いですよ!とっても!」
「まだまだ先の話だけどな!」
「パトラさんの気持ちは分かっていましたが、金華猫の姿では想いを遂げる事は出来ませんからね。人の形になれて良かったですよ!」
「パトラに聞いてたのか?」
「え?いやいや、見てれば分かるでしょう?」
「・・・」
「あれ?気付いて無かった?・・・ホントに?」
「・・・うん」
「だって、パトラはジークさん『だけ』に優しくしてましたよね?ジークさん『だけ』に」
「・・・んー?そうかな?なんやかんやで手加減したり、皆の為に動いたりするぞ?」
「手加減?・・・手加減?」
「・・・もしかして、うちのパトラが何か?」
「・・・いえ」
「スッゴい間が有ったんだが?」
「何も・・・有りません・・・」
「・・・」
「・・・」
アイツはスティーブに何を?
「あ、ジ、ジークさん!ヤマタイ国の事ですけど!」
露骨に話題を逸らされた。
「どうした?」
「獣人も集めていいですか?」
「もちろんだよ!いくらでも・・・は、ちょっと危ないか?」
「何か制約でも作りますか?」
「制約?例えば?」
「犯罪の経歴の無い者に限定するとか、働ける者に限定するとか・・・」
「それは無い。犯罪歴は内容による。食べる物が無くて盗んだとかなら問題にしないし、働ける者や働けない者も関係ない!」
「ほっ・・・」
「そうだな・・・強いて言うなら、人間を殺す程憎んでいるヤツは難しいな」
「殺す程・・・ですか?」
「そうだ。家族を奴隷にされたとか、かな?」
「なるほど・・・今、ヤマタイ国にいる者達は?」
「奴隷から解放された者達とは、一度話し合いをした方が良いのかも知れないな。皆の気持ちが俺には見えて来ないからな」
「ああ!それは簡単ですよ!」
「そうなのか?」
「はい!魔王のお膝元なら人間もデカイ顔を出来ないから安全だ、とね」
「・・・そうか。だが、もしも・・・」
「安心して下さい!僕が信頼させます!僕がいた村や奴隷解放の話を聞けば分かってくれますよ!何より、皆が恨んでいるのはノースティン王国の王様や王族、貴族です!・・・人間至上主義さえ無ければ人間とも上手くやっていけるハズです」
「分かった。スティーブを信じよう。だが無理強いはダメだ。来る者は拒まず、去る者も見送ろう。自由に自由を楽しむ国、そして、優しい国にしたいんだよ」
「理解していますよ。それが難しい事も」
だが、俺達ならきっと出来る。
日本の国会みたいな感じより、学校の生徒会的な所から始めよう。
今でも生活は何とかなっているんだ。少しずつ、少しずつ国の在り方に近付いていければ良い。
「そうだな。まぁ、やってみるしか無いけどな」
「後、ヤマタイを国として成立させるにはお金が必要では?」
「それについては『税金』を集めようと思う」
「ぜいきんですか?何の事でしょう?」
「お金を集める。そして、そのお金はヤマタイ国の為だけに使う」
「それは・・・ノースティン王国の王様のやり方では?」
「勘違いするんじゃないぞ?税金とは国の物であって、個人の物にはしない」
「ジークさんがもらうワケでは無い、と?具体的にお願いします」
「まず、国を運営する者達を選出する」
「はい。ジークさんですよね?」
「違う。むしろスティーブ達だ。スティーブやグラーフやバートンが初期メンバーとなる」
「あれ?ジークさんの役割は?」
「俺は国の象徴として普通に生活する予定だ。選出されたメンバーは『議会』として、税金を使って法を作り、法を守り、民の為に働く」
スティーブが俺の斜め上を睨みながら考えている。
今は議会が生徒会のレベルなら、俺は先生の立場で良いだろう。
「それでは、ジークさんが・・・ないがしろにされてしまうのでは?」
「それでいいんだ。このヤマタイの国に王様はいない。俺は・・・そうだな、相談役や戦力として使ってくれ」
「つまり、前の獣人の村の様に?」
「その通り!だが、流石に今度は俺も手伝うし、ワガママも言う。その分、皆にも協力してもらうが、もちろん拒否してくれても構わない」
「では国の代表者はどうなるのですか?」
「俺と誰か。その相手次第となる。例えば、獣人相手なら俺とスティーブ。ノースティン王国が相手なら俺とスティーブとバートンになるし、人間のギルドからの交渉なら俺とグラーフ・・・じゃなくてメアリーか?ま、時と場合で変える必要が出てくるな。そのうち、俺は出番が無くなるのが望ましい」
「それは・・・相手の信頼を裏切るのでは?」
「コロコロ変えるワケじゃないんだ。簡単に言うと、それぞれの専門の窓口を作る。という事だ」
「・・・なるほど・・・では、一番大事な所はどうしますか?」
「というと?」
「選出メンバーの決め方です」
「・・・流石だ!スティーブ!流石、俺が見込んだ男だ!そこが一番重要なんだ!・・・そう、選出メンバーが国の代表者となるワケだから、国の皆が納得出来る人が望ましい!だから、メンバーを選出する方法は・・・」
「・・・方法は?」
「選挙だ!」
スティーブは口が半開きだ。
今の話を理解するのが大変なんだろう。
「せんきょ?ソレはなんです?」
「最初だけは候補を俺が決めるが、次からは自分から候補になってもらう。これを立候補という」
「立候補した人から代表者を選ぶんですか?」
「その通り!そして、国民の皆に選ぶ権利を与える」
「皆?全員ですか?しかし、力の強い者が無理矢理を押し通すのでは?」
「そうだな。だが、逆に力が必要な部分もある。敵と戦う、もしくは国を敵から守る係なら、戦う能力が高い者が適しているだろう。国の経済を守る係なら間違い無く国民に否定されるだろうがな。否定された事を恨む場合や選出に納得しない場合は俺の出番だな」
「・・・すいません、余りに画期的過ぎて・・・三日間くらいの時間をもらえますか?」
「もちろんだ。俺も疑問に答えるし、パトラやサタンに聞いても良いぞ」
「あの二人も?・・・どういう事ですか?」
スティーブには伝えるか・・・。
「俺とパトラとサタンは・・・何と言うか・・・異世界から召喚されたんだ。これは内緒で頼む。知っているのはゴルドとミーシャ、アーシャだけかな?」
「・・・ジークさんの規格外っぷりはそこからですか?」
「知識はな。逆にこの世界の事が分からないんだ」
「だから人間の街に行きたがっているんですね」
「そうなんだ!それでパトラに相談したら、ドラゴン素材の防具を用意したら許可する。って言われたんだよね」
「・・・やっと理解出来ましたよ!ドラゴン討伐前にパトラさんに無理矢理・・・あっ!」
「無理矢理?無理矢理なんだ?」
「・・・聞かなかった事にして下さい!」
「ものすごーく気になるんだが?」
「本当に、本当になんでもないんです!パトラさんには絶対に聞かないで下さい!お願いします!」
怖い怖い怖い!何?何があったの?
