53話
200人以上のハゲ散らかした連中。
30人程の髪のある人間。
40人程の獣人。
合計で300人くらいか?
本当は街と呼ぶのもおこがましいレベルだが、このヤマタイの街のほとんどが集まってくれた。
そして、5メートル四方のステージが組まれている。
俺に挨拶をさせる為らしい。
ここまで準備してくれたんだ。期待に応えようじゃないか!
「パトラ、スティーブそれから・・・おーい!バートン!」
「お呼びですか?」
少し離れていたがバートンは一瞬でやって来た!
「これから挨拶するんだが、一緒にステージに上がってくれ。やりたい事が有るんだ」
「この私でよろしいのですか?」
「俺と相棒パトラと獣人代表のスティーブ、そして現状は人間代表でバートンに頼みたい」
「は、はい!喜んで!」
「何をするつもりなのかしら?」
「お披露目と宣言だ」
「ふふふ、面白そうね?私も紹介してもらえるのかしら?」
「勿論だ。早く皆の驚く顔が見たいな!おっと!コロマル!居るか?」
本当に聞こえたんだろうか?
コロマルが家の方から走ってくる!
イメージ的にはトラックだ。そりゃ怖い。
「お呼びですか?ご主人様」
「おお!流暢になったな!偉いぞ!」
「頑張りました!」
「コロマルも皆に紹介するぞ?」
「はい!ありがとうございます!」
「間違い無く、大騒動ですね!」
「じゃ、行こうか」
俺達はゆっくりとステージに上がる。
一歩ごとに辺りの喧騒が引いて行った・・・。
そして、俺を中心にパトラが隣、その隣のバートン、反対側にスティーブが並ぶ。
「皆!今日は本当にありがとう!パトラにドラゴン討伐をせがまれたから狩って来た!めちゃくちゃ強かったから、皆は真似するなよ!?」
はい、皆の苦笑い。でしょうね!
「せっかくだから、討伐したドラゴンの肉を皆で食ってくれ!」
今度は大歓声!
「そして、俺から発表があるんだ。まず、俺の額に角が生えた!・・・そう、進化したようだ。」
今度はざわめきが広まって行く。
そうか、俺の顔を知らなかった人も居たな。
「俺の仲間達も進化したんだ・・・白銀狼のコロマルだ。大きくなっただろ?更に、スティーブもいつの間にかデカくなってるな!」
「アオォォォォォォォォン!」
コロマルの遠吠え。格好良い!雰囲気あるな!
集まってくれた皆も楽しそうだ!
「そして、俺の相棒、パトラさんだ!」
俺は隣に立っているパトラの背中を押す。
照れながらもパトラが一歩、前に出る。
そして無反応。
あれ?びっくりしないの?
「幻獣が金華猫から・・・獣を司る神、獣神へと進化を遂げた!」
続いて無反応・・・ん?どうした?
聞こえて無いのかな?
「パトラ、何か言ってみて?」
「そ、そうね」
「パトラさんパトラさん」
「どうしたのスティーブ?」
「パトラさんだと分かるモノとか有ります?」
「え?・・・ああ、有るわ!」
パトラの尻尾が炎とプラズマを纏う!
危ないので俺達は少しだけ離れた。
・・・少しだぞ?
・・・びびったワケじゃ無いからな!?
だって瞳も金色に輝き出したから・・・。
びびってないからな!?
そして、徐々に徐々にどよめきが・・・更に怒号が覆い被さる。
お?ステージ下のグラーフを気を取り戻したようだ。
メアリーも来てたみたいだな。介抱してやってたのかな?放っておけばいいのに。
ともかく、ようやく皆が理解してくれたみたいだな?
「皆の者!静まれ!気持ちは分かるが、まだジークさんからのお話は終わっていない!」
デカイ熊の獣人、スティーブの大声だ。
あっという間に静寂に包まれた。
「ここからが、この街の未来のお話だ!まずは冒険者ギルドを誘致する!ギルドマスターはグラーフ・・・では無く、メアリーを指名する!」
「「な、何だって!?」」
グラーフとメアリーがハモった!
サプライズだからな!
素晴らしいリアクションだ!
「次に、人間達の、元兵士達の家族を受け入れる!」
一瞬の間の後で喜びの叫び声が聞こえてきた。
「ジ、ジーク様!!よろしいのですか!?」
「ただし、獣人へ害する事は魔王の名の元に許さない!共存を誓う事が条件だ!」
「ジークさん!お心遣い、ありがとうございます!」
「獣人への教育はスティーブの役目だぞ?」
「は、はい!任せてください!」
「次に・・・これまでと同様ではあるが、この街をスティーブとグラーフの指揮のもとに発展させ・・・」
長い?校長のお話よりはマシだろ?