スティーブ、近い!
真剣な眼差しで急に接近するワンボックスカー程の大きさの熊の獣人。
「分かったから!」
「絶対にダメですよ!?」
「それは・・・前振り?逆に?」
「いや、ネタじゃないですよ!?本当に勘弁して下さいよ!?」
「・・・まぁいいや。パトラが怒ると困るし。とりあえずは国の運営の勉強だな」
「は、はい!色んな意味でお願いします!」
「・・・こちらこそよろしく頼む」
色んな意味ね。
ヤベえ!メッチャ気になる!
そういえばドラゴン討伐する時は皆不自然だったよな?
誰1人として引き止めるとか、心配する事が無かったんだよね。
・・・全ては・・・『金色のヤツ』が?
・・・終わった事だからいいか?今さら揉める必要も無いか?
確かに、そんな事より国の運営だな。税金より、仕事の割り振りを考えないとな。
軍事、司法、金融、娯楽、生産加工、外交、住人の管理と建物の管理かな。
うん。忙しくなりそうだな・・・。
夜も更けて来たしそろそろ眠ろうか。
・・・難しい事を考えていると眠くなるよね?
酒も良い感じに回っている。フラリと立ちあがりスティーブに肩を貸してもらう。
完全に酔っ払ったな。真っ直ぐ歩けない。
頭は大丈夫なんだが、足もとにキテる。
・・・コレ、帰ったら怒られるパターンじゃね?
「いやー、すまんな!自分でもコレほど酔ってるとは
思わなかったよ!」
「さっきまで普通に話をしてて、立ち上がったらフラフラしてましたからね、びっくりしましたよ!?」
「結構飲んでたからな!しっかし、スティーブは酒が強いな!」
「僕も自分で驚いてますよ!前は3杯くらいで立てなくなってましたからね」
「ほら、周りでも起きてる奴はほとんど居ないぞ?」
「皆、朝から張り切ってましたからね!宴なんてそうそう無いですから」
「生活にゆとりがあれば、もっと楽しく過ごせるんだけどな」
「何行ってるんですか?魔物に怯えず、氷室とザリーガの養殖に畑のおかげで食糧も充実してるんです。これ以上が必要ですか?」
「必要なんだ・・・もっと、もっと楽しく暮らしたいんだ」
「・・・凄い国になりそうですね、ヤマタイ国は」
「なるんじゃなくて、『凄い国にする!』だろ?」
「頑張りましょうね、ジークさん!頼りにしますよ?」
「おう!頑張ろうな」
俺が元気なうちは・・・ん?
「スティーブ、ゴブリンの寿命ってどのくらい?」
「え?いやぁ・・・分からないですね」
「見つけたら駆逐されるからな」
「勝手に増えますし」
「まだ、しばらくは大丈夫そうだがな?」
「寂しい事言わないでくださいよ!?」
「うーん・・・明らかに他のゴブリンとは違うだろうな・・・」
「はい!着きましたよ!妙な事言ってないで今夜は休んで下さいね!?」
「そうだな。じゃ、おやすみなさーい・・・」
「ああ!まだ玄関ですよ!?」
「フスー、フスー・・・」
「・・・寝ちゃったんですか?」
「フスー、フスー・・・」
「どうしよう?・・・あっ!ミーシャさん!」
「スティーブさん?あっ!ジークさんが・・・」
「ジークさんをお願い出来ますか?」
「任せるッス!・・・じゅるっ!はぁ、はぁ・・・」
「・・・やっぱり僕がベッドまで連れて行きます」
「ウチに任せるッス!!」
「ダメですよ!パトラさんに・・・」
「ダメッス!パトラさんに喋っちゃダメッス!」
「・・・やっぱり、ヤマタイ国の最高戦力はパトラさんですね・・・」
楽しい1日が終わったらしい。
次の日は想定外からスタートした!
「・・・どーして俺のベッドにパトラが居るんだ?」