皆も真剣に聞いてくれてるな!
俺も声を張り上げるか!
「そして、ここに宣言する!この俺!魔王ジークは!これより『ヤマタイ国』を興す!!」
おっふ!もの凄い音だ。大地すら揺るがす大歓声がステージを襲う!
俺はグラーフに手招きする。
俺?という顔をしながらグラーフが寄ってくる。
「グラーフ、例の魔道具を」
「え?ああ、これだ・・・」
ゴソゴソと懐から魔道具を取り出す。
ソフトボール位か?思ってたより大きいが、こっそりと受け取る。
無意識に顔をしかめてしまった。
生温い。
「ご苦労さん」
一応、労った。一応な。
そしてステージからパトラ達を手真似で降ろし、俺も後ろを向く。受け取った魔道具を一瞬でオリハルコンへと変化させ、向き直って掲げる。
魔道具に魔力を込める。魔道具の先に炎が現れる。
まだ、今の魔力量に慣れていないので、ゆっくり、ゆっくりと・・・。
爛々と輝く炎が大きく膨れる!俺の体より大きく、スティーブ位になっただろうか?
魔力の供給を止めて頭上に掲げ、辺りを見渡す。
びっくりして危うく落としそうになった!
獣人達も人間達も膝を付き、祈りを捧げる様な体勢で俺を見ている!
いやいや、俺、魔王だからね?
むしろ、神様はパトラだからね?
ちょっと演出が過ぎたようだ・・・。
「んっん!・・・では、この灯火と共にこのヤマタイ国を、優しい国へと発展させよう!!」
・・・泣いている。獣人も人間も泣いている。
そこまでか?泣く程か?ちょっとオーバーじゃない?
ドゴォォォザザザァァ!!
うわっ!!びっくりした!なんだ!?
パトラが気を効かせて後ろの方から木を蹴り倒し、引きずって来た!ステージ前に突き立てる!幹の上の方を電撃で焼き払う!そして苦笑い。
流石はパトラ!
この魔道具をどうしよっかと思ってたんだ!
格好付けた挙げ句、身動きが取れなくなってたから助かった!
まずは突き立てた木を硬質化。
それから幹の先に魔道具を乗せる。
・・・良し!安定した!
良かったぁ!魔道具をステージに置いてきぼりにしたら、アイドルの引退みたいだもんな!マイク置くみたいな?
「待たせたな!それじゃ、晩ごはんといこうか!?」
おっと!皆が合掌したぞ?・・・あれか!
「いただきます!」
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
ここまで定着してるのか?
街中、いや国中でいただきますが定着してる事に驚いたが、元日本人としては嬉しい限りだ!
そして、ドラゴンの味は?
ミーシャが皿に盛った肉を持って来た。
「旨い!鶏肉みたいだ!」
「唐揚げも作ってるッスよ!」
「おお!楽しみだな!」
「じゃ、ウチもまた戻って作るッス!」
ミーシャが走って戻る。一緒に家から出たが、いつの間にか調理スタッフをやってたみたいだな?
挨拶は聞いてくれたかな?後で聞いてみよう。
魔道具の不滅の炎に照らされて、辺りは昼間の様に明るい。
そして、皆の表情も明るい。
・・・未来も明るいといいな!
ドラゴンの肉は大好評の様だな!気付けばアーシャやサタンも食べに来ていた。
「主殿!先の宣言は見事であった!・・・優しい国か・・・楽しみじゃな!」
「皆の力で、だけどな!」
「ふふっ、魔王の意に背く者は他の国に行けば良いのだ。優しい国に住み、優しい人になりたい者が集まれば、きっと、主殿の望みが叶うであろう?」
「ああ、俺も心から願うよ」
「して、主殿?パトラ殿が獣神様に進化とな?」
「そうなんだ。あっ!パトラに様はいらないそうだ」
「そ、そうか。しかし、獣神に会えるとは思わなかったのぅ・・・」
「おとぎ話の存在なんだろ?」
「我も種族名しか知らん程じゃからな?」
「そっか・・・ところでサタン」
「なんじゃ?」
「獣神サン◯ーライガーって分かる?」
「もちろんじゃ!我も元の世界で人気が有ったぞ?久しぶりに獣神と聞いて思い出したわ!」
「元の世界の時・・・もしかして、俺と同じ頃じゃないか?」
「ぬ!・・・なんと?・・・いや・・・むぅ・・・」
俺は西暦や当時の日本の総理大臣、大災害、テレビ番組等、サタンの遠い記憶を引き出してもらった。
「やっぱりな!思った通りだ!ゲームやラノベの記憶が有るからサタンは厨二病なんだ!」
「・・・酷くね?主殿、酷くね?」
「ヘタレの引き籠もりなんて、明らかに現代っ子だもんな!?」
「我、泣いちゃうぞ?」
「あぁ!スッキリした!」
「我、やるせないんだが・・・」
「ま、だからなんだ?って感じだけどな!」
「・・・まあ、ドラゴンを倒して、建国の祝いの席じゃ、この場は見逃そうぞ・・・」
サタンに聞いてスッキリしたが、のんびりする間もなくグラーフとメアリーがやって来た。
グラーフの表情が変だな?
「グラーフどうした?変な顔して?・・・いや、いつもか?」
「オイオイオイオイ!いきなり悪口か!?いや、そんな事より・・・」
「ジーク様!先程の発言は一体どういう事でしょうか!?」
「ん?サプライズだ!びっくりしただろ?」
「したよ!!腰が抜ける程びっくりしたよ!」
「グラーフ・・・お前より、メアリーの方が頼りになる・・・ワケじゃない」
「・・・は?いや、意味が分からんぞ?」
「メアリーの方が仕事が出来るのは認めろ!少しだけ話をしたが、お前より頭が柔軟で、良く切れる!」
「くっ!言い返せない!・・・あれ?なら、どういう事だ?」
「俺はこのヤマタイ国を普通の国にはしない。まずは王様を置かないんだ」
「・・・それで?」
「特に、ノースティン王国とは対立の可能性が高い」
「だろうな」
「グラーフにはギルマスとして経験が有るが、その経験が邪魔なんだ。むしろ現場に出ろ」
「・・・」
「ジーク様・・・」
「メアリー。『素』で頼む」
「・・・分かった。んで、何でオレなんだ?」
「まぁ、面白そうな奴だから。かな?」
「ギル・・・グラーフさんも面白いだろ?」
「それはそうだが、用事が有っても捕まらない事が多くてな。正直言うと不便だ」
「・・・なるほど!そういう事か!」
「でも給料とかどうすんだ?グラーフさんには要らないか」
「いや、国から出す様にする。これからはヤマタイ国の為に働いてもらう」
「あれ?拒否権無くね?」
「パトラ呼ぼうか?」
「そこで力ずくかよ!?」
「冗談だ。もちろん、サブのギルマスとなるだろうな。更に、給料を上乗せしつつ、身動きを取り易くする為だ」
「・・・悪い話じゃ無いな・・・アーシャちゃんと会う時間も増えるし・・・」
「「ロリコン脳筋ハゲが!」」
「メアリー、やっぱりコイツはクビにしようか?」
「そうだな、ゴミだしな」
「捕まったら助けないぞ」
「じゃ、グランドマスターにチクっておくよ」
「サーセンシタ!」
ドラゴン肉を片手で持ったまま土下座。器用だな。
誠意は伝わらないが。
「とりあえずはギルドが安定するまでグラーフも頑張れよ?」
「それは勿論だ!」
「メアリーも頼むぞ?」
「気合い入れてやってやるよ!」
「無理しなくていいんだ。無理ならこのハゲたオッサンに手伝わせろ」
「はははっ!了解だよ!」
「扱いが・・・おかしいな、オレ、ギルドマスターだったのに・・・あっ!アーシャちゃん見っけ!」
ギルドも面白くなるだろうな。
根に持ってるワケじゃ無いが、パトラを街から追い出すに至った経緯を考えると、グラーフはノースティン王国やグランドマスターの命令には逆らえない。
それより、責任の少ない立場なら、ヤマタイ国にも尽力してくれると俺は見ている。
・・・アーシャも居るしな。勝手に頑張ろうとするだろう。
ロリコンストーカー脳筋ハゲサブギルドマスター。
職業が長い!・・・職業か?
今日はパトラ、ミーシャ、アーシャの飲酒も解禁しようか?俺も飲みたいしな!
周囲が明るいせいか、肉が旨いせいか、宴は終わらない。
流石に疲れて来たので、温泉でも行こうかな?
サイクンに聞いたら完成してるとの事。後は加熱の魔道具で微調整だ。
少しぬるい位にして浸かる。
・・・最っ高ぉぉぉ!!
ここの所の疲れが一気に吹き飛ぶな!
それから俺は・・・そのまま・・・夢のせかいに・・・。




